警備業務の意義と重要性 「警備業務」とは、他人の需要に応じて、人の生命、身体、財産等に対する侵害の発生を警戒し、防止する業務である。 警備業の歴史と現況 我が国における警備業は、昭和39年、東京リンピックの選手村の警備によってその存在を広く認識されるようになって以後、高度成長期における企業の合理化と人手不足の時代を背景として、商店、事務所、工場等における施設警備、工事現場等での交通誘導警備、現金輸送車の警備、ボディガードなどの分野で急速に発達した。 その後、オイルショック等を契機として安定成長の時代に入る。各企業が管理体制の合理化を進める中で、警備業はその活動領域を大幅に拡大するとともに、高度エレクトロニクス技術を導入した機械化を急速に進めることによって、質、量ともに大きな変化、発展を遂げ、国民の防犯、防災活動等の基盤を形成する「安全産業」として国民生活に深く定着するに至った。 平成20年12月末には、警備業者数8,924社、警備員数512,331人となっており、警備業は今後も安全の確保に関する国民意識の高まりを背景に、また、高度情報化社会の伸展、社会構造の複雑化等に伴い、多様化する国民の需要に応じて、空港や原子力発電所関係の警備等、多種多様な業務を展開しながらさらに発展していくものと考えられる。 そして、都市化の伸展やこれに伴う国民意識の変化によって、地域社会の人間関係の脆弱化と地域における犯罪抑止機能の低下が進行しつつある中で、社会全体の防犯機能を構造的に強化していくために、警備業の果たす役割は、今後ますます重要性を増していくと考えられる。 交通誘導警備業務の意義と重要性 交通誘導警備業務とは、警備員が道路工事現場、建築現場、駐車場、事業所等において、道路工事等によって一般交通に及ぼす各般の支障を軽減するとともに、一般車両や歩行者の通行の安全を図り、交通の渋滞や事故の発生を未然に防止することを目的として、人や車両の誘導を行う業務をいう。 「交通誘導警備業務」とは、警備員が道路工事現場、建築現場、駐車場、事業所等において、道路工事等によって一般交通に及ぼす各般の支障を軽減するとともに、一般車両や歩行者の通行の安全を図り、交通の渋滞や事故の発生を未然に防止することを目的として、人や車両の誘導を行う業務をいう。 駐車場や工事現場等の管理者は、当該事業等に関連して、交通の渋滞を発生させることのないように、保安要員を配置するなどの措置を講じなければならない。しかし、車両等の誘導に関しては、工事現場等の管理者自らで保安要員を配置して行うよりも、専門の知識及び技能を有したプロの警備員に任せる方が、より交通の円滑が図られ、高水準の安全が確保されることから、その業務を警備業者に委託することとなる。このように、いわば事業主の業務の一部である保安の仕事を委託され、これを補完・代行する業務が交通誘導警備業務なのである。 交通誘導警備業務は、委託者ばかりでなく、一般の歩行者や車両をもその対象とする。したがって、ひとたび誘導ミスを原因とする交通事故が発生すると、たとえそれがどんな軽微な事故であっても、その解決や事後処理は複雑困難となるばかりでなく、社会に及ぼす影響も非常に大きい。したがって、交通誘導警備業務に従事する警備員は、関係の知識や能力に裏付けされた誘導技術をしっかりと身につけておくとともに、誘導を受ける側の自発的協力が得られるように、常時、感謝の気持ちと態度で接し、適正な業務の実施を心掛けることが大事である。 また、交通誘導警備業務の中でも、高速自動車国道、自動車専用道路、道路又は交通の状況によって、都道府県公安委員会が道路における危険を防止するため必要と認めた交通誘導警備業務にっいては、定められた人数の検定合格警備員を配置してその警備業務を実施させなければならないこととされている。 したがって、交通誘導警備業務に従事する警備員は、その業務の重要性を認識し、決して事故等を起こさないという信念を持って、適正な業務の遂行に努める必要がある。 警備業務実施の基本原則 (警備業務実施の基本原則) 第15条 警備業者及び警備員は、警備業務を行うに当たっては、この法律により特別に権限を与えられているものでないことに留意するとともに、他人の権利及び自由を侵害し、又は個人若しくは団体の正当な活動に干渉してはならない。 本条は、警備業務が、公共の安全と秩序の維持に当たる警察業務とは本質を異にするものであることから、その業務実施に当たっては、あくまでも、私人のいわゆる管理権等の範囲内で行われる必要があることを注意的に定めるとともに、刑罰法令等に抵触する行為はもとより、刑罰法令等に抵触しない行為であっても、他人の権利及び自由を侵害する行為、個人若しくは団体の正当な活動に不当な影響を及ぼす行為については、すべてこれを禁止する趣旨を規定したものである。 これらのことは、警備業務の性格上、いわば当然のことであるが、警備業務実施の基本原則として本条で特に規定しているのは、実態として 警備員は、通常制服を着用し、護身用具を携帯して業務に従事し、しかも、人の生命、身体、財産等を守ることを主な業務としていることから、一般人からは、ときとして警察類似の行為をしているように見える場合があるほか、警備員自身も行き過ぎた行為等をしがちであるという点に着目したものである。つまり、この規定は、警備業務の実施の適正を図るという警備業法の目的のうち、警備業務の実施に伴って発生しがちな違法、不当な事案を防止するという側面を端的に義務規定にしたものであると考えることができる。 警備員は、警備業務の実施に当たって、行き過ぎ等による違法、不当事案を防止するため、次の事項に留意する必要がある。 (ア) 警備業務対象施設内等において、不審な人物を発見した場合は、施設管理権等に基づき、私人として許される範囲内で質問等を行えるだけであって、警察官職務執行法第2条に定める職務質問のような特別の権限はない。 (イ) 現行犯人を逮捕した場合には、直ちに警察官等に引き渡さなければならず(刑事訴訟法第214条)、取調べ類似行為を行うことはできない。 (ウ) 誘導現場において、警備員の行う交通誘導警備業務は、人や車両の危険を防止するため、通行者の協力を得て行う任意のものであって、道路交通法の規定によって警察官等が行う交通整理のような強制力はない。 (エ) 業務を行うに当たっては、法令で保護されている他人の権利及び自由を侵害すること、また、明白な権利、自由の侵害でなくても労働争議等、正当な活動に不当な影響を及ぼすことのないようにする。 交通誘導警備業務に従事する警備員の使命と心構え 警備業務は、人の生命、身体、財産等を守るという国民生活の安全に極めて関係の深い業務であり、直接・間接に、一般市民生活や契約先の安全、ひいては公共の安全と秩序の維持等に寄与するといった重要性を持っている。したがって、警備員は、まず、このような警備業務の社会的な使命を正しく認識し、公道上等において、衆人環視の中でその業務に従事し、通行する人や車両の安全を図り、事故を防止するという重大な責務を果たすため、専門的な知識、技術の錬成はもちろん、人格の陶冶にも努める必要がある。 特に、交通誘導警備業務に従事する警備員は、当該警備現場において事故等が発生した場合には、一般社会生活に多大な影響を及ぼすことに留意し、些細な事象であっても看過することなく、業務遂行に万全を期し、無事故を目指して誠実に業務を実施することが肝要である。 交通誘導警備業務の実施に際しては、次の事項に留意する必要がある。 (1)事故に対する心構え 交通誘導警備業務は、特定の委託者から依頼を受けて行うものであるが、一般の人や車両が多く通行する公道上で行われるため、社会全般の安全に強く関与している。また、業務の過程でひとたび事故が発生すると、単に契約先だけの問題にとどまらず、社会問題として、国民の批判にさらされることになる。したがって、警備員は、平素から起こり得る事故を想定し、取るべき措置を十分心得ておくことが大切である。 (2)職責の完遂 交通誘導警備業務に従事する警備員は、自らの知識、技術と自らの努力で、その職務を完遂するという気概を持って、業務に当たる必要がある。 そのためには、所定の勤務時間において、注意力のすべてを自己の職務のために尽くすことが大事である。特に、職務態度の適否は自己の属する会社はもとより、広く警備員一般と警備業務全体の評価にっながることを銘記する必要がある。 なお、自己の都合によって、勝手に任務内容を変更したり、みだりに勤務場所を離れてはならないことは言うまでもない。 (3)2級検定合格警備員の役割 2級検定合格警備員は、当該警備業務を適正に実施するために必要な専門的知識、能力を備えた警備員として位置付けられている。したがって、2級検定合格警備員は、常に自らの資質の向上に努め、人格の陶冶を図るとともに、部下の指導及び教育に当たる必要がある。 また、2級検定合格警備員は、警備業法第18条で定める資格者配置における検定の合格証明書の交付を受けている警備員に該当する。 したがって、2級検定合格警備員が資格者配置を求められる現場に配置された場合には、@部下の指導教育能力、A業務実施中の適切な判断能力等が必要とされる。すなわち、交通誘導警備業務全般にわたり、当該現場におけるリーダーとしての役割が期待されているのである。 (4)関係法令の遵守 交通誘導警備業務は、人の生命、身体、財産等を守る重大な使命を有する業務であるとともに、公道上において、衆人環視の中で実施されるので、これに従事する警備員は、関係法令を守ることが肝要である。関係法令は多岐にわたっているが、遵守上の基本となる事項は、次のとおりである。 ア 警備員は、警備業法等の法令によって特別に権限を与えられているものでないことを認識する。 イ 憲法に保障する基本的人権の尊厳性を正しく認識し、違法又は不当な行為をしてはならない。 ウ 道路交通関係法令を研究し、車両等の誘導は、あくまでも道路交通関係法令の定める範囲内で行う。 (5)規律の保持 人の生命、身体、財産等の安全を守る警備業務に従事する警備員に対しては、契約先はもちろん、社会一般も極めて大きな期待を寄せている。警備員は、このような期待に応えるため、警備員として必要な専門的知識、能力の習得に努めるとともに、豊かな良識と誠実な人柄を身につけ、常に清潔で端正な服装、明快で節度ある態度を持って行動する必要がある。特に、規律と節度ある言語、動作は、警備員自身の心を引き締めるとともに、警備員一般及び警備業全体に対する社会的な信頼性を高めるうえで欠くことのできない要件である。 ア 規律の意義 規律は、組織の機能をより効果的に発揮するために必要なものである。したがって、警備員は形式的に規律に服従するのではなく、業務目標達成のため、積極的に規律を遵守する心構えを持って行動することが大切である。 イ 服装と身だしなみ 警備員の服装と身だしなみは、契約先だけでなく、国民一般の目を引き、注視の対象となる。っまり、秩序や安全等に対する警備員の自覚や在り方をその服装から連想するものである。このように、警備員の服装と身だしなみは、多くの人々に信頼感を与え、また、犯人等に対しては、無言の警告を与える意味を持つものであることに十分配慮して、威信を損なうことのないよう努める。 特に注意が必要な点は、警備員の服装や身だしなみが悪い場合は、その警備員個人に責めが向けられるだけでなく、所属する会社、さらには広く警備業全体に影響するところが大きいことである。したがって、警備員はこのことを十分自覚して、平素から端正な服装の保持に心掛けることが肝要である。 警備員の教育及び指導、監督に関する制度の概要 (警備業者等の責務) 第21条 警備業者及び警備員は、警備業務を適正に行うようにするため、警備業務に関する知識及び能力の向上に努めなければならない。 2 警備業者は、その警備員に対し、警備業務を適正に実施させるため、この章の規定によるほか、内閣府令で定めるところにより教育を行うとともに、必要な指導及び監督をしなければならない。 (1)知識及び能力の向上 本条第1項は、警備業者及び警備員の努力義務を定めたものである。 警備業務は、人の生命、身体、財産等を守ることを主な内容とする業務である。警備員は、警備業務の実施に伴って発生する様々な事象に対し、適法かつ妥当で臨機応変な対応を要求されるが、このような対応をとっさの判断で的確にできるようにするためには、警備業務に関する一定水準以上の専門的な知識及び能力が必要である。 (2)教育及び指導、監督の義務 本条第2項は、警備業者がその警備員に対し、専門的な教育と必要な指導及び監督を行う義務があることを明らかにしたものである。特に、警備員に対する教育及び指導、監督の義務を警備業者に課すこととしたのは、警備業務の性格上、これに直接従事する警備員は、専門的な知識及び能力を保持する必要があるだけでなく、警備業者の特別な注意義務に基づく指導、監督の下に業務を行わせる必要性があるからである。警備員教育については、警備業法施行規則第38条で詳細に定められているが、その概略は、次のとおりである。 警備員教育には、基本教育と業務別教育並びに必要に応じて行う警備業務に関する知識及び技能の向上のための教育があり、基本教育と業務別教育については新たに警備業務に従事させようとする警備員に対する教育(新任教育)と、現に警備業務に従事させている警備員に対する教育(現任教育)とに区分されている。 新任教育は、当該警備員が警備業務に従事するまでに、基本教育15時間以上、業務別教育15時間以上、計30時間以上の教育が必要とされている。 現任教育は、毎年4月1日から9月30日まで(前期)と、10月1日から翌年の3月31日まで(後期)の教育期において、それぞれ基本教育3時間以上、業務別教育5時間以上、計8時間以上の教育が必要とされている。 新任教育及び現任教育については、教育を受ける者の警備員検定資格保有状況等によって、教育時間の減免措置が定められている。 警備員に対する教育時間一覧 新任教育 現任教育 基本教育 業務別教育 基本教育 業務別教育 当該警備業務1級検定の合格証明書の交付を受けた者 当該警備業務に就く場合 免除 免除 免除 免除 当該警備業務以外に就く場合 免除 15時間以上 免除 5時間以上 当該警備業務2級検定の合格証明書の交付を受けた者 当該警備業務に就く場合 免除 免除 免除 5時間以上 当該警備業務以外に就く場合 免除 15時間以上 免除 5時間以上 当該警備業務経験者 当該警備業務に就く場合 5時間以上 5時間以上 3時間以上 5時間以上 当該警備業務以外に就く場合 5時間以上 15時間以上 3時間以上 5時間以上 当該指導教育責任者資格者証の交付を受けている者 当該警備業務に就く場合 免除 免除 免除 免除 当該警備業務以外に就く場合 免除 15時間以上 免除 5時間以上 上記の者のうち当該警備業務経験者 免除 5時間以上 免除 5時間以上 機械警備業務管理者資格者証の交付を受けている者 当該警備業務に就く場合 15時間以上 免除 3時間以上 5時間以上 上記の者のうち当該警備業務経験者 5時間以上 免除 3時間以上 5時間以上 当該警備業務以外に就く場合 15時間以上 15時間以上 3時間以上 5時間以上 上記の者のうち当該警備業務経験者 5時間以上 5時間以上 3時間以上 5時間以上 元警察官 5時間以上 15時間以上 3時間以上 5時間以上 上記対象以外の一般警備員 15時間以上 15時間以上 3時間以上 5時間以上 ※警備業務経験者とは最近3年間で警備業務に従事した期間が通算して1年以上ある者をいう。 部下指導上の留意点 交通誘導警備業務に従事する警備員は、他の業務と比較すると経験の浅い者や高齢者、一時的な職としている者も少なからず見受けられる。したがって、部下を適切に指導するためには、それぞれの経験、能力、技術のレベルに即した明確な指示と適切なアドバイスを行うことが必要である。 しかし、現場における実地指導やアドバイスには自ら限界はあり、ましてや、指導者自身が固定ポストに就いている場合には、十分な指導は望めない。また、中には指導やアドバイスを行ったにもかかわらず、その指導に従わない者や十分理解できない者もいるが、部下の指導が適切に行われないことによって、不適切な警備業務の誘因となることが十分考えられることに特段の留意をし、業務上現場において指導が適切に行えない場合は、新たに指導する者の派遣依頼を行うことや、それができない場合は、配置替えを行うことについても意見具申をすることが必要である。 また、指導者は相手の年齢、性別、経験年数、理解力等に適した指導方法を選択し、情熱を持って指導に当たり、部下からの信頼を得られる指導者となるよう努めることが肝要である。 現場における実地指導上の基本的な留意事項を挙げると、次のようになる。 指導はマンツーマンで実施し、相手の身になって根気よく丁寧に行う。 業務や作業に影響のない方法や時間帯を選んで実施する。 未経験者には、作業量が極力少なく、比較的こなしやすい業務や警備業務対象施設等を選定して行う。 未経験者や経験の浅い者には、不適切な警備業務の実施が、どのような危険や事故等の発生の誘因となるかをしっかり認識させ、基本を徹底的に習得させるとともに、契約先や来訪者に対する礼節の必要性についても十分認識させる。 経験者に対しては、業務の実施状況を細部にわたり巡察し、実施の粗雑さ、礼節の欠如などについても観察して、慣れから生じるおごりや過信といったところが見られれば、矯正指導を実施する。 指導結果については、警備員指導教育責任者に必ず報告する。 警備員指導教育責任者制度 参照条文 (警備業法) (警備員指導教育責任者) 第22条 警備業者は、営業所(警備員の属しないものを除く。) ごと及び当該営業所おいて取り扱う警備業務の区分ごとに、警備員の指導及び教育に関する計画を作成し、その計画に基づき警備員を指導し、及び教育する業務で内閣府令で定めるものを行う警備員指導教育責任者を、次項の警備員指導教育責任者資格者証の交付を受けている者のうちから、選任しなければならない。ただし、当該営業所の警備員指導教育責任者として選任した者が欠けるに至ったときは、その日から14日間は、警備員指導教育責任者を選任しておかなくてもよい。 2 (省略) 3 警備員指導教育責任者資格者証の交付は、警備業務の区分ごとに行うものとする。 4〜7 (省略) 8 警備業者は、国家公安委員会規則で定める期間ごとに、警備員指導教育責任者に選任した者に、公安委員会が国家公安委員会規則で定めるところにより行う警備員の指導及び教育に関する講習を受けさせなければならない。 治安情勢が悪化する中で、適正な警備業務を実施するために必要とされる知識及び能力が高度化されている状況を踏まえ、営業所ごと及び当該営業所において取り扱う警備業務の区分ごとに、警備員指導教育責任者の資格者証の交付を受けている者のうちから警備員指導教育責任者を選任することとされている。 警備業法施行規則第39条第2項にて、取り扱う警備業務の区分の全てに応じた警備委員指導教育責任者証の交付を受けている者が置かれる場合は、兼任することができる。 第8項は、選任されている警備員指導教育責任者に対する定期的な講習の受講義務を警備業者に課したものである。 また、警備員指導教育責任者の業務は警備業法施行規則に定められている。 検定制度と資格者配置 参照条文 (警備業法) (検定) 第23条 公安委員会は、警備業務の実施の適正を図るため、その種別に応じ、警備員又は警備員になろうとする者について、その知識及び能力に関する検定を行う。 2〜3 (省略) 4 公安委員会は、第1項の検定に合格した者に対し、警備業務の種別ごとに合格証明書を交付する。 5〜6 (省略) 警備業法第18条で資格者配置が定められており、その実施に専門的知識及び能力を要し、かつ、事故が発生した場合には不特定又は多数の者の生命、身体又は財産に危険を生ずるおそれがあるものとして警備員等の検定等に関する規則で定める特定の種別の警備業務については、本条で定める検定に合格し、合格証明書の交付を受けた警備員の配置を要する。 この検定制度によって、当該警備業務に関する知識及び能力に優れた警備員が当該警備業務を実施することとなり、必然的により高度な警備業務の提供が期待できることになる。 他方、警備員がこの制度を利用することによって、自分が警備員としていかなるレベルにあるかを知ることができるとともに、合格した場合には、会社の内外における高い評価を得ることができる。 また、警備員が検定に合格することを目指して精進努力することは、警備員全体の資質の向上をもたらし、警備業務の適正な実施と警備業の発展に資することができる。 したがって、警備員は資格者配置の有無にかかわらず積極的にこの制度を利用し、自己の研鑚に役立てるよう努める。 検定制度の概要は、次のとおりである。 ア 種別 検定が行われる警備業務の種別は、現在のところ次の6種別である。 (ア)空港保安警備業務 (イ)施設警備業務 (ウ)雑踏警備業務 (エ)交通誘導警備業務 (オ)核燃料物質等危険物運搬警備業務 (カ)貴重品運搬警備業務 イ 級 検定には、検定種別ごとに1級と2級の区分がある。 1級は当該警備現場における統括管理者としての知識及び能力を有していること、 2級は当該警備現場において自らの判断で適正な警備業務を実施する能力を有していることが求められている。 ウ 合格証明書の交付がされない者 18歳未満の者、法第3条第1号から第7号までのいずれかに該当する者及び合格証明書の返納を命ぜられ、その日から起算して3年を経過しない者に対しては、公安委員会は合格証明書の交付を行わない。 また、1級検定は当該警備業務の種別の2級の合格証明書の交付を受けた後、当該警備業務に1年以上従事しなければ受けることができない。 エ 登録講習機関が行う講習 検定は、検定を受けようとする者が、直接、都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。) が行う学科試験及び実技試験を受けることによって行われるが、国家公安委員会の登録を受けて行われる登録講習機関が行う講習を受講し、その課程を修了して、学科試験及び実技試験を免除される方法もある。 オ 検定の合格証明書の携帯等 検定合格警備員に実施させる必要のある警備業務を行うときは、当該警備員に、下図の合格証明書を携帯させ、かつ、関係人の請求があるときは、これを提示させる。 別紙様式第6号(第13条関係) 力 標章の使用 検定の合格証明書の交付を受けている警備員は、当該合格証明書に係る種別の警備業務に従事するときは、下図の標章を用いることができる。 この標章は、Qualified Guard(「資格ある警備員」の意)を表すものである。 礼式と基本動作 (1)礼式 節度ある礼式は、警備員の心を引き締め、規律ある職場を形作るとともに、警備員に対する社会的信頼感を高めるものである。したがって、警備員としては、平素から礼式の意義をよく理解するとともに、繰り返し訓練を行い、正しい礼式を身につけることが大切である。 礼式は、一般に次の要領で実施されている。 ア 敬礼の基本 敬礼は、「まごころ」を込めて行い、粗略又は形式的であってはならない。 イ 敬礼の通則 (ア)敬礼の一般的原則 警備員及びその部隊は、特に定めがある場合のほか、上級者に対して敬礼を行い、上級者はこれに答礼し、同級者は敬礼を交換する。 敬礼は、受礼者が明らかに認めることができる距離のところで、相手に対し注目して行うものとする。 敬礼をされたときは、何人に対しても必ず答礼を行う。 敬礼を行う者は、受礼者の答礼の終るのを待って旧姿勢に復するものとする。 (イ)室内外の別 室内の敬礼 廊下、車内、短艇内等においては、通常、室外の敬礼を行うものとする。ただし、室内で勤務している者が、同一敷地内の廊下、中庭、屋上等に所用のため往来する場合で着帽していないときには、室内の敬礼を行うものとする。ウ室内の礼式 (ア)室内に入る場合 室内に入る場合は、職務の執行上支障がある場合のほか、室外で脱帽する。 (イ)敬礼の方法 室内の敬礼は、受礼者に向かって姿勢を正し、注目した後、頭を正しく上体の方向に保ったまま、体の上部を約15度前に傾けて行う。 帽子を持っているときの室内の敬礼は、右手で帽子の前ひさしをつまみ、内部を右ももに向けて垂直に下げ(女性警備員の場合は、帽子の両側を合わせられるものは、これを合わせ、徽章を上方にし、内部を後方に向け、側方を右ももに付けて垂直に下げる。) 、左手で軽く警戒棒を押さえる。警戒棒を携帯しないときは、左手は垂れる。 (ウ)正規の方法ができない場合 室内の敬礼が正規の方法でできない場合には、座ったまま姿勢を正してこれを行い、又は体の上部を少し前に傾け、若しくは注目して、これに代えることができる。 (エ)辞令書、物品等を受ける場合 辞令書、賞状等を受ける場合は、授与者の前約3歩のところで敬礼を行った後、適宜前進して帽子を左わきに挟み、そのまま右手を伸ばして受け取り、左手を添えて辞令書等を開いて見た後、直ちにこれを左手に納め、帽子を右手に移し、元の位置に復して再び敬礼を行って、退去する。 (オ)上級者から命令を受ける場合 上級者から命令などを受け、又は上級者等に報告若しくは申告をするときは、上席を離れること約3歩のところで敬礼を行った後、状況により適宜前進してこれを受け、又は報告若しくは申告し、終って元の位置に復し、再び敬礼を行って、退去する。 (カ)講堂等における敬礼 講堂又は教場等に訓示者又は教師等が来場したときは、在室者の中の最上級者又はあらかじめ定められた者が、「気をつけ」の号令又は[姿勢を正せ」の指示を下し、訓示者等が演壇又は受礼の位置についたとき、「敬礼」の号令で一斉に敬礼を行い、次に「休め」の号令で着席又は休めの姿勢をとる。 訓示又は授業が終ったときは、前述の@に準じて行う。ただし、「休め」の号令は、訓示者等が室外に出た後、又は訓示者等から指示があった後、下すものとする。 エ 室外の礼式 (ア)各個の敬礼 室外においては、特に定めがある場合のほか、挙手注目又は警戒棒を右手に持っているときは、警戒棒の敬礼を行う。 (イ)前記の敬礼は、受礼者を離れること約6歩のところで行う。 (ウ)挙手注目の敬礼 受礼者に向かって姿勢を正し、 右手を上げ指を接して伸ばし、人差し指と中指とを帽子の前ひさしの右端に当て(女性警備員は、人差し指の先を前額部右端より約2センチメートル前にする.) 、たなごころ (手のひら) を少し外側に向け、ひじを肩の方向にほぼその高さに上げ、受礼者に注目して行う。 (エ)警戒棒の敬礼 受礼者に向かって姿勢を正し、警戒棒を持ったこぶしを前方に向け、その親指があごの前方約10センチメートルの位置にくるように、活発に上げ、警戒棒を身体と約15度になるように前に傾け、受礼者に注目して行う。 (オ)正規の方法ができない場合は、ウの(ウ)の定めを準用する。 (カ)行進間の敬礼は、速あしで行う。 (キ)上級者の元へ行く場合は、停止した後、敬礼を行う。 (ク)室外において辞令書、物品等を受けるときは、挙手注目又は警戒棒の敬礼を行うほか、ウの(エ)の定めを準用する。 (ケ)室外において上級者から命令等を受け、又は上級者に報告若しくは申告をするときは、挙手注目の敬礼を行うほか、ウの(オ)の定めを準用する。 オ その他の場合の礼式 (ア)一人が上級者と同行するときは、左側又は後方につき、二人以上のときは、その両側又は後方につく。ただし、誘導者はその限りでない。 (イ)自動車に乗車するときは、上級者を先にし、その左側に着席する。下車するときは、上級者を後にする。 (ウ)船舶の舷梯を上るときは、上級者を先にし、降りるときは、上級者を後にする。 (エ)短艇等に乗り込むときは、上級者を後にし、降りるときは、上級者を先にする。 (オ)エレベータに乗降するときは、上級者を先にして乗り、降りるときは、上級者を後にする。ただし、ボタン操作をする人がいないときは、上級者を後から乗せ、先に降ろす。 (カ)私服警備員の敬礼は、脱帽時の敬礼による。私服警備員が着帽しているときは、脱帽して敬礼を行う。 力 敬礼を行わない場合 (ア)職務上随従する者は、通常、敬礼を行わない。職務上随従する者に対しても同様とする。 (イ)儀式に参列したときは、その儀式において行う敬礼のほかは、敬礼を行わない。 (ウ)儀式に参列している者に対しては、敬礼を行わない。 (エ)身辺警備業務(ボディガード)に従事している者は、通常、敬礼を行わない。 (オ)現金輸送等に従事している者は、通常、敬礼を行わない。 (カ)自動車等を運転中の者又は船舶等を操縦している者は、敬礼を行わない。 (キ)警戒勤務中は、報告するとき、又は命令、指示を受けるときを除き、通常、敬礼を行わない。 礼式と基本動作 (2)基本動作 規律ある警備員の行動は、警備業務に対する社会的信頼を高めるものであるこのためには、(1)の礼式の励行のほか一定の端正な行動様式に慣れさせることが効果的であると考えられている。この行動様式を「基本動作」という。 基本動作の錬成によって、警備員の規律が保持され、士気が高揚するほか、突発的な事故の発生に際して適切かつ機敏な対応ができる平常心や協調心を養うことができるものといえよう。 したがって、警備員は平素から基本動作を繰り返し練習し、習慣として定着させる必要がある。 基本動作には、特に法令等で定められた方式があるわけではないが、本講習においては、次の要領で実施するものとする。 ア 基本の姿勢(不動の姿勢) (本旨)基本動作の基礎であるから厳粛端正を旨とする。 (号令) 「気をつけ」 (要領) 両かかとを一直線上にそろえて付け、両足先は約45度に開いて等しく外に向け、両ひざは伸ばし、上体は正しく腰の上に落ち着け、背を伸ばし両肩をやや後ろに引き、一様にこれを下げ、両ひじは自然に垂れ、たなごころをももに付け、指を軽く伸ばして並べ、中指をおおむねズボンの縫い目に当て、首及び頭をまっすぐに保って口を閉じ、両眼は正しく開いて前方を直視する。 イ 休憩 (号令)「休め」 (要領) (ア)その場で左足を約20センチメートル (両かかとの内側を結ぶ最短距離)横に 開き、体重は両足にかける。 (イ)指揮者は、休憩が長時間にわたる場合、体重を右若しくは左に交互にかけ、又はどちらか一方の足を元の位置に置き、他の足を適宜前後左右に動かし、休めの場合の手の組み方さらに手を前又は後ろに組むことを認めても差し支えない。 (ウ)警戒棒を手にしているときは、前項の要領により足を開くと同時に、左手で木製警戒棒の先端を約4センチメートル(金属製警戒棒の場合は1〜2センチメートル)残して上から握って、体の前で把持し、両腕を自然に垂れて休憩する。 (エ)手は後ろに回し、右手の甲を左手でつかむ。 (オ)休憩中は、指揮者の許可がなければ、談話等をしない。 ウ 方向変換 (ア)右向け及び半ば右向け (号令) 「右向け一右」「半ば右向け一右」 (要領) 回転側の足のかかとと、反対側の足のつま先とを軸として90度(半ばの場合には45度)右に向きを変え反対側の足を引き付け、同一線上にそろえる。 イ)左向け及び半ば左向け (号令) 「左向け一左」「半ば左向け一左」 (要領) 回転側の足のかかとと、反対側の足 のつま先とを軸として90度(半ばの場合には45度) 左に向きを変え反対側の足を引き付け、同一線上にそろえる。 エ後ろ向け (号令) 「まわれ一右」 (要領) 右足をおおむねその方向に引いて、足先をわずかに左かかとから離し、両足先を少し上げ、両かかとで180度右に回り、次に右かかとを左かかとに引き付ける。 |