交通誘導警備業務用資機材の種類
 交通誘導警備業務用資機材は、保安柵やセフティコーンなどの保安用資機材と、手旗や無線機など警備員が身にっけて使用するその他の資機材とに分けることができる。
 特に、高速自動車国道、自動車専用道路及び一般国道で工事が行われる場合は、著しく危険が伴う場所なので、交通誘導警備業務用資機材の機能、使用方法及び管理方法を熟知するとともに、現場の安全と受傷事故防止に努めるようにする。
(1) 保安用資機材
 交通誘導警備現場で使用される保安用資機材には、保安柵、セフティコーン、コーンバー、矢印板、回転灯、警告灯、歩行者案内板、各種標示板 (工事中、工事予告、車両通行止、迂回案内板等)、衝突吸収緩衝材(クッションドラム)、スポット照明灯、ネオンチューブ等がある。また、主に自動車専用道路等において使用される資機材として、誘導ロボット、発電機、車線規制用標識車両、大型セフティコーン等がある。
            

            

(2)その他の資機材
警備員が携帯するその他の資機材としては、警笛、手旗、大旗、誘導灯(赤色灯)、ヘルメット、夜光チョッキ、無線機等がある。
手旗については、赤色や白色のほかに、緑色、黄色、青色の手旗も使用されており、自動車専用道路等においては大型の旗が使用されることが多い。
また、誘導灯にっいても赤色に限らず、緑色や黄色の点滅式のものも流通し、使用されている。
無線機は、片側交互通行時などで使用されることが多く、一般的には、免許、資格等が不要の特定小電力トランシーバが使われているが、山間部や警備員相互の距離が遠い場合には、出力の大きい業務用携帯無線機や簡易業務用携帯無線機(電波法による規制対象となることに注意)が使用されることもある。
交通誘導警備業務用資機材の使用用途及び機能
(1)衝突吸収緩衝材(クッションドラム)
 車両等の衝突による衝撃を緩和するものであり、高速道路等の分岐点や長期における車線規制時の誘導帯として用いられている。ドラム内には水袋が入っており、これによって衝撃を吸収する。また、縦方向に厚く設置することによって、衝突時の衝撃をより緩和することができる。


(2)誘導ロボット
 高速道路等で交通誘導警備員の補助として使用される。固定された片腕に回転灯、スイングする片腕にLED(又は旗)が装備され、車両に対し通行車線の変更を促すことを目的として使用するものである。規制帯起点側の導流帯部分の中間地点に設置されることが多い。


(3)車線規制用標識車両
 主に高速自動車国道や自動車専用道路において使用するもので、高速で移動する車両に対し、工事に伴う規制帯の明示や車線変更等を促すことを目的として使用するものである。標識車両は、規制帯起点側の導流帯の終了地点に設置することが多い。


(4)回転灯、回転警告灯
 車両に対し、車線規制が行われていることの注意を促すことを目的として使用されるものである。一般的に、黄色の回転灯が使用されているが、高速道路等では赤色系で大型の回転式警告灯を使用することが多くなっている。


(5)工事用信号機
 公安委員会が法令によって設置するものとは異なり、あくまでも道路工事等の施工者がより安全性を期すために任意に設置されるものである。一般的には、危険防止のため警備員の誘導と併用されている。
保安用資機材の設置等
 高速自動車国道や自動車専用道路における交通誘導警備業務においては、保安用資機材の準備、設置及び撤去に関する業務を警備業者が一括して受託していることもある。
 この場合、一般道路や自動車専用道路等の各現場において、警備員自らが保安用資機材を設置することとなる。警備員自らが設置する場合は、それら保安用資機材の機能を理解するとともに、受傷事故の防止に努めるようにする。
(1) 保安用資機材の設置要領
 保安用資機材の設置に当たっては、道路使用許可証に付された条件を遵守するとともに、次の事項に留意する。
ア 「工事予告」標示板は、原則として、工事現場の手前50メートルから250メートルの道路上の左側に設置する。また、自動車専用道路等においても、あらかじめ指定された場所に設置する。
イ 保安用資機材の設置は、通行する車両の進行方向(起点)から始め、撤去する場合は、進行方向の逆の地点(終点)から行う。
ウ 交通流に対面する起点側の保安用資機材と中央線との角度は、車両の安全な通行を確保するため、おおむね15度となるように設置する。ただし、道路状況や周辺の状況等により30度〜45度程度の場合もある。
エ 交通流に対面する起点側の保安用資機材は、隙間なく並べて仕切るが、対面しない側(中央線上等)の保安用資機材は、適当な間隔を空けて配列してもよい。
オ 「工事中」等の各種標示板は、工事区間の起点と終点に設置する。
カ 保安用資機材が強風や車両通過時の風圧によって転倒しないよう、土嚢の設置やパイプ等による固定その他必要な安全措置を講じる。
キ 夜間は、回転灯や内照式セフティコーン、スポット照明灯等、その他反射加工を施した保安用資機材を設置する。
ク 自動車専用道路等においては、発炎筒の使用や警戒員の配置、警戒標識車両を配置するなどの安全対策を講じる必要がある。また、道路工事等に伴う車線規制を行う場合、その規制区間をおおむね次のように区間分けし、機能的な誘導に努めることが望ましい。
(2)歩行者用通路の設置要領
 工事区域が歩道等に及ぶような場合には、一般歩行者の通行が困難になるため、車道上の安全な場所に歩行者用通路を設置する必要がある。その場合、次の事項に留意する。
ア 歩行者用通路は、道路の凹凸やぬかるみがなく、転倒するおそれのない場所に設置する。
イ 歩行者用通路は、落下物等危険なおそれのある場所を避けて確保する。
ウ 保安柵やセフティコーン、コーンバー等によって、十分な幅員(通常1.5メートルやむを得ない場合でもO.75メートル以上)の歩行者用通路を確保する。
エ 作業現場との境界は、保安用資機材を隙間なく並べて仕切るとともに、風圧等で動くことがないよう安全な措置を講じる。
オ 歩行者用通路の起点と終点の見やすい場所に、「歩行者通路」等の標示板を設置する。
カ 夜間は常に十分な照明を点灯し、標示板や歩行者用通路が周囲からよく見えるようにする。
(3)道路使用許可条件の遵守義務
 道路工事に伴う道路使用許可の条件には、必ず保安用資機材の配置について記載されており、示された条件以外の設置の方法をとると道路使用許可違反になるほか、周辺の交通に重大な危険を及ぼすおそれもある。
 警備員がそれらの条件を知らずに交通誘導警備業務を行うことは、道路使用許可条件の違反につながることもあるので、必ず事前に確認しておく。
無線機の使用方法、通話要領
機種によってスイッチの位置や呼称、機能等が異なるので、使用前に取扱説明書にて確認する必要がある。
(1)使用方法
ア 通話時間の制限
特定小電力無線局及び技術基準適合証明を受けた無線局として認定された携帯用無線電話装置は、通話時間が3分以内との定めがあり、通話時間が3分を超えると自動的に終了するが、その約10秒前に警告音が鳴る。
イ通話距離
通話距離は市街地、郊外、山岳部等で異なるので注意が必要であるが、特定小電カトランシーバの場合、市街地でおおむね100〜200メートル程度、郊外でおおむね500〜1,000メートル程度である。


(2)通話要領
 無線機による通話は、できる限り多くの機会を捉えて通話に「慣れる」ことが大事である。しかし、突発的な事故発生の現場では、熟練者であっても的確な指令や報告にとまどってしまうことがある。拙劣な通話は、単に、本人の意思が相手に正確に伝わらないだけでなく、他局の通信を阻害し、ひいては、警備業務に重大な影響を及ぼすことになるので、常に冷静な通話ができるよう訓練を積み重ねておくことが肝要である。
 通話上の留意点を挙げると、次のとおりである。
ア 通話を行う際は、沈着冷散を旨とし、感情に走り、あるいは興奮して、いたずらに高声を発することのないように留意する。
イ 聴取を確実に励行し、応答遅延や受信漏れ等を起こさないように留意する。
ウ 自己の通信を他に優先するよう強要しない。
エ 送信は、送信スイッチを押して1〜2秒経ってから行う。
オ マイクは、口から5〜10センチメートル離して、普通の大きさの声で話す。
カ 通話の速度は、日常会話の程度を基準とし、相手方の受信状態や通話の内容によって調整する。
キ 通話の内容は、あらかじめ簡明にまとめておく。
ク 通話を始めようとするときは、他の局が通信中かどうかを確認する。 もし、通信中であるときは、至急通信の場合を除き、その通信が終了した後で行う。
ケ 呼出しに対する応答がないときは、いたずらに呼出しを繰り返すことなく、機器に異常がないかを点検する。
コ 通話前にそれぞれのコールサインを決定しておく。
サ 不感地帯を避けるほか、車両のエンジン音その他雑音による支障のない場所を選定する。また、ビルの谷間では、相互の電波到達距離が短くなることに注意する。
シ 通話中に、しばらく相手を待たせなければならない場合は、いたずらに電波を独占しないで途中でいったん送信を中止し、他の局に通信の機会を与える。
ス 送信が30秒以上にわたるときは、至急通話の割込み等を容易にするため、約30秒ごとに2〜3秒間、電波の発射を停止する。
交通誘導警備業務用資機材の点検と整備
交通誘導警備業務に従事する警備員は、交通の安全と円滑を図るために交通誘導警備業務用資機材の機能を常に有効に保持するよう努める。
 適正な維持管理を怠ると、業務遂行に支障をきたすばかりでなく、道路交通法違反や交通事故を誘発することにもなり、個々の警備員及び所属会社はもとより、広く警備業全体に対する社会的信頼を失墜させることにもつながる。したがって、警備員は業務の適正な実施を図るために、平素から交通誘導警備業務用資機材の点検を励行し、確実な維持管理に努めることが肝要である。
 交通誘導警備業務用資機材の適正な管理のために必要な事項は、次のとおりである。
ア 常に員数を掌握しておく。また、保管場所は雨などが当たらない所で、鍵のかかる場所を選定する。
イ 整理整頓を励行し、業務中においても、歩行者通路内や定められた場所以外に放置しない。
ウ 紛失したり破損することのないよう丁寧に取り扱う。
エ 乾電池その他の消耗品や代替品は、予備品を常備しておく。
合図の方法
(1) 基本的心構え
 交通誘導警備業務に従事する警備員の一挙手一投足が、人や車両の安全を左右する。また、交通誘導警備員の規律ある動作は、一般の歩行者や運転者に好感を与え、当該警備員だけでなく、広く警備業界全体に対する評価を高めることになる。
 交通誘導警備業務を実施する際の基本的な心構えは、次のとおりである。
交通誘導警備業務は、あくまでも相手方の自発的な協力に基づいて行われるものであり、あたかも特別に権限を有する者のように指示したり、命令することのないようにすることはもちろん、常に言語態度には十分留意し、いたずらに紛議を引き起こさないようにする。
基本の姿勢及び合図の方法の要領を把握し、節度を守り、わかりやすい動作で行う。
常に周囲の交通状況を把握し、工事関係車両等特定の車両のみを優先した誘導を行わないようにする。また、誘導の不手際によって交通事故を引き起こしたり、一般車両等に迷惑を掛けたりすることのないよう、常に現場の交通状況全般に気を配り、安全かつ円滑な交通の誘導に努める。
交通誘導警備業務は、信号機、道路標識等が設けられている場所においてはこれらに従い、現場に警察官等がいる場合にはその指示に従う。また、道路交通法の定める車両及び歩行者の通行方法に適合する範囲内で行う。
道路工事現場等で交通誘導警備業務に当たる場合は、道路使用許可条件を熟知したうえでその条件を遵守し、安全かつ円滑な誘導に努める。
歩行者や通行車両等の安全を図るとともに、工事用車両及び工事関係者並びに警備員自身の受傷事故の防止に努める。
誘導の方法が複雑となる交差点等や、交通量の多い場所で交通誘導警備業務を行う場合には、事前に当該場所を管轄する警察署に連絡し、その具体的な指導を受けるようにする。
交通誘導警備業務に当たる警備員は、服装、頭髪、その他の身だしなみを清潔・端正にすることはもちろん、体調を整え、平素から誘導技術の向上に努め、心身ともに良好な状態で交通誘導警備業務を行うように心掛ける。
(2)具体的留意事項
ア 工事現場等での車両の誘導
横断歩行者等の通行の安全については、特に配慮する。
工事関係車両を誘導する際は、一般車両や歩行者の通行の間隙を縫い、かつ、安全を確認してから行う。
交通流に逆らって、工事関係車両等を無理に出入りさせない。
工事関係車両等が工事現場へ右折にて入るため、対向車両等の通過待ちをして、その後続車両の通行を妨げているときは、必要によって、対向車両の停止を求めて工事関係車両等を誘導するなど、工事関係車両等が円滑な交通を妨げることのないようにする。
交互通行等、複数の警備員によって交通誘導警備業務を行う場合は、相互に連携して行う。
出入りする車両の多い工事現場等においては、原則として、出入口の右方道路から左折をさせて工事現場内等に進入させ、出入口から左方道路に左折をさせて道路へ進行させる。
工事関係車両等を道路上で順番待ちをさせるなどの停車又は駐車は原則させない。
車両を相互通行させるときは、 道路の狭い部分に入る手前で十分に速度を落とすよう、徐行を促す。
盛土や路肩等地盤の軟弱な場所へ車両を誘導しないよう注意する。 なお、やむを得ない場合は、運転者にその旨を伝えて慎重に運転するよう伝える。
イ ー般車両を停止させる場合
工事関係車両等を優先させるため、一般通行車両に無理な停止を求めるなどして、円滑な交通の流れに支障を及ぼすことのないようにする。
交互通行のため、やむを得ず一般車両に停止を求めるときは、停止を求めようとする車両の速度やその後続の車両の有無等を考慮し、無理に停止を求めない。また、工事現場と車両が停止する場所とは十分な距離をおき、対向車両がすれ違う際の妨害とならないようにする。
走行中の車両の進行方向の前面に出て停止を求めることは、極めて危険なので絶対に行わないようにする。
一般車両に停止を求める場合には、道路の左側端に沿って停止できるようにする。
次に掲げる場所には、やむを得ない場合を除き停止させない。また、そのような場所に停止車両が滞留することがないようにする。 交差点、横断歩道、自転車横断帯、踏切、軌道敷内、坂の頂上付近、勾配の急な坂、トンネル、道路の曲がり角付近、バス停付近、安全地帯周辺
停止の合図は、特にゆとりを持ってはっきりと行う。また、悪天侯の下で停止を求める場合は、車両の制動距離に留意する。
ウ 停止した車両を発進させる場合
停止した車両に対しては、発進まで停止の合図を継続して行う。
停止した車両を発進させる場合は、他の交通の状況を見て、安全を確認した後に発進させる。特に片側交互通行を行っている場合には、反対方向からの車両が確実に停止していることを確認してから発進させる。
エ その他の留意事項
他の正常な交通を妨害するおそれのあるときは、横断、転回、後退等をさせない。
誘導の対象となる車両の死角に入らないよう注意し、常に運転者から警備員の存在が見える位置で誘導する。
誘導の相手方が横断、転回、後退等を開始した後も、他の交通の状況に常に注意を払う。
(3)合図の確実な伝達方法
交通誘導警備員の行う合図が相手方に確実に伝わらなければ、交通の安全と円滑を図るという交通誘導警備業務の目的を達することができなくなる。
したがって、合図は確実に相手方に伝えることが大切であり、そのためには、次の事項に留意する必要がある。
誘導の対象となる車両の運転者はもちろん、他の車両の運転者からも警備員の姿がよく見え、かつ、車両に接触するおそれのない位置を選定する。
周囲のエンジン音やその他の騒音のために、合図が運転者に確実に伝わらないと認められるときは、警笛や拡声器を積極的に活用する。
パワーショベル等は、急に旋回、前進及び後退することがあるので、常に安全な距離を保ち、かつ、運転者から合図を確認できる位置を選定する。
合図は大きい動作で、かつ、わかりやすい早さで行う。
自己流の合図や不必要な動作は、相手方を困惑させるだけでなく、合図として正確に伝わらないので、動作及び警笛の吹鳴要領は、正しく基本に忠実に行う。
後進車両を誘導する際は、音声又は警笛を使用するほか、右折又は左折する場合は、必ず運転者と事前にその方向などについて打合せを行う。
合図を行う場合は、原則として、誘導する車両の運転者に注目して行う。
ー般通行車両の運転者が警備員の合図を十分に認識し、余裕を持って対応できるよう、当該車両から工事現場までの距離や当該車両の速度等を掌握して合図を行う。
合図の種類と基本動作
 交通誘導警備業務に従事する警備員は、体の向きや手足の動きそのものが、人や車両の通行に大きな影響を与えることに留意し、常に正しい姿勢と要領で合図を行うことが重要である。
(1) 手旗、素手による合図の方法
ア 基本の姿勢
軽くかかとを接し、ひざを伸ばす。
背を伸ばし、両ひじは自然に垂らして、上体を腰の上に正しく保つ。
左右に注目する場合には、頭だけをその方向に向けるようにし、上体をねじらない。
  

イ 停止の合図
体を、停止を求めようとする車両の方向に正対させる。
手旗を側頭部に沿って垂直に上げた後、車両を注視しながら、ひじや手首を曲げずに小角度(約30センチメートル)に左右に振り、停止の予告を行う。
手旗を肩の高さまで水平に下ろす。
停止の予告を行っているときなどに、手旗が絡まった場合には、必ず手旗を一旦下ろして直す。手旗を上げたまま絡みを直すために振り回したりすることは、相手に対する合図の内容が不明確となるばかりか、混乱を引き起こすこともあるので絶対に行わない。
停止を求めて停止した車両に対しては、発進までの間、停止の合図を継続する。


ウ 進行の合図
体を、進行させようとする車両の進行方向に平行にする。
車両を注視しながら、手旗を進行させようとする車両の方向へ、両肩の延長線上に水平に向ける。
進行方向の安全を確認し、手旗を水平の位置から反対側の下方約45度の位置まで、ひじや手首を曲げずに下を通って大きく振る。この場合、手旗を振る幅はできる限り大きく、かつ、わかりやすい速さで行う。その後、速やかに基本の姿勢に戻るが、車両が自分の前を通過するまでは、注視を継続する。


エ 幅寄せの合図
体を、幅寄せを求めようとする車両の方向に、やや半身にさせる。
右(左)に寄せる(車両から見て)場合は、右(左)手を垂直に上げ、車両を注視しながら右(左)から左(右)(頭上から肩の高さ)に向かつて白旗を振る。


オ 徐行の合図
体を、徐行を求めようとする車両の進行方向に平行にする。
車両を注視し、車両側の白旗を手の甲を上に体と平行にし、肩の高さと水平に伸ばす。
手旗を手首のスナップによって、上下に振る。


力 後進の合図
(ア)手旗による場合
体を、後進させようとする車両の進行方向に平行にする。
進行させようとする側の手に赤旗、車両の側の手に白旗を持つ。
赤旗を自分の前方にまっすぐ伸ばし(素手の場合は全指をそろえて手のひらを進行方向に向け)後続してくる車両等に停止(又は注意)の合図を継続する。
進行方向の安全を確認しつっ、白旗を進行の合図の要領で左右に大きく下を通って振りながら、車両と距離を保ち誘導する。
後進誘導を行う位置は、原則として、車両の側面から2メートル以上、車両後部から5〜10メートル離れた位置で、バックミラーなどから運転者に見える位置で行う。


(イ)素手で後進誘導を行う場合
体を、後進させようとする車両の進行方向に平行にする。
後方の安全を確認し、車両側の腕を肩の高さに伸ばす。
手のひらを上にし、肩の高さから大きく半円を描くようにおおむね顔の位置までひじから先を曲げて前腕を振る。
移動するときは、足がからまないよう、自然に歩行する。
 下図は、警備員が歩道上又は道路の左側端で後進の誘導を行う場合の警備員の位置を示したものであるが、工事現場等で車両の右側が安全である場合には、車両の右側で誘導する場合もある。実際の誘導の実施方法について、例を示すと下図のとおりである。

合図の種類と基本動作
(2)大旗による合図の方法
大旗は、主に高速道路等において高速で移動する車両に対し、明確に合図を伝えるために使用される。手旗と同様に、昼間で雨が降っていないときに使用される。
ア 停止の合図(大旗2本)
体を、停止を求めようとする車両の方向に正対させる。
車両を注視し、両手に持った大旗を側頭部に沿って垂直に上げ、先端を左右に約30センチメートルの幅で振り、数回交差させる。
大旗を肩の高さと水平に真横に下ろす。
    

イ 進行の合図
体を、進行させようとする車両の方向に、やや半身にする。
進行方向の安全を確認した後、車両を注視し、大旗を体と平行に車両方向へ向ける。
大きく円を描くように体の前を通って、車両を進行させる方向へ45度振る。


ウ 幅寄せの合図
体を、幅寄せを求めようとする車両の方向にやや半身にする。
右(左)に寄せる(一般車両から見て)場合は、右(左)手の旗を垂直に上げ、車両を注視しながら右(左)から左(右)(頭上から肩の高さ)に向かつて大きく円を描くように旗を振る。


エ 徐行の合図
体を、徐行を求めようとする車両の方向に正対させる。
車両を注視し、旗を頭上に上げ、ゆっくりと上下に繰り返し振る。


合図の種類と基本動作
(3)誘導灯(赤色灯)による合図の方法
夜間や降雨時には、手旗、素手、大旗に替えて、誘導灯を使用することが多い。
誘導灯による合図の方法は、手旗による合図の方法に準じるが、一本の誘導灯で赤旗、白旗の両方の役目をさせるため、場合によって持ち替えたり、反対の素手によって合図の補足をする必要がある。
ア 停止の合図
体を、停止を求めようとする車両の方向に正対させる。
誘導灯を側頭部に沿って垂直に上げた後、車両を注視しながら、ひじや手首を曲げずに小角度(約30センチメートル)に左右に振り、停止の予告を行う。
誘導灯を肩の高さまで水平に下ろす。
停止を求めた車両には、発進までの間、停止の合図を継続する。
    

イ 進行の合図
体を、進行させようとする車両の進行方向に平行にする。
車両を注視しながら、誘導灯を進行させようとする車両の方向へ、両肩の延長線上に水平に向ける。
進行方向の安全を確認し、誘導灯を水平の位置から反対側の下方約45度の位置まで、ひじや手首を曲げずに下を通って大きく振る。この場合、誘導灯を振る幅はできる限り大きく、かつ、わかりやすい速さで行った後、速やかに基本の姿勢に戻るが、車両が自分の前を通過するまでは、注視を継続する。
ウ 幅寄せの合図
体を、幅寄せを求めようとする車両の方向に、やや半身にする。
右(左)に寄せる(車両から見て)場合は、右(左)手に持った誘導灯を垂直に上げ、車両を注視しながら右(左)から左(右)(頭上から肩の高さ)に向かつて誘導灯を振る。
エ 徐行の合図
体を、徐行を求めようとする車両の進行方向に平行にする。
車両を注視し、進行してくる車両側の手に誘導灯を持ち、手の甲を上に体と平行にし、肩の高さに水平に伸ばす。
誘導灯を手首のスナップによって、上下に振る。
オ 後進の合図
体を、後進させようとする車両の進行方向に平行にする。
誘導しようとする車両の側の手に誘導灯を持つ。
誘導灯を持っていない側の手は全指をそろえて肩の高さにまっすぐ伸ばし、進行方向を示す。
進行方向の安全を確認しつつ、誘導灯を肩の高さから大きく半円を描くようにおおむね顔の位置までひじから先を曲げて振りながら、車両との距離を保ち誘導する。
合図の種類と基本動作
(4)警笛の使用方法
合図を行う場合の補助として警笛を使用するときは、原則として、次のように吹鳴する。


ア 停止の合図を行うときは、腕の動作に合わせて、やや長く (3秒ぐらい)吹鳴する。
イ 停止の合図に従わない歩行者や車両等に対しては、周囲の状況から見て、そのまま進行を継続させることが危険であると判断される場合に限り、短く数回連続して吹鳴し、停止を促す。
ウ 進行の合図を行うときは、停止している車両や歩行者は警備員に注目し、その進行の合図を待っている状態にあるので、警笛は長く吹鳴する必要はなく、手旗等を進行方向に振りながら、短く(0.5秒ぐらい。大旗の場合は1秒ぐらい)吹鳴する。
エ 後進の合図を行うときは、腕の動作に合わせて、短音と長音を連続して、吹鳴する。
停 止 ピーピッ. 腕の動作に合わせて長音(約3秒間)を吹鳴する。
進 行 ピッ.又はピーッ. 腕の動作に合わせて(手旗、誘導灯では約0.5秒間、大旗では約1秒間)吹鳴する。
後 進 ピピー.ピピー. 腕の動作に合わせて短音と長音の組合せを等間隔で繰り返し、吹鳴する。
位置の選定と相互通行及び工事現場等の出入口における交通誘導
(1)基本的留意事項
交通誘導警備業務は、道路工事の態様、当該道路及び交通の状況等に応じて、安全かつ適正に車両等の誘導を行い得る位置で行うことが必要である。その位置の選定に当たっては、次の事項に留意する。
ア 原則として、道路の左側端(歩道が設けられている道路にあっては歩道上)又は道路工事のために設けられた保安柵の内側で行う。
イ ー般の歩行者、車両等から警備員自身の存在が容易に確認できる位置で行う。
ウ 警備員から周辺の交通状況を見渡すことができる位置で行う。
工 警備員の存在が交通の妨害とならず、かつ、機敏に動くことができ、通行する車両による危険を避けることができる位置で行う。
オ 現場は足元が不安定な場所が多いため、転倒やすべりなどによって受傷することのないよう、安全な位置を選んで行う。
力 起重機等は、急に旋回、前進、後退等をするので、特にその動きに注意する。
キ 交差点や曲がり角等で誘導を行う場合は、一般車両の内輪差等を考慮した安全な位置で行う。
(2)その他の留意事項
ア 単路における道路工事現場等で相互通行の場合(警備員2名の場合)
Aは左方からの車両及び歩行者に対する誘導を行う。
Bは右方からの車両及び歩行者に対する誘導を行う。
場合によって、無線機を使用して警備員相互の連携を図る。
イ 工事現場、駐車場等の施設の出入口(付近に信号機がない単路で警備員1名の場合) 道路を通行する車両や歩行者及び工事現場、駐車場等へ出入りする車両等の誘導
工事関係車両等の誘導は、やむを得ない場合を除き、一般交通の間隙を縫って行う。
工事関係車両等を出入りさせる際は、十分速度を落として徐行させる。
ウ 後進車両を誘導する場合(警備員1名の場合)
左右どちらに誘導するかを、事前に運転者と打ち合わせる。
死角となる場所に入らない。
受傷事故を防止するため、常に車両との安全な距離を保ち、また、車両の外輪差についても考慮に入れる。
停止の合図は、余裕を持って行う。
音声又は警笛を併用する。
(3)受傷事故防止のための注意事項
ア 合図の動作は明確に行い、運転者がその合図を了解したかどうかを確認する。
イ 誘導を行う位置は、一般通行車両から見えやすく機敏に動くことができ、安全な場所で、かつ、通行する車両による危険を避けることのできる場所を選定する。
ウ 交通誘導警備業務を実施する場合は、必ずヘルメットを着用し、セフティコーン等の交通誘導警備業務用資機材を積極的かつ効果的に活用する。
エ 夜間の交通誘導警備業務に際しては、必ず夜光チョッキを着用し、照度の十分な誘導灯を使用する。また、交通誘導警備業務用資機材は、夜光性のもの、又は反射装置を施したものを使用する。
オ やむを得ない場合を除き、むやみに車道中央に出ない。
カ 特に夜間は、過労運転、飲酒運転、スピード違反等による重大事故の発生が多いことに留意するとともに、運転者の運転技能を過信しない。