◎警備業法 参照条文(警備業法) 
警備業法は、安全な社会の基盤を形成する産業として、警備業を健全に発展させるため、警備業務の実施の適正を図ることを目的として、昭和47年7月に制定公布され、同年11月に施行された。 警備業は、その後10年の間に、社会の需要に応じてさらに著しい発展を遂げた。空港や原子力発電所を対象とする警備業務も広く行われるなど活動領域が拡大されるとともに、警備業務の機械化が急速に進み、質、量ともに大きく伸展した。このような情勢の変化に伴い、警備業務の実施の適否が社会に及ぼす影響は、従来とは比較にならないほど大きくなったが、昭和47年当時の状況を前提とした法規制では、対処しきれない情勢となったため、昭和57年に警備業法の一部が改正された。その後、警備業者等の欠格事由に、暴力団員と密接な関係にある者等が追加されるなど、警備業法の一部が平成14年に改正された。
さらに、平成15年警察庁の「緊急治安対策プログラム」及び犯罪対策閣僚会議が決定した「犯罪に強い社会の実現のための行動計画」において、安全で安心なまちづくりのため「警備業の育成と活用」を進めるとした。これを受けて、警備員の知識及び能力の向上、警備業務の依頼者の保護を中心とした警備業法の一部が改正され、平成17年11月施行された。
警備業法は、第1章で目的と用語の定義、第2章で警備業の要件、警備業者の認定制、営業所の届出等、第3章で警備業務実施の基本原則等の遵守義務、第4章で警備員の教育等、第5章で機械警備業務の適正実施等、第6章で公安委員会の行政上の監督等、第7章で手数料に関する規定等の雑則、第8章で罰則をそれぞれ定めている。
(1)目 的
第1条 この法律は、警備業について必要な規制を定め、もつて警備業務の実施の適正を図ることを目的とする。    
警備業は、他人の需要に応じて、人の生命、身体及び財産等に対する侵害を警戒し、防止するという業務の性格上、その実施に当たっては、他人の権利や自由を侵害し、又は個人若しくは団体の活動に干渉するなど、違法、不当な行為を伴うおそれのある営業であるという側面を有している。
また、他人の依頼を受けて、防犯、防災活動等を行うという業務の性質から、万一、不適切な態度で実施されると、国民生活に大きな不安と混乱を与えるおそれのある営業であるということができる。
このような理由から、警備業者及び警備員に対する行政上の監督を行うとともに、警備業の健全な発展を図る必要があるとの観点から本法が定められたものである。
「警備業務の実施の適正を図ること」とは、警備業務の実施に伴う違法又は不当な事態の発生を防止すること、警備業務の適切な実施を促進することである。
 (2)定 義
第2条 この法律において「警備業務」とは、次の各号のいずれかに該当する業務であって、他人の需要に応じて行うものをいう。
一 事務所、住宅、興行場、駐車場、遊園地等(以下「警備業務対象施設」という。) における盗難等の事故の発生を警戒し、防止する業務
二 人若しくは車両の雑踏する場所又はこれらの通行に危険のある場所における負傷等の事故の発生を警戒し、防止する業務
三 運搬中の現金、貴金属、美術品等に係る盗難等の事故の発生を警戒し、防止する業務
四 人の身体に対する危害の発生を、その身辺において警戒し、防止する業務
2 この法律において「警備業」とは、警備業務を行なう営業をいう。
3 この法律において「警備業者」とは、第4条の認定を受けて警備業を営む者をいう。
4 この法律において「警備員」とは、警備業者の使用人その他の従業者で警備業務に従事するものをいう。
5 この法律において「機械警備業務」とは、警備業務用機械装置(警備業務対象施設に設置する機器により感知した盗難等の事故の発生に関する情報を当該警備業務対象施設以外の施設に設置する機器に送信し、及び受信するための装置で内閣府令で定めるものをいう。) を使用して行う第1項第1号の警備業務をいう。
6 この法律において「機械警備業」とは、機械警備業務を行う警備業 をいう。

 本条は、この法律の対象となる警備業務、警備業者、警備員の定義を明確にしたものである。 「他人の需要に応じて行う」とは、他人との契約に基づき、他人のために行うことをいう。
 第1項各号に掲げる業務は、法制定当時において現実に行われていた警備業務を四つの態様に分けて類型的に示したものである。
 第1号の警備業務は、いわゆる施設警備業務といわれるものである。
 第2号の警備業務は、祭礼、催し物等によって混雑する場所での雑踏整理、道路工事現場周辺等での人や車両の誘導等を行う業務をいう。雑踏警備業務、交通誘導警備業務。
 第3号の警備業務は、現金等の貴重品や核燃料物質等危険物の運搬に際 し、その正常な運行を妨げるような事故の発生を警戒し、防止する業務をいう。貴重品運搬警備業務。
 第4号の警備業務は、人の身体に対する危害の発生をその身辺において警戒、防止するいわゆるボディガード等の業務をいう。身辺警備業務。
 (3)警備業の要件
第3条 次の各号のいずれかに該当する者は、警備業を営んではならない。
一 成年被後見人若しくは被保佐人又は破産者で復権を得ないもの
二 禁錮以上の刑に処せられ、又はこの法律の規定に違反して罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して5年を経過しない者
三 最近5年間に、この法律の規定、この法律に基づく命令の規定若しくは処分に違反し、又は警備業務に関し他の法令の規定に違反する重大な不正行為で国家公安委員会規則で定めるものをした者
四 集団的に、又は常習的に暴力的不法行為その他の罪に当たる違法な行為で国家公安委員会規則で定めるものを行うおそれがあると認めるに足りる相当な理由がある者
五 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成3年法律第77号)第12条若しくは第12条の6の規定による命令又は同法第12条の4第2項の規定による指示を受けた者であって、当該命令又は指示を受けた日から起算して3年を経過しないもの
六 アルコール、麻薬、大麻、あへん又は覚せい剤の中毒者
七 心身の障害により警備業務を適正に行うことができない者として国家公安委員会規則で定めるもの
八 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者。ただし、その者が警備業者の相続人であって、その法定代理人が前各号のいずれにも該当しない場合を除くものとする。
九 営業所ごと及び当該営業所において取り扱う警備業務の区分(前条第1項各号の警備業務の区分をいう。以下同じ。) ごとに第22条第1項の警備員指導教育責任者を選任すると認められないことについて相当な理由がある者
十 法人でその役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者をいい、相談役、顧問その他いかなる名称を有する者であるかを問わず、法人に対し業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者と同等以上の支配力を有ずるものと認められる者を含む。) のうちに第1号から第7号までのいずれかに該当する者があるもの
十一 第4号に該当する者が出資、融資、取引その他の関係を通じてその事業活動に支配的な影響力を有する者
 警備業務は、他人の需要に応じて、人の生命、身体、財産等を守ることを主な内容とする業務であるので、警備業者には一定の人的信頼性が要求され、また、警備業務の適正な管理運営を期待し得ない者が警備業を営むことを禁止する必要がある。このような必要性から、本条は、警備業を営んではならない者について定めたものである。
第1号に掲げる者 ・・・「成年被後見人」とは、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にあるため、裁判所から後見開始の審判を受けている者をいう。 「被保佐人」とは、精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分な者で、裁判所から保佐開始の審判を受けている者をいう。  また、「破産者で復権を得ないもの」とは、破産法の規定に基づき裁判所が破産手続開始を決定した者で復権を得ていない者をいう。
第2号に掲げる者・・・ 「執行を受けることがなくなつた」場合としては、刑の時効が完成したとき及び仮釈放を許された者がその残余期間を終了したときが挙げられる。
第3号に掲げる者・・・ 「警備業務に関し」とは、警備業務に密接に関連してという意味であり、警備業務を行うに当たって違反が行われた場合、警備業者又は警備員の地位を利用して違反が行われた場合等がこれに該当する。
第4号に掲げる者・・・ 「集団的に」とは、団体若しくは多人数又は数人共同してという意味であり、「常習的に」とは、同一の行為を反復して行うことがこれに当たる。
第5号に掲げる者・・・ 本号中の暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第12条中の規定による[命令を受けた者]とは、暴力団員に暴力的要求行為をするよう依頼したり、暴力団員による暴力的要求行為をその現場で助けたため、公安委員会から再発防止命令や中止命令を受けた者をいい、同法第12条の6の規定による「命令を受けた者」とは、指定暴力団等に所属していない者が、その指定暴力団等の名刺やバッジを借りるなどして、人に対して指定暴力団等の威力を示し、不当な要求を行うような準暴力的要求行為を行ったため、公安委員会から中止命令や再発防止命令を受けた者をいう。また、同12条の4第2項の規定による「指示を受けた者」とは、指定暴力団の等の暴力団員から先に述べたような準暴力的要求行為を行うよう求められた者のうち、その暴力団員ともともと密接な関係を有することなどから、そのまま放置すると準暴力的要求行為を行いかねないために公安委員会から準暴力的要求行為をしてはならない旨の指示を受けた者をいう。
第6号に掲げる者・・・本号に該当するものが警備業を営むことを禁止したのは、これらの者は一般的に判断力、自制力にかけるところがあり、さらには、他人の生命、身体及び財産等を侵害するおそれもあり、適正な警備業務の管理運営を期待し得ないと認められるからである。
第7号に掲げる者・・・本号に該当するものが警備業を営むことを禁止したのは、前号と同じ理由であるが、該当の有無については精神障害であれば一律に欠格となるものではない事に留意する必要がある。精神機能の障害に関する医師の診断書の提出を受けて、業務を適正に遂行する能力を有するかどうかという観点から判断すべきものであり、例えば軽度のうつ病と診断されていても警備業務を適正に行い得ると医師の診断書から認められような者は、この欠格要件に該当しない。
第8号に掲げる者・・・ 「営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者」とは、未成年者の中で、親権者又は後見人から営業することについて許可された者及び婚姻によって成年者とみなされた者以外の者をいう。
第9号に掲げる者・・・ 「警備業務の区分ごとに… 警備員指導教育責任者を選任すると認められない」とは、警備業務の区分ごとの開始までに、当該警備業務の区分に係る警備員指導教育責任者資格者証の交付を受けている者を警備員指導教育責任者として選任できる状況に至る見込みがないことを意味し、「相当な理由がある」場合としては、警備員指導教育責任者の選任予定者が確定していない場合、当該営業所に勤務することが不可能と認められる者を選任予定者としている場合等がこれに当たる。
第10号に掲げる者・・・ 「役員」とは、業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者のことをいう。 「業務を執行する社員」とは、会社法第590条に規定する持分会社の業務を執行する社員のことをいい、また、「取締役」とは、株式会社におけるものをいう。「執行役」とは、会社法第2条第12号に規定する委員会設置会社に置かれ、その業務執行を行う者のことをいい、「これらに準ずる者」とは、株式会社の監査役、財団法人及び社団法人の理事及び監事等のことをいう。 また、法人に対して「同等以上の支配力を有するものと認められる者」に該当するか否かの判断は、その者が自己の地位や権限などに基づいて法人の意思決定に関し、どの程度実質的な影響力を及ぼし得るかについて、個別具体的に検証されることとなる。
第11号に掲げる者・・・ 本号の「支配的な影響力」を有する者の範囲は、一般に、前号の同等以上の支配力」を有する者よりも広いと解され、また、法人のみに適用される前号と異なり、本号は、個人業者にも適用される欠格事由である。 一方、前号は警備業法第3条第1号から第7号までのいずれかの欠格事由該当者が支配力を有する場合に適用される欠格事由であるが、本号は、暴力団員等が支配的な影響力を有する場合に限って適用される欠格事由である。典型的には、暴力団員等が自己又は他人の名義で多額の出資や融資をしたり、多額の取引関係を持っている相手方が、これを背景として当該暴力団員等から事業活動に支配的な影響力を受けている場合が該当する。 また、「その他の関係」とは、親族関係、人的派遣関係、株式所有関係等、種々の関係が含まれる。
 (4)認 定
第4条 警備業を営もうする者は、前条各号のいずれにも該当しないことについて、都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。) の認定を受けなければならない。
 警備業の営業に関する規制は、法第3条の規定によって警備業の要件を定め、本条の規定によって警備業を営もうとする者が警備業の要件を満たしているかどうか、その営業開始前に公安委員会が審査することとし、要件を満たしていることを確認した者について、法第2条第3項の規定によって警備業法上の警備業者としての取扱いをするという形で構成されている。
 認定を受けようとする者は、その営業開始前に、主たる営業所の所在地を管轄する公安委員会に所定の事項を記載した認定申請書を提出し、審査を経て認定証の交付を受ける必要がある。
 「認定」とは、行政法学上の確認行為であり、認定申請者が警備業の要件を満たしていることを確認する公安委員会の行政行為である。
 (5)警備員の制限
第14条 18歳未満の者又は第3条第1号から第7号までのいずれかに該当する者は、警備員となってはならない。
2 警備業者は、前項に規定する者を警備業務に従事させてはならない。
 警備員は、他人の生命、身体、財産等を守るという業務に直接携わるものであり、適時適切な判断力、責任感等が要求される場面や業務の性質上、他人の権利や自由を侵害するおそれのある場面に遭遇する機会が多い。このため、通常の判断力、自制力及び常識のない者には、適正な警備業務の実施は期待できないと考えられるので、このような者が警備員となることを禁止し、不適格者を警備員から排除することとしたのが本条の趣旨である。
ア 警備員の制限
 18歳未満の者が警備員となることを禁止したのは、18歳未満の者は、警備業務に必要とされる判断力、自制力等において一般的に不十分であると認められるからである。また、警備業法第3条第1号から第7号までのいずれかに該当する者が警備員となることを禁止したのは、同法第3条の規定と同様の趣旨による。
イ 警備業者の義務
 本条第2項の規定によって、警備業者は欠格事由に該当している者を警備業務に従事させてはならないこととされている。そのため、欠格事由該当の有無を確認するため、警備員の採用に当たっては、本人から欠格事由に該当しない旨の誓約書の提出を受けるとともに、履歴書の確認や面接調査等を行ったうえで、必要に応じて診断書の提出を受けるなど一般私人として可能な範囲で必要な調査を行う必要がある。
 (6)服 装
第16条 警備業者及び警備員は、警備業務を行うに当たっては、内閣府令で定める公務員の法令に基づいて定められた制服と、色、型式又は標章により、明確に識別することができる服装を用いなければならない。
2〜3 (省略)
 警備員が、警察官又は海上保安官の制服と類似した服装を着用して警備業務を行った場合、特別に権限を有しない警備員の行為が、あたかも警察官等の行為であるかのような誤解を一般市民に与え、そのために他人の権利及び自由を不当に侵害する事態を引き起こしたり、警察活動に混乱が生じるおそれがある。そこで、このような事態の発生を防止し、警備業務の実施の適正を図るため、本条は、警備業者及び警備員の着用する服装は、警察官等の制服と明確に識別できるものとしている。
 なお、「明確に識別することができる服装」とは、一般通常人が一見して、警察官等と誤認しない程度に異なっている服装をいう。
 「内閣府令で定めた公務員」については、施行規則第27条で警察官及び海上保安官とすると定めている。
 施行規則第28条第2項にて服装、護身用具の届出書は、当該警備業務の開始の日の前日までに提出しなければならない。
 警備業法第11条第1項の届出書もしくは添付書類に虚偽の記載をして提出した者には、罰則の適用がある。(警備業法第58条第3号)
施行規則第28条
1 略
2 前項の届出書は第3条第2項又は第11条第2項の規定により経由すべきこととされる警察署長を経由して、当該警備業務の開始の日の前日までに提出しなければならない。 
施行規則第30条
警備業法第16条第2項の内閣府令で定める書類は、服装の届出に係わる届出書にあっては、服装の種類ごとに当該服装を用いた警備員の正面及び側面の全身の縦の長さ12cm横の長さ8cmの写真各1枚とし、護身用具の届出に係わる届出書にあっては、護身用具の種類ごとに護身用具の縦の長さ12cm横の長さ8cmの写真1枚とする。
 (7)護身用具
第17条 警備業者及び警備員が警備業務を行うに当たって携帯する護身用具については、公安委員会は、公共の安全を維持するため必要があると認めるときは、都道府県公安委員会規則を定めて、警備業者及び警備員に対して、その携帯を禁止し、又は制限することができる。
 警備業務の実施に当たっては、その業務の性格上、護身用具の携帯を必要とする場合が多い。しかし、護身用具の種類、その携帯の場所、態様等によっては、それを携帯する必要性が乏しいだけでなく、携帯することがかえって一般人に不安感を与えたり、他人を威圧して、その権利や自由の抑圧等の事態を誘発するおそれがある。そこで、このような事態の発生を防止し、警備業務の適正な実施を図るため、本条は、警備業務の実施に当たって携帯する護身用具について、公安委員会が公共の安全維持の観点から一定の基準を定めて、その携帯を禁止又は制限できることとしたのである。
 「公共の安全を維持するために必要のあるとき」としては、鉄棒その他人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような用具を携帯する場合及び防石面付ヘルメット、金属製の楯等もっぱら護身のために用いられる用具であっても、それを携帯し、又は装着することが人に不安を与えるおそれのあるものを携帯する場合の二つが考えられる。 「その携帯を禁止し」とは、警備業務を行うに当たって、当該護身用具の携帯を一切禁止することをいい、「制限する」とは、時間、場所、警備業務の内容等によって、あるときには、その携帯を禁止し、あるときには、その携帯を認める等の制約を加えることをいう。
 本条の規定に基づく護身用具の携帯の禁止及び制限に関する都道府県公安委員会規則の基準は、地域的な特殊性を考慮し、それぞれの公安委員会で定めることとなっているが、最近におけるテロをめぐる情勢その他警備業務を取り巻く情勢の変化を踏まえ、地域的な特殊性を考慮する必要があるなど特別の理由がある場合を除き、おおむね次のような基準が定められている。

ア 警備業者及び警備員が警備業務を行うに当たり携帯してはならない護身用具は、次に掲げる護身用具(鋭利な部位がないものに限る。) 以外のものとする。
(ア) 警戒棒(その形状が円棒であって、長さが30センチメートルを超え90センチメートル以下であり、かつ、重量が別表1の左欄に掲げる長さの区分に応じ、それぞれ同表の右欄に定めるものに限る。)
(イ) 警戒じょう (その形状が円棒であって、長さが90センチメートルを超え130センチメートル以下であり、かつ、重量が別表2の左欄に掲げる長さの区分に応じ、それぞれ同表の右欄に定めるものに限る。)
(ウ) 刺股
(エ) 非金属製の楯
(オ) (ア)から(エ)までに掲げるもののほか、携帯することにより人に著しく不安を覚えさせるおそれがなく、かつ、人の身体に重大な害を加えるおそれがないもの
イ 警備業者及び警備員は、部隊を編成するなど集団の力を用いて警備業務を行う場合は、警戒棒及び警戒じょうを携帯してはならない。ただし、競輪場等の公営競技場において警備業務を行う場合において警戒棒を携帯するときは、この限りでない。

ウ 警備業者及び警備員は、イに定める場合のほか、次に掲げる警備業務以外の警備業務を行う場合は、警戒じょうを携帯してはならない。
(ア)警備業法第2条第5項に規定する機械警備業務(指令業務を除く。)
(イ)警備員等の検定等に関する規則(平成17年国家公安委員会規則第20号。以下「規則」という。) 第1条第2号に規定する施設警備業務 (警察官が現に警戒を行っている施設のうち次に掲げるものにおいて行われるものに限る。)
空港
原子力発電所その他の原子力関係施設
大使館、領事館その他の外交関係施設
国会関係施設及び政府関係施設
石油備蓄基地その他の石油関係施設、火力発電所その他の電力関係施設、ガス製造所その他のガス関係施設、浄水場その他の水道関係施設、鉄道、航空その他の交通の安全の確保のための業務が行われている施設その他これらに準ずる施設であって、当該施設に対してテロ行為が行われた場合に多数の者の生活に著しい支障が生じるおそれのあるもの
火薬、毒物又は劇物の製造又は貯蔵に係る施設その他これらに準ずる施設であって、当該施設に対してテロ行為が行われた場合に当該施設内又は当該施設の周辺の人の生命又は身体に著しい危険が生じるおそれのあるもの
(ウ)規則第1条第5号に規定する核燃料物質等危険物運搬警備業務及び同条第6号に規定する貴重品運搬警備業務
別表1 警戒棒の制限(アの(ア)関係
 長  さ  重  量
 30cmを超え40cm以下  160g以下
 40cmを超え50cm以下  220g以下
 50cmを超え60cm以下  280g以下
 60cmを超え70cm以下  340g以下
 70cmを超え80cm以下  400g以下
 80cmを超え90cm以下   460g以下

別表2 警戒じょうの制限(アの(イ)関係)
長  さ   重  量
 90cmを超え100cm以下  510g以下
 100cmを超え110cm以下  570g以下
 110cmを超え120cm以下   630g以下
 120cmを超え130cm以下  690g以下

 なお、都道府県公安委員会規則の改正に当たっては、特別の理由がある場合を除き、改正後の都道府県公安委員会規則の施行の際、現に警備員が警備業務を行うに当たって携帯している旧基準に該当する警戒棒及び警戒 じょうについては、施行の日から10年間は、その携帯を認めることとする経過規定が設けられることとされている。 施行規則第28条
1 略
2 前項の届出書は第3条第2項又は第11条第2項の規定により経由すべきこととされる警察署長を経由して、当該警備業務の開始の日の前日までに提出しなければならない。
 (8)特定の種別の警備業務の実施
第18条 警備業者は、警備業務(第2条第1項第1号から第3号までのいずれかに該当するものに限る。以下この条並びに第23条第1項、第2項及び第4項において同じ。) のうち、その実施に専門的知識及び能力を要し、かつ、事故が発生した場合には不特定又は多数の者の生命、身体又は財産に危険を生ずるおそれがあるものとして国家公安委員会規則で定める種別 (以下単に「種別」という。) のものを行うときは、国家公安委員会規則で定めるところにより、その種別ごとに第23条第4項の合格証明書の交付を受けている警備員に、当該種別に係る警備業務を実施させなければならない。
 本条は、特定の種別の警備業務の実施に当たっては、検定の合格証明書の交付を受けている警備員を配置することを義務付けたものである。
 資格者配置が義務付けられている警備業務は、警備員等の検定等に関する規則で定められている。 本条は、特定の種別の警備業務の実施に当たっては、検定の合格証明書の交付を受けている警備員を配置することを義務付けたものである。
 資格者配置が義務付けられている警備業務は、警備員等の検定等に関する規則で定められている。
 
 憲  法 参照条文(憲法)
(基本的人権の享有)
 第11条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。
 警備業務の実施の過程において、人の生命、身体、財産等を守るために警備員の有形、無形の影響力が行使される。したがって、警備業務は、他人の権利、自由を侵害する等の行き過ぎや不当な行為を伴いやすいという側面を有している。特に、複雑化、高度化した現代社会においては、警備員は契約先と第三者との複雑多様な利害関係の中に身を置くこととなり、ちょっとした不手際等も、これが直ちに他人の権利、自由等の侵害をもたらすことになる。
 このように、警備業務はその業務の特殊性から、基本的人権と極めて密接なかかわりを有している。 
 「基本的人権」とは、抽象的には人間が生まれながらにして持っていると考えられる権利、人間が人間として生活していくうえにおいて、当然認められるべき基本的権利のことをいう。
 憲法は、本条において、基本的人権の保障を一般的に宣言するとともに、その固有普遍性と永久不可侵性という性格を明らかにしている。基本的人権の「固有普遍性」とは、基本的人権は、人間として当然の天賦生来の権利であって、だれでも等しく享有する普遍的なものであるということである。また、「永久不可侵性」とは、基本的人権は、現在の国民ばかりでなく、将来の国民も等しく享有するもので、将来永久に侵されることがないという意味である。
 警備員は、基本的人権の意義と重要性を深く認識し、その業務遂行の過程において、いやしくも、他人の権利や自由を侵害することのないよう、留意することが肝要である。憲法は、第11条以下において基本的人権についての規定を置いているが、このうち、警備業務に特に関係の深いものを挙げると、次のとおりである。

第19条 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。

第21条集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

第22条 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
2 何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。

第27条 すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。
2 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。
3 児童は、これを酷使してはならない。

第28条 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。

第29条 財産権は、これを侵してはならない。
2 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
3 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。

第33条 何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。

第34条 何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。

第35条 何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第33条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。
2 捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する各別の令状により、これを行ふ。
(1)表現の自由 憲法第21条第1項は、「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。」と述べ、いわゆる表現の自由について規定している。「集会」とは、共同の目的を有する多数人の一時的集合を意味し、「結社」とは、共同の目的を持って、継続的に多数人が結合している集団をいう。
(2)人身の自由 憲法第31条は、「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。」と規定している。これは、人身の自由の保障に関する根本原則を定めたものである。
 また、同法第33条は、「何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となっている犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。」と述べ、不法の逮捕を受けない権利について規定している。
 「司法官憲」とは、裁判官をいう。
 「逮捕」とは、犯罪の容疑が相当確実であると思われる場合に、実力をもって身体の自由を拘束する行為をいう。
(3)勤労者の団結及び団体行動権 憲法第28条は、「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。」と規定している。
 「団結する権利」とは、団体、すなわち労働組合を組織する権利をいい、また、「団体交渉をする権利」とは、そのようにして組織された労働組合の代表者が使用者又はその団体と交渉する権利であり、「その他の団体行動をする権利」は、争議権ともいわれ、同盟罷業(ストライキ)等をする権利である。
 しかし、以上のような団結権や団体交渉権も、無制限に許されるというわけではなく、公共の福祉に従うべきであることはいうまでもない。その権利の行使は、社会通念上、妥当な範囲内の必要がある。労働組合法第1条第2項も、この点につき、「いかなる場合においても、暴力の行使は、労働組合の正当な行為と解釈されてはならない。」と規定している。
(4)不法の住居侵入、捜索及び押収を受けない自由 憲法第35条第1項は、「何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第33条の場合を除いては、正当な理由に基づいて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。」と述べ、不法の住居侵入、捜索及び押収を受けない自由について規定している。
(5)児童の保護 憲法第27条第3項は、「児童は、これを酷使してはならない。」としている。警備業務は、人の生命、身体、財産等を守るという重い職責を有するため、その遂行には、強い体力と精神力を必要とし、また、勤務時間も深夜にわたることが多い。このため、警備業法第14条第1項において、18歳未満の者が警備員となることを禁じている。

 刑  法
 警備業務は、他人の需要に応じて、人の生命、身体、財産等に対する侵害を警戒し、防止することを主な内容としているので、警備業務に従事する警備員は、これらの犯罪の発生に出会うことが一般人と比べて多い。また、場合によっては犯人等が契約先や警備員自身に加えようとする危害に対し、実力を行使してその危険を避ける場合もある。
 このため、警備員は日頃から刑法その他の刑罰法規を研究し、犯罪の態様とその成立要件についての知識を持つとともに、正当防衛等、実力行使が許される場合と、その限界について熟知しておく必要がある。
(1) 違法性阻却事由
 犯罪は、その本質において社会秩序に違反し、個人や社会の利益を侵害する行為である。しかし、社会秩序を破壊し、他人の利益を侵害する行為がすべて犯罪として処罰されるわけではない。刑法上の「犯罪」とは、このような行為のうち、犯罪として処罰する必要性があるものだけであり、これを理論的に分析して、刑法に定める構成要件に該当する違法で有責な行為であるとされている。
 「構成要件」とは、刑法その他の刑罰法規に規定する犯罪の定型のことである。構成要件は違法行為の類型とされているから、構成要件に該当する行為は、通常、違法であるということができるが、場合によっては違法でないこともあり得る。このような、違法でなくなる特別な事情を「違法性阻却事由」という。 

ア 正当防衛
第36条  急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。
2 防衛の程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。
 例えば、強盗犯人が刃物を持って、契約先や警備員自身に襲いかかってきた場合、警備員は、素手であるいは護身用具を用いてこれに立ち向かいこれを撃退することができる。この場合、警備員は形のうえでは犯人に対して実力を行使することになるわけであるが、暴行罪、傷害罪等に問われることはない。なぜなら、契約先や警備員は犯人による権利の侵害を甘受するいわれはないし、また、犯人が警備員の実力行使によって害を受けたとしても、それはもともと犯人自身の不法な行為によって引き起こされたものだからである。
 このように、急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ない場合には、実力をもってかかる侵害を排除することができることを規定したのが本条である。この実力行使を「正当防衛」という。
(ア)「急迫」とは、権利を侵害される危険が差し迫っていることをいう。 単に、将来侵害されるおそれがあるだけの場合や、既に侵害が終ってしまった場合には、正当防衛は認められない。
(イ)「不正」とは、「違法」というのと同意である。したがって、正当防衛行為に対して正当防衛を行うことはできない。
(ウ)正当防衛行為は、自己又は他人の権利を防衛するため」のものであることを要する。すなわち、防衛意思と防衛手段としての相当性を必要とする。
(エ)正当防衛行為は、権利を防衛するため「やむを得ずにした行為」である必要がある。すなわち、防衛手段として社会通念上、相当と認められることを要する。例えば、万引きをした者に対して警戒棒で打撃を加える等の行為は、相当な手段の範囲を逸脱したものであり、正当防衛にはならない。このように、正当防衛として相当な程度を超えた実力行使は、「過剰防衛」として罰せられ、情状によりその刑が減軽又は免除されるに過ぎない。(本条第2項)。

イ 緊急避難
第37条 自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為は、これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しない。ただし、その程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。
2 前項の規定は、業務上特別の義務がある者には、適用しない。

  緊急避難は、正当防衛と同じように、危難にひんする権利を救うためにする行為が許される場合の一つである。ただこの場合、危難の原因となっている侵害は不正なものに限らず、他人の違法でない行為や人の行為でない自然現象などによって「現在の危難」が生じ、その危難を避けるための避難行為が、第三者の権利を侵害したときが対象となる。
 したがって、緊急避難においては、その避難行為によって害を被る者は、なんらそれを甘んじて受ける特別な理由はなく、ただ、国家がそのような危急状態を救う余裕がないときに私人自らこれを守ることを認めるに過ぎないのであるから、それだけ緊急避難の許される場合は、正当防衛の場合に比べて要件が厳格となっている。
(ア)自己又は他人の生命、身体、自由若しくは財産に対する現在の危難があることが必要である。「現在の危難」とは、危険が切迫していることをいう。
(イ)その危難を避けるためにした行為であることが必要である。
(ウ)他に避難の方法があれば、その方法をとる必要がある。これを緊急避難の補充性という。 そうでない場合は、「過剰避難」として過剰防衛と同様に刑罰の対象となり、情状によって刑を減軽又は免除されることがあるに過ぎない。
(エ)避難行為から生じた害が避けようとした害の程度を超えないことが必要である。これを「法益の権衡」という。この程度を超えた場合も過剰避難となる。
(オ)緊急避難の要件に当てはまる場合でも、業務の性質上、危難に立ち向かうべき義務のある者は、一般人と同じように緊急避難行為をする ことは許されない。また、他人の需要に応じて、人の生命、身体、財産等を守る職務上の義務を有する警備員は、たとえ、自己の生命、身体等を守るためであっても、第三者の権利を侵害してはならないと考えられる。しかし、その本旨は、みだりに義務遂行を怠ることを許さないことにある。したがって、他人の危難を救うための緊急避難行為は、一般人と同様に許されるし、自己の危難を避けるためでも、義務の性質、内容等を考慮し、あるいは社会通念上、危難の内容、程度がその義務を超えていると認められる場合には、適用を認められる場合がある。
一般に緊急避難は「正」対「正」の関係、正当防衛は「不正」対「正」の関係である。
「責任正阻却事由」
責任能力を欠く者には責任主義の原則を受けて刑法は責任能力を欠く者の行為を処罰しないことを規定する。
・心神喪失者(精神上の障害により是非弁別能力または行動制御能力を欠く状態、刑法第39条)
・刑事未成年者(14歳未満の者、刑法第41条)

(2)刑法各論
ア住居侵入罪
第130条 正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
 「住居」とは、人が日常生活を営むために使用する場所をいう。独立した建物に限らず、また、一時的使用であってもよく、アパート、旅館の一室もまた住居である。居住家屋に附属した庭があって塀で囲まれているような場合には、これらの全体がここにいう住居となる。ある程度の設備を備えた場所であることが必要で、地下街のかたすみや寺院の床下などは、たとえそこで浮浪者が日常生活を営んでいても住居とはいえない。
 「邸宅」とは、住居のために造られた家屋で、現に人の住居として使われていないものをいい、空き家や閉鎖された別荘等を指す。
 「建造物」とは、住居、邸宅以外の建物をいい、官公署、学校、工場、寺院等を指し、
 「艦船」とは、船舶をいう。
 「邸宅」、「建造物」、「艦船」は、人が居住していなくとも看守していればやはり本罪の対象となる。    
 「人の看守する」とは、看守者がそこに現在しなくとも他人の侵入を防止する人的・物的設備を施す等、諸般の状況から人が管理していると認められれば足りる。
 「正当な理由がないのに侵入する」とは、違法に侵入するという意味であり、家人又は看守者の意に反して入る場合がこれに当たる。通常はこれらの者の承諾があれば犯罪とはならないが、仮に錯誤によって承諾した場合でも、本来その意に反するであろう場合、例えば、犯罪行為を行う目的で侵入したようなときは、やはり「正当な理由がないのに侵入」 したことになると考えられる。他方、営業中のデパートのように、一般に開放されている建造物内などは、許可を受けずに立ち入っても通常本罪には該当しない。
 住居に侵入しようとして施錠を外しかけているところを発見されたような場合は、住居侵入未遂罪(第132条)となる。
 要求を受けて退去しない罪は、いわゆる不作為犯である。この場合の要求は、これを行う権利を有する者の要求であることを要する。
 なお、正当な理由がなくて合鍵、のみ、ガラス切りその他、他人の邸宅又は建物に侵入するのに使用されるような器具を隠して携帯している罪、人が住んでおらず、かつ、看守していない邸宅・建物・船舶の中に正当な理由なく潜んでいる罪、入ることを禁じた場所又は他人の田畑に正当な理由がなく入る罪等については、「軽犯罪法」によって処罰される。

イ 窃盗罪
第235条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
 他人の占有する財物をその占有者の意思によらずに占有を侵害し、財物を領得する罪である。
 [占有」とは、物に対する事実的支配があると認められる場合に成立する。したがって、物をスリ取られるときのように現実に所持する場合はもちろん、屋内にある物について家人が一時不在であっても、また、それを一時見失っていても、家人はその物に対する占有を失わない。そのため、留守番を頼まれた者がその依頼者宅の金品を領得したような場合についても窃盗罪が成立する。
 なお、金品物色のため金庫に近寄り、鍵に手をかけたような場合、スリがポケットのボタンを外し、又はポケットに指を入れた場合、あるいは外からポケットに触っただけの場合においても窃盗未遂罪(第243条)となる。
窃盗罪の構成要件
・他人の財物を窃取すること
・それが故意に基づくこと
・不法領得の意思があること
 客体は、他の占有する他人の財物である。自己の財物でも他人が占有しまたは公務所の命令によって他人が監守するものであるときは他人の財物とみなす。窃盗の客体には法令により所持所有が禁じられているものも含まれる。
 刑事訴訟法
 憲法第31条は、「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。」と規定している。
したがって、犯罪が行われたことを理由に、犯人を逮捕したり、刑罰を科したりするためには、手続きを定めた法律が必要であるが、この法律が刑事訴訟法である。
 警備業務は、人の生命、身体、財産等の安全を守ることを業務の内容としており、犯罪に接する機会も他の民間業務に比べて多いので、現行犯逮捕等に関する刑事訴訟法の規定を十分に理解し、常に、これを踏まえて業務を実施するとともに、不当に他人の人権を侵害することのないよう配慮することが肝要である。
(1)現行犯逮捕
第212条 現に罪を行い、又は現に罪を行い終つた者を現行犯人とする。 左の各号の一にあたる者が、罪を行い終つてから間がないと明らかに認められるときは、これを現行犯人とみなす。
一 犯人として追呼されているとき。
二 賊物又は明らかに犯罪の用に供したと思われる兇器その他の物を所持しているとき。
三 身体又は被服に犯罪の顕著な証跡があるとき。
四 誰何されて逃走しようとするとき。

第213条 現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することが できる。(憲法第33条)
 「現行犯人」とは、現に罪を行い又は現に罪を行い終った者をいう。
 「現に罪を行い」とは、犯罪を現在実行しているという意味であり、犯罪の実行行為に着手し、それを遂行しつつあり、いまだ終了に至らない場合である。未遂について処罰規定のない罪については、未遂の段階では犯罪の実行行為中とは認められない。
 「罪」とは、特定の罪(例えば、窃盗、傷害等)を指す。したがって、単なる [不審者」であって、何らかの罪を犯している疑いがあるだけでは不十分であり、現行犯人とはいえない。
 「現に罪を行い終った」とは、当該犯罪行為終了直後を指すが、直後の範囲を機械的に何時間と決めることはできないので、具体的状況に応じて判断することになる。
 「準現行犯人」とは、本条第2項のいずれかに該当する場合で、かつ、罪を行い終ってから間がないと明らかに認められる者をいう。
 「逮捕」とは、人の身体を直接に束縛して自由を拘束することをいう。 身体を束縛する方法には、相手が抵抗する等その状況によって手錠をはめるとか、縄で縛るなどの方法もあるが、このような方法でなく、逮捕者が被逮捕者の身体に寄り添って看視し、何時でもその身体を捕捉できる態勢をとって、その逃走を防止する方法等によって自由を拘束する場合も逮捕の範ちゅうに入る。
 現行犯人及び準現行犯人については、その者が犯罪を行いつつあること、又は犯罪を行い終ったことが明確に認められ、かつ、その場で逮捕しなければ被害の拡大又は罪証の隠滅若しくは逃亡のおそれがあるため、逮捕状請求等の手続きを要せず、だれでもこれを逮捕できることにしたものである。
 なお、逮捕に際しては、当然ある程度の実力行使が許されるが、その実力行使には自ら限界があり、犯人の挙動その他、その場における具体的状況に応じた、社会通念上、妥当な範囲内のものである必要がある。
(2)現行犯人を逮捕した場合の処置
(私人による現行犯逮捕と被逮捕者の引渡し)
第214条 検察官、検察事務官及び司法警察職員以外の者は、現行犯人を逮捕したときは、直ちにこれを地方検察庁若しくは区検察庁の検察官又は司法警察職員に引き渡さなければならない。
 現行犯人を逮捕する権限は、一般私人にも与えられているが、これは逮捕行為が許されているだけであり、取調べ、身体捜検、所持品検査等を行う権限は認められていない。したがって、犯人を逮捕した場合は、直ちに警察官等に引き渡すことを要する。
 警察官等に犯人を引き渡す方法としては、110番等で通報し、逮捕現場に直接警察官の臨場を求めるか、あるいは逮捕者が直接犯人を警察署や交番等へ連れて行くかのいずれかである。いずれの方法にしても、逮捕者としては、犯人の引き渡しを受けた警察の措置が迅速かつ適正に行われるように努める。
 警察官職務執行法
 警備業務実施中において、人の生命、身体、財産等に対する差し迫った危険が生じた場合に、その危害を防止し、又はその危害を排除することは、警備業務の領域に入るが、警備業務は他人との契約に基づいて行うものであり、特別な権限を有するものでないことから、警備員が危害を防止し、又は排除するためにとり得る手段は、自ずから限界があり、最終的には、法的に権限を行使し得る警察官等に処理を委ねることになる場合も少なくない。
 警備員は、警察官の行う警告や避難誘導措置等の命令に従うとともに、できる限りこれに協力すべきである。この義務は、警備員に限定して課せられるものではないが、人の生命、身体、財産等を危害から守ることを主な任務とする警備員は、十分にこれを理解することが重要である
(避難等の措置)
第4条 警察官は、人の生命若しくは身体に危険を及ぼし、又は財産に重大な損害を及ぼす虞のある天災、事変、工作物の損壊、交通事故、危険物の爆発、狂犬、奔馬の類等の出現、極端な雑踏等危険な事態がある場合においては、その場に居合わせた者、その事物の管理者その他関係者に必要な警告を発し、及び特に急を要する場合においては、危害を受ける虞のある者に対し、その場の危害を避けしめるために必要な限度でこれを引き留め、若しくは避難させ、又はその場に居合わせた者、その事物の管理者その他関係者に対し、危害防止のため通常必要と認められる措置をとることを命じ、又は自らその措置をとることができる。
2 (省略)
 本条は、警察官がとるべき避難等の措置を定めている。
 「警告」とは、危険からの避難又は危険の防止について必要な予告又は注意を与えることである。
 「特に急を要する場合」とは、危険な事態がある場合の中でも、現実にその危険が一段と切迫してきた状態をいい、もはや警告の手段では危害を避けることができないような場合である。   
 「引き留め」とは、危険な場所に入らないように抑止することである。
 「避難」とは、危険な場所から退去させることである。
 「通常必要と認められる措置」とは、社会通念上、危険防止のため通常用いられる手段のことをいい、例えば、危険区域への立入りの禁止・制限、電車・自動車の停車、やじ馬の解散、劇場、競技場への入場禁止等がある。
 遺失物法
 警備員は警備業務の性格上、遺失物等を取り扱う機会が多く、この取扱いが適正に行われなければ、トラブル発生の原因となるばかりか信用を失うこ ととなる。したがって、警備員は、遺失物法に定められた処理手続きを十分理解し、適切な対応に努める必要がある。
(1)法の趣旨
(趣旨)
第1条 この法律は、遺失物、埋蔵物その他の占有を離れた物の拾得及び返還に係る手続その他その取扱いに関し必要な事項を定めるものとする。
 本条は、遺失物法の対象となる物件について定めるとともに、法の趣旨について定めている。
(2)用語の定義
(定義)
第2条 この法律において「物件」とは、遺失物及び埋蔵物並びに準遺失物(誤って占有した他人の物、他人の置き去った物及び逸走した家畜をいう。次条において同じ。) をいう。
2 この法律において「拾得」とは、物件の占有を始めること (埋蔵物及び他人の置き去った物にあっては、これを発見すること)をいう。
3 この法律において「拾得者」とは、物件の拾得をした者をいう。
4 この法律において「遺失者」とは、物件の占有をしていた者(他に所有者その他の当該物件の回復の請求権を有する者があるときは、その者を含む。) をいう。
5 この法律において「施設」とは、建築物その他の施設(車両、船舶、航空機その他移動施設を含む。) であって、その管理に当たる者が常駐するものをいう。
6 この法律において「施設占有者」とは、施設の占有者をいう。
 「遺失物」とは、他人が占有していた物であって、当該他人の意思に基づかず、かつ、奪取によらず、当該他人が占有を失ったもので、それを発見した者の占有に属していないもの(逸走した家畜、家畜以外の動物及び埋蔵物を除く。) をいう。
 「埋蔵物」とは、他人が占有していた物であって、当該他人の意思に基づくか否かにかかわらず、土地その他の物(不動産に限らない。) の中に包蔵されている物件で、その占有を離れたもので、その所有者が何人であるか容易に識別できないものをいう。例えば、土中に埋蔵された古銭、壁に塗りこまれた貴重品、屋根裏に蔵匿された貴重品等がこれに当たる。
 「誤って占有した他人の物」とは、他人の占有していた物であって、自己の過失によってその占有に属した物をいう。例えば、間違って持ち帰った他人の傘、履き違えた他人の靴等がこれに当たる。
 「他人の置き去った物」とは、他人が占有していた物であって、当該他人の意思に基づくか否かにかかわらず、かつ、奪取によらず、当該他人が占有を失い、自己の占有に属することとなったもので、「誤って占有した他人の物」以外のものをいう。なお、廃棄された物であると客観的に認められる物は無主物であることから、これに該当しない。
 「逸走した家畜」とは、飼育者の意思によらないで自らその占有を離れた家畜をいう。ここでいう「家畜」とは、愛玩、食用、実験用等のために飼育されている鳥獣をいう。なお、野良犬や野良猫は他人が占有していたものではないし、捨て犬や捨て猫は自らその占有を離れていないので、いずれも逸走した家畜に該当しない。万一、警備業務対象施設内に迷い込んだ野良犬が人に危害を加えるおそれがあるときには、警察機関等へ通報する等の措置をとる必要がある。
 第4項の「遺失者」には、当該物件の所有者のほか、物件を預かっていた者及び使用していた者等も含まれる。
第5項の「管理に当たる者」とは、店員、駅員、職員等、当該施設における人の出入り等の管理に係る職務に従事する者を広く指し、警備員もこれに該当する。
第6項の「施設占有者」とは、所有権、地上権、賃借権、その他の権限に基づき、自己のために施設を支配している者をいう。警備業務に関していえば、施設の所有者や警備業務の契約先等がこれに当たる。
(3)拾得者の義務
第4条 拾得者は、速やかに、拾得をした物件を遺失者に返還し、又は警察署長に提出しなければならない。ただし、法令の規定によりその所持が禁止されている物に該当する物件及び犯罪の犯人が占有していたと認められる物件は、速やかに、これを警察署長に提出しなければならない。
2 施設において物件(埋蔵物を除く。第3節において同じ。) の拾得をした拾得者 (当該施設の施設占有者を除く。) は、前項の規定にかかわらず、速やかに、当該物件を当該施設の施設占有者に交付しなければならない。
3 前2項の規定は、動物の愛護及び管理に関する法律(昭和48年法律第105号)第35条第2項に規定する犬又はねこに該当する物件について同項の規定による引取りの求めを行った拾得者については、適用しない。
 拾得した物件は、それを拾得した場所又は物件の属性によって、次のように処理手続きが異なる。
ア ー般の場所での拾得
 他人の物件を拾得したときは、速やかに遺失者に返還するか、又は警察署長に提出することとされている。この場合において現実的には、警察署の窓口や交番等に提出すれば「警察署長に提出した」ことになる。
イ 法令の規定によってその所持が禁止されている物件及び犯罪の犯人が占有していたと認められる物件
 銃砲刀剣類、火薬、爆薬、麻薬、毒物及び劇物等は、法令の規定によって、一般的に私人が所有したり所持したりすることが禁止されているので、拾得者は遺失者に返還しないで警察署長に提出することとされている。
 また、犯罪が実行された場所やこれと密接な関係を有する場所に犯罪者が置き去った物件等、犯人が占有していたと認められる物件についても同様である。
ウ 施設での拾得
 施設において他人の物件を拾得したときは、当該物件を施設占有者に交付することになる。
 この場合、当該施設の勤務者等に交付すれば「施設占有者」に交付したことになる。施設警備業務に従事する警備員は、その施設の勤務者であるので、当該施設占有者を代行して拾得された物件を預かることになる。
 なお、当該施設占有者以外の勤務者等が施設内において物件を拾得した場合には、当該施設占有者が拾得者となる。

(4)施設占有者の義務等
第13条 第4条第2項の規定による交付を受けた施設占有者は、速やかに、当該交付を受けた物件を遺失者に返還し、又は警察署長に提出しなければならない。ただし、法令の規定によりその所持が禁止されている物に該当する物件及び犯罪の犯人が占有していたと認められる物件は、速やかに、これを警察署長に提出しなければならない。
2 (省略)
 本条は、施設占有者が交付を受けた物件の返還及び警察署長への提出義務について定めている。また、施設占有者自らが物件を拾得した場合も同様の義務が発生する。なお、物件の交付を受けた施設占有者のうち、その施設を不特定かつ多数の者が利用するものは、遺失者が判明するまでの間又は警察署長に提出するまでの間、その施設を利用する者の見やすい場所に拾得した物件の種類、特徴、拾得の日時、場所を掲示しなければならないとされている(法第16条第1項)。
(5)施設占有者による書面の交付
参照条文
(遺失物法)
(書面の交付)
第14条 第4条第2項の規定による交付を受けた施設占有者は、拾得者の請求があったときは、次に掲げる事項を記載した書面を交付しなければならない。
一 物件の種類及び特徴
二 物件の交付を受けた日時
三 施設の名称及び所在地並びに施設占有者の氏名(法人にあっては、 その名称及び代表者の氏名)
 本条は、交付を受けた施設占有者が、拾得者から請求があった場合の書面の交付義務について規定している。施設警備業務に従事する警備員は、施設占有者を代行して拾得物の交付を受け、法第14条にある書面を交付することも考えられる。このことから、交付する書面の記載要領等について熟知しておく必要がある。また、交付する書面は任意のものでよく、例えば、店舖の名刺を活用してその裏面に所定の事項を記載してこれを交付するなどの方法でもよい。なお、拾得者からの請求があったにもかかわらずこの書面を交付せず、又は虚偽の記載をして書面を交付した者には罰則がある。
(6)特例施設占有者
ア 特例施設占有者
参照条文
(遺失物法)
(特例施設占有者に係る提出の免除)
第17条 前条第1項の施設占有者のうち、交付を受け、又は自ら拾得をする物件が多数に上り、かつ、これを適切に保管することができる者として政令で定める者に該当するもの(以下「特例施設占有者」という。) は、交付を受け、又は自ら拾得をした物件 (政令で定める高額な物件を除く。) を第4条第1項本文又は第13条第1項本文の規定により遺失者に返還することができない場合において、交付又は拾得の日から2週間以内に、国家公安委員会規則で定めるところにより当該物件に関する事項を警察署長に届け出たときは、第4条第1項本文又は、第13条第1項本文の規定による提出をしないことができる。この場合において、特例施設占有者は、善良な管理者の注意をもって当該物件を保管しなければならない。
 本条は、施設占有者のうち一定の要件を満たした施設占有者(特例施設占有者)に対して、警察署長への提出を免除することについて規定している。本条第1項の「政令で定める者」には、駅や空港等、公共交通機関に係る施設占有者や、百貨店、遊園地等、不特定多数の者が利用する施設の施設占有者であって都道府県公安委員会が指定した施設占有者が該当する。これらの特例施設占有者は交付を受けた物件を警察署長に提出するか、又は自ら保管するかを判断し、選択することができる。
イ 特例施設占有者による返還等
参照条文
(遺失物法)
(特例施設占有者による返還時の措置)
第22条 特例施設占有者は、保管物件を遺失者に返還するときは、国家公安委員会規則で定めるところにより、その者が当該保管物件の遺失者であることを確認し、かつ、受領書と引換えに返還しなければならない。
2 特例施設占有者は、拾得者の同意があるときに限り、遺失者の求めに応じ、拾得者の氏名等を告知することができる。
3 特例施設占有者は、前項の同意をした拾得者の求めに応じ、遺失者の氏名等を告知することができる。
 本条第1項の「確認」の方法は、返還を求める者からその氏名等を証明できる書面の提示を受けることとされている。また、その者から当該物件の種類や特徴、遺失の日時や場所を聴取し、備付けの帳簿に記載された内容と照合する必要がある。
 特例施設占有者が物件の返還を行うときは、その物件の拾得者に対し、返還を行う旨を通知する (拾得者の所在を知る場合に限る)とともに、返還を受ける遺失者に対しては、物件の保管や提出にかかった費用及び報労金を支払う義務がある旨を通知する必要がある。
(7)報労金等に関する権利義務
 報労金等に関する権利義務は、一般の場所で拾得した場合と施設内で拾得した場合、また、拾得した物件の性質によって差異があるので、取扱いには十分留意する必要がある。
ア ー般の場所で拾得した場合
 拾得した日から1週間以内(初日を算入しない(民法第140条))に遺失者に返還するか警察署長に提出しなければ、その物件の保管費、その他必要な費用及び報労金を受け取る権利及び所有権を取得する権利を失う (法第34条第2号)。
 なお報労金は、当該物件の価格の5パーセント以上20パーセント以下に相当する額とされている(法第28条第1項)。
イ 施設内で拾得した場合
(ア)拾得したときから24時間以内に施設占有者に交付しなければその物件の保管費、その他必要な費用及び報労金を受け取る権利及び所有権を取得する権利を失う(法第34条第3号)。
 なお、報労金は拾得者と施設占有者とが法定金額の2分の1ずつを請求することができる (法第28条第2項)。
(イ)物件の交付を受け、又は自ら物件を拾得した施設占有者は、交付を受け又は拾得した日から1週間以内に遺失者に返還するか警察署長に提出しなければ、その物件の保管費、その他必要な費用及び報労金を受け取る権利及び所有権を取得する権利を失う (法第34条第4号)。
ウ 報労金等の請求権の消滅
 拾得した物件の保管、提出等に要した費用や報労金については、物件を遺失者等に返還した後1か月を経過したときは請求権が消滅し、これを負担すべき者に対して請求することができない(法第29条)。
 遺失者が判明しない物件については、警察署長又は第17条によって届け出た特例施設占有者が保管することとなる。保管の期間は警察署長が当該物件の公告を開始した日から3か月間(埋蔵物にあっては6か月間)行うが、この期間のうちに遺失者が現れなかった場合には、拾得者及び施設占有者が所有権を取得する。ただし、当該権利取得の日から2か月以内に物件を引き取らなかったときは、その所有権を失う。
(8)拾得届の受理要領
 拾得物の届出を受けた場合には、まず拾得した場所を確認する。拾得した場所が一般の場所であれば、警察署や交番の場所を教え、自分で持っていくように教示することが望ましい。これは拾得者としての権利を保護するためにも必要である。拾得の場所が警備員の勤務する施設内である場合には、警備員は次の事項を確認する必要がある。
@ 拾得の場所
A 拾得時刻
B 拾得者の氏名、速絡先
C 拾得物件の内容
D 権利放棄有無の確認
 拾得の届けを受けた物件の内容を確認するときは、必ず複数の者が立会い、間違いがないようにする。また、第三者に容易にその内容が漏れたり、破損したりすることのないように注意する。
(9)遺失届けの受理要領
 遺失者等から届出を受けたときは、あらかじめ警備計画書等で定められた手順に従い、速やかに遺失物取扱場所等へ届け出るよう教示する。
 また、キャッシュカードや運転免許証等のように、再交付申請等、早急に対応する必要があるものについては銀行や警察等へ直ちに届け出るように助言することが望ましい。
(10) 拾得物の返還
 拾得した物件の保管中に、遺失した旨を申出る者がいた場合には、施設占有者はその者が真の遺失者であることを確実に確認することが大切である。確認すべき内容は、返還を求める者の氏名、当該物件の種類、特徴、遺失の日時、場所等で、物件については帳簿に記載された内容と照合する。
 施設に勤務する警備員は、これらの施設占有者の手続きを代行することとなる。明らかに遺失者と判明した場合には、施設占有者に連絡する等、あらかじめ定められた処理要領にて返還等の対応をすることが必要である。
 交通誘導警備業務の実施に必要な法令
道路交通法
 交通誘導警備業務は、道路工事現場や駐車場等において、負傷等の事故の発生を防止し、かつ、道路工事等が一般交通に及ぼす迷惑を軽減し、交通の安全と円滑に資するため、一般車両や歩行者の通行を誘導する業務である。
 交通誘導警備業務に従事する警備員は、業務を適正に実施するうえで必要な道路交通法をはじめとする道路交通関係法令を冒頃から研究し、常にこれを遵守して業務を実施する必要がある。

(1)目的
第1条 この法律は、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、及び道路の交通に起因する障害の防止に資することを目的とする。 第24条 火災を発見した者は、遅滞なくこれを消防署又は市町村長の指定した場所に通報しなければならない。
2 すべての人は、前項の通報が最も迅速に到達するように協力しなければならない。
 「道路における危険を防止し」とは、道路における具体的かつ直接的な交通の危険を防止することをいう。
 「交通の円滑を図る」とは、交通の妨害を排除し、混雑を緩和するなどによって交通が停滞しないようにすることをいう。
 「その他交通の安全を図る」とは、およそ道路交通に関する抽象的な危険を防止することをいい、運転免許制度等もこれに含まれる。
 「道路の交通に起因する障害の防止に資すること」とは、交通公害等、道路の交通によって道路交通以外の分野に障害を生じさせる事案に対し、道路の交通を管理する立場からその防止を図ることをいう。

(2)用語の定義
(定義)
第2条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
1.道路 道路法(昭和27年法律第180号)第2条第1項に規定する道路、道路運送法(昭和26年法律第183号)第2条第8項に規定する自動車道及び一般交通の用に供するその他の場所をいう。
2.歩道 歩行者の通行の用に供するため縁石線又はさくその他これに類する工作物によつて区画された道路の部分をいう。
3.車道 車両の通行の用に供するため縁石線若しくはさくその他これに類する工作物又は道路標示によつて区画された道路の部分をいう。
3の2.本線車道 高速自動車国道(高速自動車国道法(昭和32年法律第79号)第4条第1項に規定する道路をいう。以下同じ。)又は自動車専用道路(道路法第48条の4に規定する自動車専用道路をいう。以下同じ。)の本線車線により構成する車道をいう。
3の3.自転車道 自転車の通行の用に供するため縁石線又はさくその他これに類する工作物によつて区画された車道の部分をいう。
3の4.路側帯 歩行者の通行の用に供し、又は車道の効用を保つため、歩道の設けられていない道路又は道路の歩道の設けられていない側の路端寄りに設けられた帯状の道路の部分で、道路標示によつて区画されたものをいう。
4.横断歩道 道路標識又は道路標示(以下「道路標識等」という。)により歩行者の横断の用に供するための場所であることが示されている道路の部分をいう。
4の2.自転車横断帯 道路標識等により自転車の横断の用に供するための場所であることが示されている道路の部分をいう。
5.交差点 十字路、丁字路その他2以上の道路が交わる場合における当該2以上の道路(歩道と車道の区別のある道路においては、車道)の交わる部分をいう。
6.安全地帯 路面電車に乗降する者若しくは横断している歩行者の安全を図るため道路に設けられた島状の施設又は道路標識及び道路標示により安全地帯であることが示されている道路の部分をいう。

7.車両通行帯 車両が道路の定められた部分を通行すべきことが道路標示により示されている場合における当該道路標示により示されている道路の部分をいう。
8.車両 自動車、原動機付自転車、軽車両及びトロリーバスをいう。
9.自動車 原動機を用い、かつ、レール又は架線によらないで運転する車であつて、原動機付自転車、自転車及び身体障害者用の車いす並びに歩行補助車その他の小型の車で政令で定めるもの(以下「歩行補助車等」という。)以外のものをいう。
10.原動機付自転車 内閣府令で定める大きさ以下の総排気量又は定格出力を有する原動機を用い、かつ、レール又は架線によらないで運転する車であつて、自転車、身体障害者用の車いす及び歩行補助車等以外のものをいう。
11.軽車両 自転車、荷車その他人若しくは動物の力により、又は他の車両に牽引され、かつ、レールによらないで運転する車(そり及び牛馬を含む。)であつて、身体障害者用の車いす、歩行補助車等及び小児用の車以外のものをいう。
11の2.自転車 ペダル又はハンド・クランクを用い、かつ、人の力により運転する2輪以上の車(レールにより運転する車を除く。)であつて、身体障害者用の車いす、歩行補助車等及び小児用の車以外のもの(人の力を補うため原動機を用いるものであつて、内閣府令で定める基準に該当するものを含む。)をいう。
11の3.身体障害者用の車いす 身体の障害により歩行が困難な者の移動の用に供するための車いす(原動機を用いるものにあつては、内閣府令で定める基準に該当するものに限る。)をいう。
12.トロリーバス 架線から供給される電力により、かつ、レールによらないで運転する車をいう。
13.路面電車 レールにより運転する車をいう。
14.信号機 電気により繰作され、かつ、道路の交通に関し、灯火により交通整理等のための信号を表示する装置をいう。
15.道路標識 道路の交通に関し、規制又は指示を表示する標示板をいう。
16.道路標示 道路の交通に関し、規制又は指示を表示する標示で、路面に描かれた道路鋲、ペイント、石等による線、記号又は文字をいう。
17.運転 道路において、車両又は路面電車(以下「車両等」という。)をその本来の用い方に従つて用いることをいう。
18.駐車 車両等が客待ち、荷待ち、貨物の積卸し、故障その他の理由により継続的に停止すること(貨物の積卸しのための停止で5分を超えない時間内のもの及び人の乗降のための停止を除く。)、又は車両等が停止し、かつ、当該車両等の運転をする者(以下「運転者」という。)がその車両等を離れて直ちに運転することができない状態にあることをいう。
19.停車 車両等が停止することで駐車以外のものをいう。
20.徐行 車両等が直ちに停止することができるような速度で進行することをいう。
21.追越し 車両が他の車両等に追い付いた場合において、その進路を変えてその追い付いた車両等の側方を通過し、かつ、当該車両等の前方に出ることをいう。
22.進行妨害 車両等が、進行を継続し、又は始めた場合においては危険を防止するため他の車両等がその速度又は方向を急に変更しなければならないこととなるおそれがあるときに、その進行を継続し、又は始めることをいう。
23.交通公害 道路の交通に起因して生ずる大気の汚染、騒音及び振動のうち内閣府令・環境省令で定めるものによつて、人の健康又は生活環境に係る被害が生ずることをいう。
【令】第1条
【則】第1条の2
【則】第1条の3
【則】第1条の4
《改正》平11法087
《改正》平11法160
《改正》平19法090
2 道路法第45条第1項の規定により設置された区画線は、この法律の規定の適用については、内閣府令・国土交通省令で定めるところにより、道路標示とみなす。
《改正》平11法160
3 この法律の規定の適用については、次に掲げる者は、歩行者とする。
1.身体障害者用の車いす、歩行補助車等又は小児用の車を通行させている者
2.次条の大型自動二輪車若しくは普通自動二輪車、二輪の原動機付自転車又は二輪若しくは三輪の自転車(これらの車両で側車付きのもの及び他の車両を牽引しているものを除く。)を押して歩いている者
「道路法第2条第1項に規定する道路」とは、一般の交通の用に供する道で高速自動車国道、一般国道、都道府県道及び市町村道をいう。
「道路運送法第2条第8項に規定する自動車道」とは、専ら自動車の交通の用に供することを目的として設けられた道で、道路法による道路以外のものをいう。
「一般交通の用に供するその他の場所」とは、道路法に規定する道路及び道路運送法に規定する自動車道以外で一般の歩行者、車両又は路面電車等が自由に通行できる場所をいう。具体的には、「道」の体裁をなしている、いわゆる私道のほか、「道」の体裁をなしてはいないが、広場、公園内の通路、学校の構内の通路、神社仏閣の境内等で、それが一般交通の用に開放され、しかも客観的に一般交通の用に使用されている状態にある場所のことである。
「本線車道」とは、高速自動車国道の高速通行の部分及び自動車専用道路の本線車線によって構成する車道をいい、ランプウエイ、加速車線、減速車線及び登坂車線はこれに含まれない。
「歩道」とは、歩行者の通行を保護するため、車道との間に段差を設けて車道よりも一段高くし、又は柵その他柵に類する工作物(ガードレール等)によって区画し、物理的にも車両が入りにくいようにしている道路の部分をいう (単にペイント等によって区分されたものは、この法律にいう歩道にはならない。)。
「路側帯」とは、右図のように区画された道路の部分であり、歩行者は路側帯を、車両は車道をそれぞれ通行しなければならない。
道路が交わる部分の隅が切れていたり、湾曲してその部分だけ道路が広くなっていたりする場合には、その部分も「交差点」に含まれる。
「車両通行帯」とは、一定以上の幅員を有する道路において、車両が一定の区分に従って道路の一定の部分を通行することとされている場合におけるそれぞれの車両が通行すべき道路上の帯状の部分のことをいい、一般には、「レーン」又は「車線」といわれている。
「駐車」とは、一定の理由による継続的な停止及び運転者がその車両を離れ直ちに運転できない状態にある停止のことであり、「停車」とは、駐車以外の車両等の停止ということである。この区別については、特に駐車となる「客待ちのための停止」と、停車となる「人の乗降のための停止」の区別が問題となる。例えば、タクシーが不特定の乗客の乗車のために停止しているのは、典型的な客待ちのための停止である。ハイヤーが電話による呼出しに応じて旅館等の玄関に到着し、そこで待っていた乗客を直ちに乗車させた場合は、人の乗降のための停止である。しかし、そこで若干の時間待ちをした後、乗客を乗車させた場合は、「客待ちのための停止」ということになる。
「徐行」とは、「直ちに停止することができるような速度で進行すること」をいう。車両等の構造、積載重量、道路の状況、天侯の状況等の諸事情を考慮して個々具体的に決められるべきものであるが、一般に「直ちに」停止するといえるためには、少なくともブレーキを操作してから1メートル以内に停止することが必要であるとされている。この停止距離から換算すると、一般に制動装置の十分整備された普通自動車を乾燥した路面で運転する場合、時速8キロメートルないし10キロメートル程度以下で進行することが徐行といえる。
「進行妨害」とは、車両等が進行を継続し、又は始めた場合において、後続する他の車両が追突等の危険を防止するためにその速度又は方向を急に変更しなければならないことになるおそれがあるにもかかわらず、進行を継続し、又は始めることをいう。例えば、高速で走行している車両の前に、突然、車線変更によって割り込むこと等の行為は、進行妨害に該当することが多いといえる。

(3)歩行者の通行方法
ア 通行区分
第10条 歩行者は、歩道又は歩行者の通行に十分な幅員を有する路側帯(次項及び次条において「歩道等」という。)と車道の区別のない道路においては、道路の右側端に寄つて通行しなければならない。ただし、道路の右側端を通行することが危険であるときその他やむを得ないときは、道路の左側端に寄って通行することができる。
2 歩行者は、歩道等と車道の区別のある道路においては、次の各号に掲げる場合を除き、歩道等を通行しなければならない。
一 車道を横断するとき。
二 道路工事等のため歩道等を通行することができないとき、その他やむを得ないとき。
第1項は、歩道等と車道の区別のない道路における歩行者の道路の右側端通行の原則、いわゆる「対面交通」について規定したものである。
なお、この「対面交通」の場合における通行方法は、歩道等と車道の区別のない幅員の狭い道路において適用されるものであり、歩道等と車道の区別のある道路においては、左右いずれの側の歩道等を通行してもよい。
「道路の右側端を通行することが危険であるときその他やむを得ないとき」は、左側通行をしてもよい。例えば、道路の右側端が損壊している場合や左側通行の訓練を受けている盲導犬によって視力障害者が通行する場合等は、「やむを得ないとき」に該当する。
第2項の歩行者は、歩道等と車道の区別のある道路においては、車道を横断するときなどを除いて、歩道等を通行しなければならないことを規定したものである。
「横断する」とは、必ずしも反対側の側端に到着することを必要とせず、歩道から車道に設けられた安全地帯に渡ることも車道を横断することに当たる。また、「その他やむを得ないとき」とは、例えば、風で吹き飛ばされて車道に転落した帽子を拾うために一時車道に立ち入る場合等のことである。

イ 横断の方法
第12条 歩行者は、道路を横断しようとするときは、横断歩道がある場所の附近においては、その横断歩道によって道路を横断しなければならない。
2 歩行者は、交差点において道路標識等により斜めに道路を横断することができることとされている場合を除き、斜めに道路を横断してはならない。
第1項は、歩行者が道路を横断する場合の場所にっいて規定したものである。「横断歩道がある場所の附近」とは、道路の状況及び交通量等から判断されることとなるが、おおむね横断歩道から20メートルないし50メートル程度の距離にある場所のことをいうと解するのが妥当である。
第2項は、歩行者が道路を横断する場合における方法について規定したものであり、「斜めに道路を横断する」とは、道路をその道路に対し直角又は直角に近い角度以外の角度をもって横断することである。
「交差点において道路標識等により斜めに道路を横断することができることとされている場合」とは、歩行者の安全を確保するために、交差点の車両用の信号をすべて「赤」にして車両を一時止め、その間は、交差点の申を歩行者が自由に渡れるようにする交通規制システム、いわゆる 「スクランブル・システム」のことである。

ウ 横断の禁止の場所
第13条 歩行者は、車両等の直前又は直後で道路を横断してはならない。ただし、横断歩道によって道路を横断するとき、又は信号機の表示する信号若しくは警察官等の手信号等に従つて道路を横断するときは、この限りでない。
2 歩行者は、道路標識等によりその横断が禁止されている道路の部分においては、道路を横断してはならない。
第1項は、車両等の直前又は直後における横断を禁止した規定である。「車両等の直前又は直後」の「車両等」には、進行中のものはもちろん、停止中のものも含まれる。「直前又は直後」の範囲は、危険を生じるおそれがあると客観的に認められる範囲をいい、その車両等の進行速度等によって異なる。
「横断歩道によつて道路を横断するとき、又は信号機の表示する信号若しくは警察官等の手信号等に従つて道路を横断するとき」を除外しているのは、関係法令の規定によって歩行者が保護され、危険を生じるおそれがないと認められることによるものである。
第2項の「道路標識等によりその横断が禁止されている道路の部分において」とは、歩行者の道路の横断を禁止することを規定したものである。 この禁止場所は、歩行者の通行の安全を図るためのものである。

エ 歩行者用道路等の特例
参照条文
(道路交通法)
(歩行者用道路等の特例)
第13条の2 歩行者用道路又はその構造上車両等が入ることができないこととなつている道路を通行する歩行者については、第10条から前条までの規定は、適用しない。
「歩行者用道路」とは、歩行者の安全と円滑を図るため車両の通行が禁止されていることが道路標識等によって表示されている道路をいい、いわゆる「歩行者天国」や「通学道路」等も車両の通行が禁止されている間はこれに該当する。
「その構造上車両等が入ることができないこととなつている道路」とは、地下道や歩道橋等をいう。

オ 目が見えない者、幼児、高齢者等の保護
(歩行者用道路等の特例)
第14条 1〜3 (省略)
4 児童又は幼児が小学校又は幼稚園に通うため道路を通行している場合において、誘導、合図その他適当な措置をとることが必要と認められる場所については、警察官等その他その場所に居合わせた者は、これらの措置をとることにより、児童又は幼児が安全に道路を通行することができるようにつとめなければならない。
5 高齢の歩行者、身体の障害のある歩行者その他の歩行者でその通行に支障のあるものが道路を横断し、又は横断しようとしている場合において、当該歩行者から申出があつたときその他必要があると認められるときは、警察官等その他その場所に居合わせた者は、誘導、合図その他適当な措置をとることにより、当該歩行者が安全に道路を横断することができるように努めなければならない。
ある場所が「誘導、合図その他適当な措置をとることが必要と認められる場所」であるかどうかは、道路及び交通の状況から具体的に決められるが、工事現場近くの交通の頻繁な場所などはこれに当たると解される。
「その場所に居合わせた者」とは、幼児等が通行している場所に現実に居合わせた者のことで、身分や職業を問わない。

(4)車両等の通行方法 T
ア 通行区分
第17条 車両は、歩道又は路側帯(以下この条において「歩道等」という。)と車道の区別のある道路においては、車道を通行しなければならない。ただし、道路外の施設又は場所に出入するためやむを得ない場合において歩道等を横断するとき、又は第47条第3項若しくは第48条の規定により歩道等で停車し、若しくは駐車するため必要な限度において歩道等を通行するときは、この限りでない。
2 前項ただし書の場合において、車両は、歩道等に入る直前で一時停止し、かつ、歩行者の通行を妨げないようにしなければならない。
3 二輪又は三輪の自転車(側車付きのもの及び他の車両を牽引しているものを除く。)以外の車両は、自転車道を通行してはならない。ただし、道路外の施設又は場所に出入するためやむを得ないときは、自転車道を横断することができる。
4 車両は、道路(歩道等と車道の区別のある道路においては、車道。以下第9節の2までにおいて同じ。)の中央(軌道が道路の側端に寄つて設けられている場合においては当該道路の軌道敷を除いた部分の中央とし、道路標識等による中央線が設けられているときはその中央線の設けられた道路の部分を中央とする。以下同じ。)から左の部分(以下「左側部分」という。)を通行しなければならない。《改正》平16法090
5 車両は、次の各号に掲げる場合においては、前項の規定にかかわらず、道路の中央から右の部分(以下「右側部分」という。)にその全部又は一部をはみ出して通行することができる。この場合において、車両は、第1号に掲げる場合を除き、そのはみ出し方ができるだけ少なくなるようにしなければならない。
 1.当該道路が一方通行(道路における車両の通行につき一定の方向にする通行が禁止されていることをいう。以下同じ。)となつているとき。
 2.当該道路の左側部分の幅員が当該車両の通行のため十分なものでないとき。
 3.当該車両が道路の損壊、道路工事その他の障害のため当該道路の左側部分を通行することができないとき。
 4.当該道路の左側部分の幅員が6メートルに満たない道路において、他の車両を追い越そうとするとき(当該道路の右側部分を見とおすことができ、かつ、反対の方向からの交通を妨げるおそれがない場合に限るものとし、道路標識等により追越しのため右側部分にはみ出して通行することが禁止されている場合を除く。)。
 5.勾配の急な道路のまがりかど附近について、道路標識等により通行の方法が指定されている場合において、当該車両が当該指定に従い通行するとき。
6 車両は、安全地帯又は道路標識等により車両の通行の用に供しない部分であることが表示されているその他の道路の部分に入つてはならない。
(罰則 第1項から第4項まで及び第6項については第119条第1項第2号の2)
第1項は、歩道等と車道の区別のある道路においては、車両は車道を通行しなければならないこと、及びその特例として歩道等を通行することができる場合等について規定したものである。
車両が歩道等を通行できる場合の規定は、歩行者の保護の徹底を図る目的から、要件が厳しくされている。
「道路外の施設又は場所に出入するためやむを得ない場合において歩道等を横断するとき」とは、道路外に設けられた駐車場、ガソリンスタンド、倉庫、病院、住宅等に出入りする場合に、歩道等を横断する以外にこれらの施設や場所に出入りする方法や手段がないときのことである。
第2項の「歩道等に入る直前で一時停止」とは、道路から路外の施設又は場所に入ろうとする場合は歩道等と車道の境界線の直前の車道上で、路外の施設又は場所から車道に出ようとする場合は歩道等と路外の施設等の境界線の直前の施設内で、それぞれ一時停止しなければならないということである。
「歩行者の通行を妨げないように」とは、歩行者の正常な通行を妨げないようにという意味であり、車両の横断進路にある歩行者が車両の横断のため一時立ち止まらなければならないような場合や、あるいは後戻りを余儀なくさせるようなことをいう。このような場合、車両はその進路上の歩行者がそのまま通過することができるように一時停止するか、歩道等に入る直前で一時停止し発進したとしても、その後において歩行者の通行を妨害することになるときは、再び一時停止するか又は徐行する必要がある。

第5項は、道路の左側通行の原則についての特例を規定したものである。
第1号は、一方通行の道路では、反対の方向から通行してくる車両が全くないので、他に定める通行区分を侵さない限り、道路のいずれの部分でも通行することができることとしたものである。
第2号は、その道路の左側部分の幅員が本来通行する車両の幅よりも狭いような場合をいうが、第3号の場合のように結果的にそうなった場合と異なる。
第3号は、道路の損壊その他の理由により道路の一部の幅員が狭くなって結果的に第2号のような状態にある場合である。
第5号は、公安委員会が道路の区画と通行の方法を指定した場所においては、その指定に従って通行する特例を認めるものである。
第6項は、車両は、安全地帯又は道路標識等によって車両の通行の用に供しない部分であることを表示された部分に入ってはならないことを規定したものである。「入ってはならない」とは、安全地帯等を通過し、又は乗り入れてはならないということである。
「道路標識等により車両の通行の用に供しない部分であることが表示されているその他の道路の部分」は、「立入り禁止部分」の道路標示で表示される。安全地帯及び立入り禁止部分は、たとえ現に交通の危険がない場合であっても、通過したりそこに乗り入れたりしてはならない。

イ 道路外に出る場合の方法
第217条 車両は、道路外に出るため左折するときは、あらかじめその前からできる限り道路の左側端に寄り、かつ、徐行しなければならない。
2 車両(軽車両及びトロリーバスを除く。)は、道路外に出るため右折するときは、あらかじめその前からできる限り道路の中央(当該道路が一方通行となつているときは、当該道路の右側端)に寄り、かつ、徐行しなければならない。
3 道路外に出るため左折又は右折をしようとする車両が、前2項の規定により、それぞれ道路の左側端、中央又は右側端に寄ろうとして手又は方向指示器による合図をした場合においては、その後方にある車両は、その速度又は方向を急に変更しなければならないこととなる場合を除き、当該合図をした車両の進路の変更を妨げてはならない。
「あらかじめその前から」というのは、その車両が左折又は右折しようとしていることを他の車両又は歩行者に十分に認識させるため、合理的に判断して必要と考えられる時点からということである。
徐行義務は、道路の側端に寄る場合についてのみ課せられたものではないから、車両は左折又は右折を完了して道路外へ出るまで徐行を継続しなければならない。

ウ 横断等の禁止
第25条の2 車両は、歩行者又は他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがあるときは、道路外の施設若しくは場所に出入するための左折若しくは右折をし、横断し、転回し、又は後退してはならない。
2 車両は、道路標識等により横断、転回又は後退が禁止されている道路の部分においては、当該禁止された行為をしてはならない。
本条は、車両が道路外へ出るため左折若しくは右折、横断、転回又は後退をする場合で、車両の運転者が客観的に判断して「歩行者又は他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがある」ときは、これらの行為をしてはならないことを定めたものである。
第2項は、都道府県公安委員会が道路標識等によって、個別的に場所を指定して道路外へ出るための横断、転回又は後退を禁止した場合にっいて規定したものである。
したがって、道路上の車両を道路外の駐車場や工事現場等に誘導する場合、歩行者や他の車両に危険を生 じさせないようにすること は勿論、その正常な交通を 妨害するような誘導を行ってはならない。
また、道路上において車両を誘導する場合には、さらに当該道路付近の交通規制状況を十分に把握し、これらの禁止事項に反した誘導を行うことがないように十分に注意しなければならない。
    
エ 進路の変更の禁止
第26条の2 車両は、みだりにその進路を変更してはならない。
2 車両は、進路を変更した場合にその変更した後の進路と同一の進路を後方から進行してくる車両等の速度又は方向を急に変更させることとなるおそれがあるときは、進路を変更してはならない。
3 車両は、車両通行帯を通行している場合において、その車両通行帯が当該車両通行帯を通行している車両の進路の変更の禁止を表示する道路標示によつて区画されているときは、次に掲げる場合を除き、その道路標示をこえて進路を変更してはならない。
 1.第40条の規定により道路の左側若しくは右側に寄るとき、又は道路の損壊、道路工事その他の障害のためその通行している車両通行帯を通行することができないとき。
 2.第40条の規定に従うため、又は道路の損壊、道路工事その他の障害のため、通行することができなかつた車両通行帯を通行の区分に関する規定に従つて通行しようとするとき。
「みだりに」とは、「正当な理由がないのに」という意味である。
「第40条の規定により道路の左側若しくは右側に寄るとき」とは、緊急自動車が接近してきたため、道路の左側又は右側に寄る場合である。

オ 指定通行区分
第35条 車両(軽車両及び右折につき原動機付自転車が前条第5項本文の規定によることとされる交差点において左折又は右折をする原動機付自転車を除く。)は、車両通行帯の設けられた道路において、道路標識等により交差点で進行する方向に関する通行の区分が指定されているときは、前条第1項、第2項及び第4項の規定にかかわらず、当該通行の区分に従い当該車両通行帯を通行しなければならない。ただし、第40条の規定に従うため、又は道路の損壊、道路工事その他の障害のためやむを得ないときは、この限りでない。
2 (以下省略)
本条第1項は、車両通行帯の設けられた道路で、道路標識等によって交差点で進行する方向に関する通行の区分が指定されている場合における軽車両等以外の車両の通行方法を示すとともに、道路の工事その他の障害のためやむを得ないときについて、例外規定を設けたものである。
「交差点で進行する方向に関する通行の区分が指定されて」とは、直進車、左折車及び右折車という点に着目して通行の区分が指定されるということである。
「第40条の規定に従うため、又は道路の損壊、道路工事その他の障害のためやむを得ないとき」とは、道路の工事や損壊のため、1番目の車両通行帯を指定されている左 折車両が2番目のそれを通行する場合や、緊急自動車が接近してきたため、3番目の車両通行帯を指定されている右折車両が道路交通法第40条の規定に従って、1番目のそれを通行する場合等である。
        
力 交差点における他の車両等との関係等
第36条 車両等は、交通整理の行なわれていない交差点においては、次項の規定が適用される場合を除き、次の各号に掲げる区分に従い、当該各号に掲げる車両等の進行妨害をしてはならない。
 1.車両である場合 その通行している道路と交差する道路(以下「交差道路」という。)を左方から進行してくる車両及び交差道路を通行する路面電車
 2.路面電車である場合 交差道路を左方から進行してくる路面電車
2 車両等は、交通整理の行なわれていない交差点においては、その通行している道路が優先道路(道路標識等により優先道路として指定されているもの及び当該交差点において当該道路における車両の通行を規制する道路標識等による中央線又は車両通行帯が設けられている道路をいう。以下同じ。)である場合を除き、交差道路が優先道路であるとき、又はその通行している道路の幅員よりも交差道路の幅員が明らかに広いものであるときは、当該交差道路を通行する車両等の進行妨害をしてはならない。
3 車両等(優先道路を通行している車両等を除く。)は、交通整理の行なわれていない交差点に入ろうとする場合において、交差道路が優先道路であるとき、又はその通行している道路の幅員よりも交差道路の幅員が明らかに広いものであるときは、徐行しなければならない。
4 車両等は、交差点に入ろうとし、及び交差点内を通行するときは、当該交差点の状況に応じ、交差道路を通行する車両等、反対方向から進行してきて右折する車両等及び当該交差点又はその直近で道路を横断する歩行者に特に注意し、かつ、できる限り安全な速度と方法で進行しなければならない。
本条は、交通整理の行われていない交差点における他の車両等との関係及びすべての交差点における車両等の一般的義務を定めたものである。
第1項から第3項までの規定は、「交通整理の行われていない交差点」における車両等の通行方法のうち、主として、他の車両等との関係について規定したものである。
「交通整理の行われていない交差点」とは、信号機の表示する信号による交通整理も警察官等の手信号による交通整理も行われていない交差点のことであり、「交差点内において」とは、交差点の中はもちろん、交差点に入ろうとするときも含む。このような交差点において異なった方向の道路から同時に又はそれに近い状態で車両等が通行した場合、交差点内で危険が生じたり、交通の円滑が阻害されたりするおそれがあるので、この規定が設けられている。
第1項は、優先道路以外の道路にあって、おおむね同じような幅員の道路が交わる交差点における車両等の通行順位を規定したものである。
第1号は、車両は路面電車及び左方から進行してくる他の車両の進行妨害をしてはならないことを規定している。
第2号は、路面電車は左方から進行してくる他の路面電車の進行妨害をしてはならないことを規定しており、すなわち車両と路面電車の間では、進行している方向に関係なく路面電車が優先して進行することとなり、車両相互間及び路面電車相互間においては、交差道路を左方から進行してくるものが優先して進行することとなる。
第2項は、優先道路と非優先道路が交わる交差点又は広い道路と狭い道路が交わる交差点における通行順位を規定したものである。すなわち、非優先道路又は狭い道路にある車両等は、優先道路又は明らかに広い道路を通行する車両等の進行妨害をしてはならないこととしたものである。
「その通行している道路の 幅員よりも交差道路の幅員が明らかに広いものであるとき」とは、交差する道路に幅員の差があることが一見して何人にも明らかである場合のことである。
なお、「その通行している道路が優先道路である場合を除き」とは、優先道路と優先道路が交差する場合及び明らかに広い道路と交わる狭い道路が優先道路」となっている場合のことであり、その優先道路を通行している車両等にはこの項の規定は適用しないという趣旨である。
このような場合、第1項の規定にいう「次項の規定が適用される場合」には当たらないので、同項の「左方車両等への進行妨害の禁止」義務が適用されることとなる。
第3項は、優先道路以外の道路から、これと交わる優先道路又は明らかに広い道路との交差点に進入しようとする場合に徐行すべき義務を規定したものである。この規定は、交差道路を既に通行している車両等の有無に関係なく、そのような交差点に「入ろうとする場合」の義務について述べたものであり、続いて交差点に入る場合においては、第1項又は第2項の規定が適用されることとなる。
第4項は、交通整理が行われていると否とにかかわらず、すべての交差点における車両等の義務にっいて規定したものである。
交差点及びその付近において交通事故が多発している実情にかんがみ、交差点に入ろうとし、及びその交差点内を通行する場合、車両等が特に注意すべき対象とその通行速度、通行方法についての義務を明示している。

(交差点における他の車両等との関係等)
第36条 車両等は、交差点で右折する場合において、当該交差点において直進し、又は左折しようとする車両等があるときは、当該車両等の進行妨害をしてはならない。
本条は、交差点において右折しようとする車両等は、交差点に入った時点の前後を問わず、その交差点において直進し、又は左折しようとする車両等の進行妨害をしてはならないことを規定したものである。

(4)車両等の通行方法 U
キ 横断歩道等における歩行者等の優先
第38条 車両等は、横断歩道又は自転車横断帯(以下この条において「横断歩道等」という。)に接近する場合には、当該横断歩道等を通過する際に当該横断歩道等によりその進路の前方を横断しようとする歩行者又は自転車(以下この条において「歩行者等」という。)がないことが明らかな場合を除き、当該横断歩道等の直前(道路標識等による停止線が設けられているときは、その停止線の直前。以下この項において同じ。)で停止することができるような速度で進行しなければならない。この場合において、横断歩道等によりその進路の前方を横断し、又は横断しようとする歩行者等があるときは、当該横断歩道等の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければならない。
2 車両等は、横断歩道等(当該車両等が通過する際に信号機の表示する信号又は警察官等の手信号等により当該横断歩道等による歩行者等の横断が禁止されているものを除く。次項において同じ。)又はその手前の直前で停止している車両等がある場合において、当該停止している車両等の側方を通過してその前方に出ようとするときは、その前方に出る前に一時停止しなければならない。
3 (省略)
第1項は、横断歩道等を通行する歩行者等を保護するための規定である。
「その進路の前方を横断しようとする歩行者等」とは、動作その他から見て、その者が道路を横断しようとする意思があることが外見的に明らかであり、車両等がそのまま進行するとその歩行者等の横断を妨げるような場合をいう。
第2項は、横断歩道の直前で停止している車両等の側方を通る歩行者を認識していない場合であっても、必ずその車両等の前方に出る前に一時停止しなければならない義務を課したものである。
信号機で交通整理が行われている交差点に接近して設けられている横断歩道の場合、車両等が「青色」の信号によって左折又は右折するときは、歩行者も多くの場合「青色」の信号で横断を開始しているので、このような場合の横断歩道も本項の「横断歩道」の対象となる。
  
ク 横断歩道のない交差点における歩行者の優先
第38条の2 車両等は、交差点又はその直近で横断歩道の設けられていない場所において歩行者が道路を横断しているときは、その歩行者の通行を妨げてはならない。
本条は、交差点又はその直近で横断歩道の設けられていない場所において道路を横断中の歩行者の優先(保護)について規定したものである。
「交差点の直近」とは、「交差点の付近」よりも近い距離にあることであり、おおむね2〜3メートルないし10メートル以内をいうものと解される。

ケ 緊急自動車の優先
第40条 交差点又はその附近において、緊急自動車が接近してきたときは、路面電車は交差点を避けて、車両(緊急自動車を除く。以下この条において同じ。)は交差点を避け、かつ、道路の左側(一方通行となっている道路においてその左側に寄ることが緊急自動車の通行を妨げることとなる場合にあつては、道路の右側。次項において同じ。)に寄つて一時停止しなければならない。
2 前項以外の場所において、緊急自動車が接近してきたときは、車両は、道路の左側に寄つて、これに進路を譲らなければならない。
本条第1項は、交差点又はその付近における緊急自動車の通行の優先について規定したものである。
緊急自動車が通行する場合、最も交通の危険が生じやすいのは、交差点を通行するときである。したがって、緊急自動車が交差点を通行する場合、一時的にその交差点の通行を全く空白状態におくことが望ましい。
そこで、緊急自動車が交差点又はその付近を通行する場合は、他の路面電車や車両(緊急自動車を除く。)は、すべて交差点を避けて一時停止し、緊急自動車だけ通行させることとしたのである。
「交差点を避け」というのは、交差点に入っているときは速やかに交差点の外に出ることであり、また、交差点の手前ならば入らないで停止するなどの行動をとることである。「一時停止」していなければならないのは、緊急自動車が交差点を通過し終るか、又は自動車の側方を通過し終るまでである。
「交差点又はその附近」の「その附近」とは、一般的には、他の車両等がそのまま進行すれば、緊急自動車と同時にその交差点に入ることとなるような範囲の場所をいうとされており、おおむね交差点から30メートル程度の距離と解するのが妥当である。
第2項は、交差点又はその付近以外の場所における緊急自動車の通行の優先について規定したものである。このような場所において緊急自動車が接近してきたときは、他の車両は道路の左側(一方通行となっている道路において、その左側によることが緊急自動車の通行を妨げることとなる場合にあっては、道路の右側)に寄ってこれに進路を譲らなければならない。   この場合は、交差点又はその付近における場合と異なり一時停止する必要はない。

消防用車両の優先等
第41条の2 交差点又はその付近において、消防用車両(消防用自動車以外の消防の用に供する車両で、消防用務のため、政令で定めるところにより、運転中のものをいう。以下この条において同じ。)が接近してきたときは、車両等(車両にあつては、緊急自動車及び消防用車両を除く。)は、交差点を避けて一時停止しなければならない。
2 前項以外の場所において、消防用車両が接近してきたときは、車両(緊急自動車及び消防用車両を除く。)は、当該消防用車両の通行を妨げてはならない。
3 第39条の規定は、消防用車両について準用する。
4 (以下省略)
本条第1項は、交差点又はその付近における消防用車両の通行の優先について規定したものであり、第2項は、交差点又はその付近以外の場所における消防用車両の通行の優先について規定したものである。また、第3項は、消防用車両の通行区分及び通行方法について緊急自動車に準じた特例を規定したものである。なお、「交差点又はその付近」とは、交差点からおおむね30メートル程度の場所をいう。
消防用車両は、消防の用に供する車両で、消防用自動車以外のものをいい、緊急自動車ではない。また、消防用車両を消防用務のために運転するときは、サイレン又は鐘を鳴らし、かつ、夜間及び夜間以外の時間でも視界不良の場所を通行するときは、内閣府令で定める赤色の灯火をつけなければならない。(道路交通法施行令第14条の4)

コ 指定場所における一時停止
第43条 車両等は、交通整理が行なわれていない交差点又はその手前の直近において、道路標識等により一時停止すべきことが指定されているときは、道路標識等による停止線の直前(道路標識等による停止線が設けられていない場合にあつては、交差点の直前)で一時停止しなければならない。この場合において、当該車両等は、第36条第2項の規定に該当する場合のほか、交差道路を通行する車両等の進行妨害をしてはならない。
本条は、交通整理が行われていない交差点又はその手前の直近の指定場所における車両等の一時停止義務及び進行妨害の禁止について規定したものである。車両等は、「指定された場所」においては、具体的な危険の有無にかかわらず、必ず一時停止しなければならない。
一時停止の位置は、「停止線の直前」が原則であるが、非舖装道路などで停止線が設けられていない場合は、「交差点の直前」である。
サ 停車及び駐車を禁止する場所
第44条 車両は、道路標識等により停車及び駐車が禁止されている道路の部分及び次に掲げるその他の道路の部分においては、法令の規定若しくは警察官の命令により、又は危険を防止するため一時停止する場合のほか、停車し、又は駐車してはならない。ただし、乗合自動車又はトロリーバスが、その属する運行系統に係る停留所又は停留場において、乗客の乗降のため停車するとき、又は運行時間を調整するため駐車するときは、この限りでない。
1.交差点、横断歩道、自転車横断帯、踏切、軌道敷内、坂の頂上付近、勾配の急な坂又はトンネル
2.交差点の側端又は道路のまがりかどから5メートル以内の部分
3.横断歩道又は自転車横断帯の前後の側端からそれぞれ前後に5メートル以内の部分
4.安全地帯が設けられている道路の当該安全地帯の左側の部分及び当該部分の前後の側端からそれぞれ前後に10メートル以内の部分
5.乗合自動車の停留所又はトロリーバス若しくは路面電車の停留場を表示する標示柱又は標示板が設けられている位置から10メートル以内の部分(当該停留所又は停留場に係る運行系統に属する乗合自動車、トロリーバス又は路面電車の運行時間中に限る。)
6.踏切の前後の側端からそれぞれ前後に10メートル以内の部分
各号の意味する場所を図で例示すると、次のとおりである。
@駐停車禁止標識や標示のある場所
Aトンネル
B交差点とその側端から5m以内の部分
C道路のまがり角から5m以内の部分
D横断歩道、自転車横断帯とその側端から前後に5m以内の部分
E安全地帯の左側とその前後10m以内の部分
Fバス、路面電車の停留所の標識板(標示柱)から10m以内の部分
G踏切とその側端から前後10m以内の部分
H軌道敷内
※ その他坂の頂上付近や勾配の急な坂道も駐停車禁止場所。

シ 駐車を禁止する場所
(駐車を禁止する場所)
第45条 車両は、道路標識等により駐車が禁止されている道路の部分及び次に掲げるその他の道路の部分においては、駐車してはならない。 ただし、公安委員会の定めるところにより警察署長の許可を受けたときは、この限りでない。
一 人の乗降、貨物の積卸し、駐車又は自動車の格納若しくは修理のため道路外に設けられた施設又は場所の道路に接する自動車用の出入口から3メートル以内の部分
二 道路工事が行なわれている場合における当該工事区域の側端から5メートル以内の部分
三 消防用機械器具の置場若しくは消防用防火水槽の側端又はこれらの道路に接する出入口から5メートル以内の部分
四 消火栓、指定消防水利の標識が設けられている位置又は消防用防火水槽の吸水口若しくは吸管投入孔から5メートル以内の部分
五 火災報知機から1メートル以内の部分
2 車両は、第47条第2項又は第3項の規定により駐車する場合に当該車両の右側の道路上に3.5メートル(道路標識等により距離が指定されているときは、その距離)以上の余地がないこととなる場所においては、駐車してはならない。ただし、貨物の積卸しを行なう場合で運転者がその車両を離れないとき、若しくは運転者がその車両を離れたが直ちに運転に従事することができる状態にあるとき、又は傷病者の救護のためやむを得ないときは、この限りでない。
3 公安委員会が交通がひんぱんでないと認めて指定した区域においては、前項本文の規定は、適用しない。
第1項は、一般に道路における危険や交通の安全と円滑を害するなどの場所について、車両の駐車を禁止することを規定したものである。
第1号の施設又は場所とは、いわゆるバスターミナル、トラックターミナル、路外駐車場、自動車修理工場等である。
第2号の「工事区域」とは、多くの場合、道路工事の現場において、道路交通法第77条の規定による道路使用又は道路法第32条の規定による道路占用が許可されている部分をいう。通常、柵や立札等で表示されるが、その表示がない場合でも現に道路工事中の区域であることが客観的に判断できる場合も含まれる。
なお、道路工事における工事用材料や土砂等の積卸しのため、自動車等が駐車する場合も含めてその道路工事における工事区域とみなされる。
第2項は、道路の幅員と車両の幅との相互関係により、交通の円滑が阻害されるおそれがあるとして、駐車が禁止される場所を規定したものである。
「第47条第2項又は第3項の規定により駐車する場合」とは、道路の左側端に沿い、かつ、他の交通の妨害とならないように駐車し、又は路側帯に入り、かつ、他の交通の妨害にならないように駐車した場合のことである。
駐車しようとする場合は、原則として、その車両の右側の道路上に3.5 メートル以上の余地が必要とされるが、特例が認められている。
その1は、荷物の積卸しを行う場合で運転者がその車両を離れないと き、若しくは運転者がその車両を離れたが直ちに運転に従事することができる状態にあるとき」である。
その2は、「傷病者の救護のためやむを得ないとき」である。
  
ス 道路上における長時間駐車の禁止
第11条 何人も、道路上の場所を自動車の保管場所として使用してはならない。
2 何人も、次の各号に掲げる行為は、してはならない。
一 自動車が道路上の同一の場所に引き続き2時間以上駐車することとなるような行為
二 自動車が夜間(日没時から日出時までの時間をいう。)に道路上の同一の場所に引き続き8時間以上駐車することとなるような行為
三 (省略)
本条は、前述のサ、シの禁止にあてはまらない場合であっても、道路上において長時間駐車する行為を禁止するものである。

(5)道路における禁止行為
第76条 何人も、信号機若しくは道路標識等又はこれらに類似する工作物若しくは物件をみだりに設置してはならない。
2 何人も、信号機又は道路標識等の効用を妨げるような工作物又は物件を設置してはならない。
3 何人も、交通の妨害となるような方法で物件をみだりに道路に置いてはならない。
4 何人も、次の各号に掲げる行為は、してはならない。
 1.道路において、酒に酔つて交通の妨害となるような程度にふらつくこと。
 2.道路において、交通の妨害となるような方法で寝そべり、すわり、しやがみ、又は立ちどまつていること。
 3.交通のひんぱんな道路において、球戯をし、ローラー・スケートをし、又はこれらに類する行為をすること。
 4.石、ガラスびん、金属片その他道路上の人若しくは車両等を損傷するおそれのある物件を投げ、又は発射すること。
 5.前号に掲げるもののほか、道路において進行中の車両等から物件を投げること。
 6.道路において進行中の自動車、トロリーバス又は路面電車に飛び乗り、若しくはこれらから飛び降り、又はこれらに外からつかまること。
 7.前各号に掲げるもののほか、道路又は交通の状況により、公安委員会が、道路における交通の危険を生じさせ、又は著しく交通の妨害となるおそれがあると認めて定めた行為。
本条第1項は、信号機、道路標識若しくは道路標示又はこれらに類似するものをみだりに設置することを禁止する規定である。信号機、道路標識及び道路標示は、都道府県公安委員会又は特定の道路管理者だけにその設置の権限が認められているので、これらの者以外の者が設置することはこの規定によって「みだりに設置する」ことになる。
「みだりに」とは、「正当な権限又は正当な理由なく」ということである。
第2項は、信号機や道路標識又は道路標示が本来、果たすべき効用を妨げるような工作物や物件の設置を禁止する規定であり、信号機の近辺に信号と同色のネオンサインを設けて点滅させるとか、道路標識の直近にその道路標識の表示や文字を見えにくくしたり、又は見誤らせたりするような広告等を設けることなどである。
第3項は、道路上における物件放置を禁止する規定であり、「交通の妨害となるような方法」とは、木材等を道路の中央に置いたり、又は道路の側端であっても、これと直角若しくはそれに近い角度で置くようなことである。また、この規定における「みだりに」とは、「正当な理由なく」という意味であるので、道路に物件を置くことすべてが本項によって禁止されているわけではなく、当該行為に係る場所を所管する警察署長の許可を受けた場合等は「正当な理由」となる。(道路交通法第77条第1項)