警備業務は, 法律制定後の政令により労働者派遣事業適用除外業務として指定され, 1999 年の改正に伴い,
法律上の適用除外業務とされた経緯を持っております。
警備業務は, 警備法において, 警備業務の適正な遂行を確保するため, 警備業者が警備員を直接雇用して
業務上及び身分上の指導監督を行い、すべて請負形態により自らの責任において業務を処理することが
求められていることが適用除外の理由とされております。
警備業は請負契約であるため、通常の会話の中では「警備員を派遣する」と表現されることがありますが、
労働者派遣事業とは異なるもので、警備実施の為に警備会社から警備員を現場に派遣している事業です。
労働者派遣法で禁じているのは、警備会社に他の警備会社から人員を派遣し、警備を行う事です。
その業務の中での重要な問題として、指揮命令権がどこにあるかで区別されます。
「丸投げ」という表現をする、全ての業務を他の警備会社に依頼し警備にあたることは許されているとされています。
その場合、依頼するA警備会社と依頼されるB警備会社との間に警備契約があり、会社間での仕事の依頼として、
現場で働く警備員の指揮命令系統はすべて依頼されるB警備会社からの指揮命令系統とする事が必要となります。
通常の労働者派遣事業では派遣された勤務先に人員の指揮命令権があるが、警備業では警備員がどこで仕事をしていても、
その警備員本人が在籍する警備会社に指揮命令権があるという事であります。
警備契約は、あくまで顧客と警備会社の契約であり、自社の警備員を用いて行っています。
しかし、警備を行う現場では、警備員が顧客から直接要望に応じる必要もあり、
だんだん指揮命令系統が混同してくることもあります。
しかし、労働者派遣事業ではないことに留意しておかないといけません。
指揮命令権が完全に顧客に移ると、偽装請負契約となり労働者派遣法に抵触します。
また複数の警備業者をまたがって、一方の会社の警備員が他方の会社の警備員を指揮命令するような運用になっていると、
警備業法13条(名義貸し禁止)、21条2項(指揮監督義務)の違反となる場合があるので、注意が必要です。
警備という専門及び法律の教育を受けた、専門職業であるという自覚を持ち業務にあたるようにしましょう。
警備員が現場で顧客の指示命令に従うのも明らかな労働者派遣法違反行為です。
現場の作業を手伝ったり、ホウキを持って現場を掃くだけでも成立します。
警備業務が暇だからといって業務中に自発的に顧客の為に何かをするという場合は、
警備業務上必要事項で、第三者に迷惑がかかる可能性がある事柄を回避する名目が必要とされます。
あくまでも自発的行為で行う事で、顧客に指示された事ではない行動でなければなりません。
問題があった場合、指示命令ではなく自発的にやったと幾ら釈明しても、顧客が任意で事情聴取
を受ける事もあり得ますから顧客に迷惑をかけないように行動には注意し業務にあたってください。
●最近の労働者派遣法違反の事例
警備員を不法に派遣したとして、警視庁生活安全総務課と生活安全特別捜査隊などは28日、労働者派遣法違反の疑いで、
東京都渋谷区猿楽町の警備会社「日○警備保障」と千代田区飯田橋、同「セ○○ラル綜合サービス」など
計4社と各社の派遣責任者計4人を書類送検した。
同法は、警備業務で労働者を派遣することを禁止している。
同課は4社が昨年1月までに計106人を別会社に派遣したとみて調べている。
同課によると、日○警備保障の社員の男(62)は「違法なことは知っていたが、派遣先の会社の都合で
ズルズルと続けてしまった」と供述。
派遣先の会社は「警備業務を新規に受注したとき、採用が間に合わず人手不足だった」と説明しているという。
日○警備保障の送検容疑は、平成20年8月4日から昨年1月7日までの間、計291回にわたって自社で雇った警備員1人を
駅ビルなどで警備業務をする会社に派遣、働かせたなどとしている。
●警察庁生活安全局生活安全課
警備業務の共同実施に関する指針について(通達)
警備業務の共同実施に関する指針
1警備業務の共同実施の法的位置付け
(1) 共同企業体の構成員の責任及び業務の分担の明確化
複数の警備業者(機械警備業者を除く。以下同じ。)が共同して警備業務の提供行為の委託を受け、
一の警備業務対象施設等(警備業務対象施設その他の警備業務が実施される場所等をいう。以下同じ。)
において、警備業務を共同して実施すること(以下「警備業務の共同実施」という。)とする場合には、
各警備業者間は、一般に共同企業体(ジョイント・ベンチャー(JV))と称される一種の民法上の組合
(以下「共同企業体」という。)を構成しているものと解される。
この場合において、共同企業体の構成員間の任務分担及び責任関係が明確に定められていないときには、
法第11条第2項の規定による指導監督が適正に行われないなど、警備業務の実施の適正を阻害するおそれがある。
そのため、共同企業体による警備業務の共同実施に当たっては、共同企業体の構成員である各警備業者が各々その者の
雇用する警備員に対する指導監督を行うことはもとより、一の警備業務対象施設等における警備業務の実施の適正を
確保し、警備業務の提供行為を委託する者(以下「利用者」という。)の保護を図るため、警備業務を共同実施する
構成員間の業務分担と連絡調整を適正に行い、各警備業者がその責任を明確にする必要がある。
(2) 警備業務の共同実施と労働者派遣事業の禁止の関係
警備業務については、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律
(昭和60法律第88号。以下「労働者派遣法」という。)第4条第1項の規定により、労働者派遣事業が一切
認められていない。
一方、共同企業体は民法上の組合の一種と解されていることから、構成員が自己の雇用する労働者を共同企業体の他の
構成員の労働者等の指揮命令の下に従事させたとしても、通常、それは自己のために行われるものとなり
、当該法律関係は、構成員の雇用する労働者を他人の指揮命令を受けて「自己のために」労働に従事させるものであり、
労働者派遣(労働者派遣法第2条第1号)には該当しない。
しかし、警備員が自己を雇用する警備業者の使用関係を離れて警備業務を行うこと又は当該警備業者以外の者からの
指揮命令を受けて警備業務を行うことは、警備員の不適正な警備業務の実施を誘発するおそれがあることから、
警備業者がその者の雇用する警備員に対し、必要な指導・監督を行うことが義務付けられている(法第11条第2項)。
したがって、警備業務の共同実施を行う場合には、共同企業体として一の警備業務対象施設等につき受注した業務を
区域等で分担し、各構成員がその責任において業務を実施することは認められるが、各構成員があらかじめ定めた
出資割合に応じて資金、人員等を拠出し一体として業務を実施するなど、個々の警備員に対する各構成員の指導監督を
それぞれ明確に区分することができない態様で業務を実施することは認められない。
2警備業務の共同実施に関する指針
1(1) 及び(2) において述べたことを踏まえ、警備業務の共同実施については次の指針によることとする。
(1) 共同企業体の構成員間の関係
ア共同企業体を結成するに当たっては、次に掲げる事項について定めた協定書を作成することとする。
@共同企業体構成員の氏名又は名称及び住所
A共同企業体の代表者及びその権限
B共同企業体構成員が連帯して責任を負う事項の範囲
C共同企業体構成員の行う一の警備業務対象施設等ごとの業務分担及び責任分担
D警備業務の共同実施の対象となる警備業務に従事する警備員に対する共同企業体構成員の指導監督に関する事項
Eその他共同企業体を構成するために必要な事項
イ警備業務の共同実施に当たっては、協定書に基づき、警備業務の提供行為を委託した者の委託内容に応じて、
次に掲げる事項について定めた警備計画書をあらかじめ作成することとする。
@警備業務の共同実施に係る一の警備業務対象施設等
A共同企業体の構成員の業務分担の区分
B警備業務の実施の方法
C警備員の配置及びそのうちの検定取得者の配置
D警備業務の共同実施に係る全体の連絡調整の責任者及び各共同企業体の構成員における連絡調整担当者並びに
連絡調整要領(緊急時の連絡調整要領を含む。)
Eその他警備業務の共同実施の適正を確保するために必要な事項
(2) 共同企業体と利用者との契約
共同企業体と利用者との契約書に次の事項を記載し、(1) の協定書及び警備計画書又はその要旨を添付することとする。
@共同企業体を代表する警備業者及び当該警備業者の当該警備業務に係る営業所の所在地
A警備業務の内容
B警備業務の実施につき委託者が支払うべき額に関する事項
C共同企業体が連帯してその責任を負う旨
Dその他共同企業体と利用者が契約する上で必要な事項
(3) 営業所備付け書類に関する事項
共同企業体の構成員は、営業所備付け書類のうち、「警備業務に関する契約ごとに、契約の相手方並びに警備業務の
実施の期間、場所、方法及び警備員数を記載した書類」(警備業法施行規則(昭和58年総理府令第1号)
第46条第1項第6号)に(1) ア@からCまで、(1) イ@からEまで、(2) @及びAに掲げる事項を記載し、
これに(1) の協定書及び警備計画書並びに(2)の契約書を添付することとする。
(参考)
複数の警備業者が一の警備業務対象施設等において警備業務を共同して実施することとなる場合として、
共同企業体のほかに、中小企業等協同組合法(昭和24年法律第181号)の規定により設立の認可を受けた
事業協同組合等が団体の名で警備業務の提供行為の委託を受けた上で、当該団体の構成員に当該警備業務の提供行為を
再委託するものがあり得るが、この場合における当該団体と当該組合員の関係は警備業務の提供行為の委託を受けた
当該団体から当該構成員が当該警備業務の委託を受けているものであるので、その取り扱いは、別に定める
「警備業者に対する警備業務提供委託に関する指針」によることとなる。
なお、警備業者等が企業組合又は協業組合を結成し、中小企業等協同組合法又は中小企業団体の組織に関する法律
(昭和31年法律第185号)の規定により設立の認可を受けて警備業を営もうとする場合には、
当該企業組合等が自ら法第4条の認定を受ける必要があることに留意されたい。
第1労働者派遣事業の意義等
1労働者派遣(1)〜(5) (略)(6) ジョイント・ベンチャー(JV)との関係
イJVの請負契約の形式による業務の処理
(イ)JVは、数社が共同して業務を処理するために結成された民法上の組合(民法第667条)の一種であり、
JV自身がJV参加の各社(以下「構成員」という。)の労働者を雇用するという評価はできないが、
JVが民法上の組合である以上、構成員が自己の雇用する労働者をJV参加の他社の労働者等の指揮命令の下に
従事させたとしても、通常、それは自己のために行われるものとなり、当該法律関係は、構成員の雇用する労働者を
他人の指揮命令を受けて、「自己のために」労働に従事させるものであり、法第2条第1号の「労働者派遣」には該当しない。
しかしながら、このようなJVは構成員の労働者の就業が労働者派遣に該当することを免れるための偽装の手段に
利用されるおそれがあり、その法的評価を厳格に行う必要がある。
(ロ)JVが民法上の組合に該当し、構成員が自己の雇用する労働者をJV参加の他社の労働者等の指揮命令の下に
労働に従事させることが労働者派遣に該当しないためには、次のいずれにも該当することが必要である。
aJVが注文主との間で締結した請負契約に基づく業務の処理についてすべての構成員が連帯して責任を負うこと。
bJVの業務処理に際し、不法行為により他人に損害を与えた場合の損害賠償義務についてすべての構成員が連帯して
責任を負うこと。
cすべての構成員が、JVの業務処理に関与する権利を有すること。
dすべての構成員が、JVの業務処理につき利害関係を有し、利益分配を受けること。
eJVの結成は、すべての構成員の間において合同的に行わなければならず、その際、当該JVの目的及びすべての
構成員による共同の業務処理の2点について合意が成立しなければならないこと。
fすべての構成員が、JVに対し出資義務を負うこと。
g業務の遂行に当たり、各構成員の労働者間において行われる次に掲げる指示その他の管理が常に特定の構成員の
労働者等から特定の構成員の労働者に対し一方的に行われるものではなく、各構成員の労働者が、各構成員間に
おいて対等の資格に基づき共同で業務を遂行している実態にあること。
1) 業務の遂行に関する指示その他の管理(業務の遂行方法に関する指示その他の管理、業務の遂行に関する評価等に
係る指示その他の管理)
2) 労働時間等に関する指示その他の管理(出退勤、休憩時間、休日、休暇等に関する指示その他の管理
(これらの単なる把握を除く。)、時間外労働、休日労働における指示その他の管理
(これらの場合における労働時間等の単なる把握を除く。))
3) 企業における秩序の維持、確保等のための指示その他の管理(労働者の服務上の規律に関する事項についての指示
その他の管理、労働者の配置等の決定及び変更)
h請負契約により請け負った業務を処理するJVに参加するものとして、a、
b及びfに加えて次のいずれにも該当する実態にあること。
1) すべての構成員が、業務の処理に要する資金につき、調達、支弁すること。
2) すべての構成員が、業務の処理について、民法、商法その他の法律に規
定された事業主としての責任を負うこと。
3) すべての構成員が次のいずれかに該当し、単に肉体的な労働力を提供するものではないこと。
@業務の処理に要する機械、設備若しくは器材(業務上必要な簡易な工具を除く。)又は材料若しくは資材を、
自己の責任と負担で相互に準備し、調達すること。
A業務の処理に要する企画又は専門的な技術若しくは経験を、自ら相互に提供すること。
(ハ)JVが(ロ)のいずれの要件をも満たす場合については、JVと注文主との間で締結した請負契約に基づき、
構成員が業務を処理し、また、JVが代表者を決めて、当該代表者がJVを代表して、注文主に請負代金の請求、
受領及び財産管理等を行っても、法において特段の問題は生じないと考えられる。
ロJVによる労働者派遣事業の実施
(イ)JVは、数社が共同して業務を処理するために結成された民法上の組合(民法第667条)であるが、
法人格を取得するものではなく、JV自身が構成員の労働者を雇用するという評価はできないため
(イの(イ)参照)、JVの構成員の労働者を他人の指揮命令を受けて当該他人のための労働に従事させ、これに伴い
派遣労働者の就業条件の整備等に関する措置を講ずるような労働者派遣事業を行う主体となることは不可能である。
したがって、JVがイに述べた請負契約の当事者となることはあっても、法第26条に規定する労働者派遣契約の
当事者となることはない。
(ロ)このため、数社が共同で労働者派遣事業を行う場合にも、必ず個々の派遣元と派遣先との間でそれぞれ別個の
労働者派遣契約が締結される必要があるが、この場合であっても、派遣元がその中から代表者を決めて、
当該代表者が代表して派遣先に派遣料金の請求、受領及び財産管理等を行うことは、法において特段の問題は
生じないものと考えられる。
(ハ)この場合、派遣先において、派遣元の各社が自己の雇用する労働者を派遣元の他社の労働者の指揮命令の下に
労働に従事させる場合、例えば特定の派遣元(A)の労働者が特定の派遣元(B、C)の労働者に対し
一方的に指揮命令を行うものであっても、派遣元(A)の労働者は派遣先のために派遣先の業務の遂行として
派遣元(B、C)の労働者に対して指揮命令を行っており、派遣元(B、C)の労働者は、派遣先の指揮命令を受けて
、派遣先のために労働に従事するものとなるから、ともに法第2条第1号の「労働者派遣」に該当し、
法において特段の問題は生じない。
ハその他
JVの行う労働者派遣事業に類するものとして、次の点に留意すること。
(イ)派遣元に対して派遣先を、派遣先に対して派遣元をそれぞれあっせんし、両者間での労勧者派遣契約の
結成を促し、援助する行為は法上禁止されていないこと。
(ロ)また、派遣元のために、当該派遣元が締結した労働者派遣契約の履行について派遣先との間で保証その他
その履行を担保するための種々の契約の締結等を行うことも、同様に法上禁止されていないこと。
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