◎警備業法 参照条文(警備業法) 
警備業法は、安全な社会の基盤を形成する産業として、警備業を健全に発展させるため、警備業務の実施の適正を図ることを目的として、昭和47年7月に制定公布され、同年11月に施行された。 警備業は、その後10年の間に、社会の需要に応じてさらに著しい発展を遂げた。空港や原子力発電所を対象とする警備業務も広く行われるなど活動領域が拡大されるとともに、警備業務の機械化が急速に進み、質、量ともに大きく伸展した。このような情勢の変化に伴い、警備業務の実施の適否が社会に及ぼす影響は、従来とは比較にならないほど大きくなったが、昭和47年当時の状況を前提とした法規制では、対処しきれない情勢となったため、昭和57年に警備業法の一部が改正された。その後、警備業者等の欠格事由に、暴力団員と密接な関係にある者等が追加されるなど、警備業法の一部が平成14年に改正された。
さらに、平成15年警察庁の「緊急治安対策プログラム」及び犯罪対策閣僚会議が決定した「犯罪に強い社会の実現のための行動計画」において、安全で安心なまちづくりのため「警備業の育成と活用」を進めるとした。これを受けて、警備員の知識及び能力の向上、警備業務の依頼者の保護を中心とした警備業法の一部が改正され、平成17年11月施行された。
警備業法は、第1章で目的と用語の定義、第2章で警備業の要件、警備業者の認定制、営業所の届出等、第3章で警備業務実施の基本原則等の遵守義務、第4章で警備員の教育等、第5章で機械警備業務の適正実施等、第6章で公安委員会の行政上の監督等、第7章で手数料に関する規定等の雑則、第8章で罰則をそれぞれ定めている。
(1)目 的
第1条 この法律は、警備業について必要な規制を定め、もつて警備業務の実施の適正を図ることを目的とする。    
警備業は、他人の需要に応じて、人の生命、身体及び財産等に対する侵害を警戒し、防止するという業務の性格上、その実施に当たっては、他人の権利や自由を侵害し、又は個人若しくは団体の活動に干渉するなど、違法、不当な行為を伴うおそれのある営業であるという側面を有している。
また、他人の依頼を受けて、防犯、防災活動等を行うという業務の性質から、万一、不適切な態度で実施されると、国民生活に大きな不安と混乱を与えるおそれのある営業であるということができる。
このような理由から、警備業者及び警備員に対する行政上の監督を行うとともに、警備業の健全な発展を図る必要があるとの観点から本法が定められたものである。
「警備業務の実施の適正を図ること」とは、警備業務の実施に伴う違法又は不当な事態の発生を防止すること、警備業務の適切な実施を促進することである。
 (2)定 義
第2条 この法律において「警備業務」とは、次の各号のいずれかに該当する業務であって、他人の需要に応じて行うものをいう。
一 事務所、住宅、興行場、駐車場、遊園地等(以下「警備業務対象施設」という。) における盗難等の事故の発生を警戒し、防止する業務
二 人若しくは車両の雑踏する場所又はこれらの通行に危険のある場所における負傷等の事故の発生を警戒し、防止する業務
三 運搬中の現金、貴金属、美術品等に係る盗難等の事故の発生を警戒し、防止する業務
四 人の身体に対する危害の発生を、その身辺において警戒し、防止する業務
2 この法律において「警備業」とは、警備業務を行なう営業をいう。
3 この法律において「警備業者」とは、第4条の認定を受けて警備業を営む者をいう。
4 この法律において「警備員」とは、警備業者の使用人その他の従業者で警備業務に従事するものをいう。
5 この法律において「機械警備業務」とは、警備業務用機械装置(警備業務対象施設に設置する機器により感知した盗難等の事故の発生に関する情報を当該警備業務対象施設以外の施設に設置する機器に送信し、及び受信するための装置で内閣府令で定めるものをいう。) を使用して行う第1項第1号の警備業務をいう。
6 この法律において「機械警備業」とは、機械警備業務を行う警備業 をいう。

 本条は、この法律の対象となる警備業務、警備業者、警備員の定義を明確にしたものである。 「他人の需要に応じて行う」とは、他人との契約に基づき、他人のために行うことをいう。
 第1項各号に掲げる業務は、法制定当時において現実に行われていた警備業務を四つの態様に分けて類型的に示したものである。
 第1号の警備業務は、いわゆる施設警備業務といわれるものである。
 第2号の警備業務は、祭礼、催し物等によって混雑する場所での雑踏整理、道路工事現場周辺等での人や車両の誘導等を行う業務をいう。雑踏警備業務、交通誘導警備業務。
 第3号の警備業務は、現金等の貴重品や核燃料物質等危険物の運搬に際 し、その正常な運行を妨げるような事故の発生を警戒し、防止する業務をいう。貴重品運搬警備業務。
 第4号の警備業務は、人の身体に対する危害の発生をその身辺において警戒、防止するいわゆるボディガード等の業務をいう。身辺警備業務。
 (3)警備業の要件
第3条 次の各号のいずれかに該当する者は、警備業を営んではならない。
一 成年被後見人若しくは被保佐人又は破産者で復権を得ないもの
二 禁錮以上の刑に処せられ、又はこの法律の規定に違反して罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して5年を経過しない者
三 最近5年間に、この法律の規定、この法律に基づく命令の規定若しくは処分に違反し、又は警備業務に関し他の法令の規定に違反する重大な不正行為で国家公安委員会規則で定めるものをした者
四 集団的に、又は常習的に暴力的不法行為その他の罪に当たる違法な行為で国家公安委員会規則で定めるものを行うおそれがあると認めるに足りる相当な理由がある者
五 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成3年法律第77号)第12条若しくは第12条の6の規定による命令又は同法第12条の4第2項の規定による指示を受けた者であって、当該命令又は指示を受けた日から起算して3年を経過しないもの
六 アルコール、麻薬、大麻、あへん又は覚せい剤の中毒者
七 心身の障害により警備業務を適正に行うことができない者として国家公安委員会規則で定めるもの
八 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者。ただし、その者が警備業者の相続人であって、その法定代理人が前各号のいずれにも該当しない場合を除くものとする。
九 営業所ごと及び当該営業所において取り扱う警備業務の区分(前条第1項各号の警備業務の区分をいう。以下同じ。) ごとに第22条第1項の警備員指導教育責任者を選任すると認められないことについて相当な理由がある者
十 法人でその役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者をいい、相談役、顧問その他いかなる名称を有する者であるかを問わず、法人に対し業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者と同等以上の支配力を有ずるものと認められる者を含む。) のうちに第1号から第7号までのいずれかに該当する者があるもの
十一 第4号に該当する者が出資、融資、取引その他の関係を通じてその事業活動に支配的な影響力を有する者
 警備業務は、他人の需要に応じて、人の生命、身体、財産等を守ることを主な内容とする業務であるので、警備業者には一定の人的信頼性が要求され、また、警備業務の適正な管理運営を期待し得ない者が警備業を営むことを禁止する必要がある。このような必要性から、本条は、警備業を営んではならない者について定めたものである。
第1号に掲げる者 ・・・「成年被後見人」とは、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にあるため、裁判所から後見開始の審判を受けている者をいう。 「被保佐人」とは、精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分な者で、裁判所から保佐開始の審判を受けている者をいう。  また、「破産者で復権を得ないもの」とは、破産法の規定に基づき裁判所が破産手続開始を決定した者で復権を得ていない者をいう。
第2号に掲げる者・・・ 「執行を受けることがなくなつた」場合としては、刑の時効が完成したとき及び仮釈放を許された者がその残余期間を終了したときが挙げられる。
第3号に掲げる者・・・ 「警備業務に関し」とは、警備業務に密接に関連してという意味であり、警備業務を行うに当たって違反が行われた場合、警備業者又は警備員の地位を利用して違反が行われた場合等がこれに該当する。
第4号に掲げる者・・・ 「集団的に」とは、団体若しくは多人数又は数人共同してという意味であり、「常習的に」とは、同一の行為を反復して行うことがこれに当たる。
第5号に掲げる者・・・ 本号中の暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第12条中の規定による[命令を受けた者]とは、暴力団員に暴力的要求行為をするよう依頼したり、暴力団員による暴力的要求行為をその現場で助けたため、公安委員会から再発防止命令や中止命令を受けた者をいい、同法第12条の6の規定による「命令を受けた者」とは、指定暴力団等に所属していない者が、その指定暴力団等の名刺やバッジを借りるなどして、人に対して指定暴力団等の威力を示し、不当な要求を行うような準暴力的要求行為を行ったため、公安委員会から中止命令や再発防止命令を受けた者をいう。また、同12条の4第2項の規定による「指示を受けた者」とは、指定暴力団の等の暴力団員から先に述べたような準暴力的要求行為を行うよう求められた者のうち、その暴力団員ともともと密接な関係を有することなどから、そのまま放置すると準暴力的要求行為を行いかねないために公安委員会から準暴力的要求行為をしてはならない旨の指示を受けた者をいう。
第6号に掲げる者・・・本号に該当するものが警備業を営むことを禁止したのは、これらの者は一般的に判断力、自制力にかけるところがあり、さらには、他人の生命、身体及び財産等を侵害するおそれもあり、適正な警備業務の管理運営を期待し得ないと認められるからである。
第7号に掲げる者・・・本号に該当するものが警備業を営むことを禁止したのは、前号と同じ理由であるが、該当の有無については精神障害であれば一律に欠格となるものではない事に留意する必要がある。精神機能の障害に関する医師の診断書の提出を受けて、業務を適正に遂行する能力を有するかどうかという観点から判断すべきものであり、例えば軽度のうつ病と診断されていても警備業務を適正に行い得ると医師の診断書から認められような者は、この欠格要件に該当しない。
第8号に掲げる者・・・ 「営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者」とは、未成年者の中で、親権者又は後見人から営業することについて許可された者及び婚姻によって成年者とみなされた者以外の者をいう。
第9号に掲げる者・・・ 「警備業務の区分ごとに… 警備員指導教育責任者を選任すると認められない」とは、警備業務の区分ごとの開始までに、当該警備業務の区分に係る警備員指導教育責任者資格者証の交付を受けている者を警備員指導教育責任者として選任できる状況に至る見込みがないことを意味し、「相当な理由がある」場合としては、警備員指導教育責任者の選任予定者が確定していない場合、当該営業所に勤務することが不可能と認められる者を選任予定者としている場合等がこれに当たる。
第10号に掲げる者・・・ 「役員」とは、業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者のことをいう。 「業務を執行する社員」とは、会社法第590条に規定する持分会社の業務を執行する社員のことをいい、また、「取締役」とは、株式会社におけるものをいう。「執行役」とは、会社法第2条第12号に規定する委員会設置会社に置かれ、その業務執行を行う者のことをいい、「これらに準ずる者」とは、株式会社の監査役、財団法人及び社団法人の理事及び監事等のことをいう。 また、法人に対して「同等以上の支配力を有するものと認められる者」に該当するか否かの判断は、その者が自己の地位や権限などに基づいて法人の意思決定に関し、どの程度実質的な影響力を及ぼし得るかについて、個別具体的に検証されることとなる。
第11号に掲げる者・・・ 本号の「支配的な影響力」を有する者の範囲は、一般に、前号の同等以上の支配力」を有する者よりも広いと解され、また、法人のみに適用される前号と異なり、本号は、個人業者にも適用される欠格事由である。 一方、前号は警備業法第3条第1号から第7号までのいずれかの欠格事由該当者が支配力を有する場合に適用される欠格事由であるが、本号は、暴力団員等が支配的な影響力を有する場合に限って適用される欠格事由である。典型的には、暴力団員等が自己又は他人の名義で多額の出資や融資をしたり、多額の取引関係を持っている相手方が、これを背景として当該暴力団員等から事業活動に支配的な影響力を受けている場合が該当する。 また、「その他の関係」とは、親族関係、人的派遣関係、株式所有関係等、種々の関係が含まれる。
 (4)認 定
第4条 警備業を営もうする者は、前条各号のいずれにも該当しないことについて、都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。) の認定を受けなければならない。
 警備業の営業に関する規制は、法第3条の規定によって警備業の要件を定め、本条の規定によって警備業を営もうとする者が警備業の要件を満たしているかどうか、その営業開始前に公安委員会が審査することとし、要件を満たしていることを確認した者について、法第2条第3項の規定によって警備業法上の警備業者としての取扱いをするという形で構成されている。
 認定を受けようとする者は、その営業開始前に、主たる営業所の所在地を管轄する公安委員会に所定の事項を記載した認定申請書を提出し、審査を経て認定証の交付を受ける必要がある。
 「認定」とは、行政法学上の確認行為であり、認定申請者が警備業の要件を満たしていることを確認する公安委員会の行政行為である。
 (5)警備員の制限
第14条 18歳未満の者又は第3条第1号から第7号までのいずれかに該当する者は、警備員となってはならない。
2 警備業者は、前項に規定する者を警備業務に従事させてはならない。
 警備員は、他人の生命、身体、財産等を守るという業務に直接携わるものであり、適時適切な判断力、責任感等が要求される場面や業務の性質上、他人の権利や自由を侵害するおそれのある場面に遭遇する機会が多い。このため、通常の判断力、自制力及び常識のない者には、適正な警備業務の実施は期待できないと考えられるので、このような者が警備員となることを禁止し、不適格者を警備員から排除することとしたのが本条の趣旨である。
ア 警備員の制限
 18歳未満の者が警備員となることを禁止したのは、18歳未満の者は、警備業務に必要とされる判断力、自制力等において一般的に不十分であると認められるからである。また、警備業法第3条第1号から第7号までのいずれかに該当する者が警備員となることを禁止したのは、同法第3条の規定と同様の趣旨による。
イ 警備業者の義務
 本条第2項の規定によって、警備業者は欠格事由に該当している者を警備業務に従事させてはならないこととされている。そのため、欠格事由該当の有無を確認するため、警備員の採用に当たっては、本人から欠格事由に該当しない旨の誓約書の提出を受けるとともに、履歴書の確認や面接調査等を行ったうえで、必要に応じて診断書の提出を受けるなど一般私人として可能な範囲で必要な調査を行う必要がある。
 (6)服 装
第16条 警備業者及び警備員は、警備業務を行うに当たっては、内閣府令で定める公務員の法令に基づいて定められた制服と、色、型式又は標章により、明確に識別することができる服装を用いなければならない。
2〜3 (省略)
 警備員が、警察官又は海上保安官の制服と類似した服装を着用して警備業務を行った場合、特別に権限を有しない警備員の行為が、あたかも警察官等の行為であるかのような誤解を一般市民に与え、そのために他人の権利及び自由を不当に侵害する事態を引き起こしたり、警察活動に混乱が生じるおそれがある。そこで、このような事態の発生を防止し、警備業務の実施の適正を図るため、本条は、警備業者及び警備員の着用する服装は、警察官等の制服と明確に識別できるものとしている。
 なお、「明確に識別することができる服装」とは、一般通常人が一見して、警察官等と誤認しない程度に異なっている服装をいう。
 「内閣府令で定めた公務員」については、施行規則第27条で警察官及び海上保安官とすると定めている。
 施行規則第28条第2項にて服装、護身用具の届出書は、当該警備業務の開始の日の前日までに提出しなければならない。
 警備業法第11条第1項の届出書もしくは添付書類に虚偽の記載をして提出した者には、罰則の適用がある。(警備業法第58条第3号)
施行規則第28条
1 略
2 前項の届出書は第3条第2項又は第11条第2項の規定により経由すべきこととされる警察署長を経由して、当該警備業務の開始の日の前日までに提出しなければならない。 
施行規則第30条
警備業法第16条第2項の内閣府令で定める書類は、服装の届出に係わる届出書にあっては、服装の種類ごとに当該服装を用いた警備員の正面及び側面の全身の縦の長さ12cm横の長さ8cmの写真各1枚とし、護身用具の届出に係わる届出書にあっては、護身用具の種類ごとに護身用具の縦の長さ12cm横の長さ8cmの写真1枚とする。
 (7)護身用具
第17条 警備業者及び警備員が警備業務を行うに当たって携帯する護身用具については、公安委員会は、公共の安全を維持するため必要があると認めるときは、都道府県公安委員会規則を定めて、警備業者及び警備員に対して、その携帯を禁止し、又は制限することができる。
 警備業務の実施に当たっては、その業務の性格上、護身用具の携帯を必要とする場合が多い。しかし、護身用具の種類、その携帯の場所、態様等によっては、それを携帯する必要性が乏しいだけでなく、携帯することがかえって一般人に不安感を与えたり、他人を威圧して、その権利や自由の抑圧等の事態を誘発するおそれがある。そこで、このような事態の発生を防止し、警備業務の適正な実施を図るため、本条は、警備業務の実施に当たって携帯する護身用具について、公安委員会が公共の安全維持の観点から一定の基準を定めて、その携帯を禁止又は制限できることとしたのである。
 「公共の安全を維持するために必要のあるとき」としては、鉄棒その他人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような用具を携帯する場合及び防石面付ヘルメット、金属製の楯等もっぱら護身のために用いられる用具であっても、それを携帯し、又は装着することが人に不安を与えるおそれのあるものを携帯する場合の二つが考えられる。 「その携帯を禁止し」とは、警備業務を行うに当たって、当該護身用具の携帯を一切禁止することをいい、「制限する」とは、時間、場所、警備業務の内容等によって、あるときには、その携帯を禁止し、あるときには、その携帯を認める等の制約を加えることをいう。
 本条の規定に基づく護身用具の携帯の禁止及び制限に関する都道府県公安委員会規則の基準は、地域的な特殊性を考慮し、それぞれの公安委員会で定めることとなっているが、最近におけるテロをめぐる情勢その他警備業務を取り巻く情勢の変化を踏まえ、地域的な特殊性を考慮する必要があるなど特別の理由がある場合を除き、おおむね次のような基準が定められている。

ア 警備業者及び警備員が警備業務を行うに当たり携帯してはならない護身用具は、次に掲げる護身用具(鋭利な部位がないものに限る。) 以外のものとする。
(ア) 警戒棒(その形状が円棒であって、長さが30センチメートルを超え90センチメートル以下であり、かつ、重量が別表1の左欄に掲げる長さの区分に応じ、それぞれ同表の右欄に定めるものに限る。)
(イ) 警戒じょう (その形状が円棒であって、長さが90センチメートルを超え130センチメートル以下であり、かつ、重量が別表2の左欄に掲げる長さの区分に応じ、それぞれ同表の右欄に定めるものに限る。)
(ウ) 刺股
(エ) 非金属製の楯
(オ) (ア)から(エ)までに掲げるもののほか、携帯することにより人に著しく不安を覚えさせるおそれがなく、かつ、人の身体に重大な害を加えるおそれがないもの
イ 警備業者及び警備員は、部隊を編成するなど集団の力を用いて警備業務を行う場合は、警戒棒及び警戒じょうを携帯してはならない。ただし、競輪場等の公営競技場において警備業務を行う場合において警戒棒を携帯するときは、この限りでない。

ウ 警備業者及び警備員は、イに定める場合のほか、次に掲げる警備業務以外の警備業務を行う場合は、警戒じょうを携帯してはならない。
(ア)警備業法第2条第5項に規定する機械警備業務(指令業務を除く。)
(イ)警備員等の検定等に関する規則(平成17年国家公安委員会規則第20号。以下「規則」という。) 第1条第2号に規定する施設警備業務 (警察官が現に警戒を行っている施設のうち次に掲げるものにおいて行われるものに限る。)
空港
原子力発電所その他の原子力関係施設
大使館、領事館その他の外交関係施設
国会関係施設及び政府関係施設
石油備蓄基地その他の石油関係施設、火力発電所その他の電力関係施設、ガス製造所その他のガス関係施設、浄水場その他の水道関係施設、鉄道、航空その他の交通の安全の確保のための業務が行われている施設その他これらに準ずる施設であって、当該施設に対してテロ行為が行われた場合に多数の者の生活に著しい支障が生じるおそれのあるもの
火薬、毒物又は劇物の製造又は貯蔵に係る施設その他これらに準ずる施設であって、当該施設に対してテロ行為が行われた場合に当該施設内又は当該施設の周辺の人の生命又は身体に著しい危険が生じるおそれのあるもの
(ウ)規則第1条第5号に規定する核燃料物質等危険物運搬警備業務及び同条第6号に規定する貴重品運搬警備業務
別表1 警戒棒の制限(アの(ア)関係
 長  さ 重  量  30cmを超え40cm以下 160g以下 40cmを超え50cm以下 220g以下 50cmを超え60cm以下 280g以下 60cmを超え70cm以下 340g以下 70cmを超え80cm以下 400g以下 80cmを超え90cm以下  460g以下
別表2 警戒じょうの制限(アの(イ)関係)
長  さ  重  量 90cmを超え100cm以下 510g以下 100cmを超え110cm以下 570g以下 110cmを超え120cm以下  630g以下 120cmを超え130cm以下 690g以下
 なお、都道府県公安委員会規則の改正に当たっては、特別の理由がある場合を除き、改正後の都道府県公安委員会規則の施行の際、現に警備員が警備業務を行うに当たって携帯している旧基準に該当する警戒棒及び警戒 じょうについては、施行の日から10年間は、その携帯を認めることとする経過規定が設けられることとされている。 施行規則第28条
1 略
2 前項の届出書は第3条第2項又は第11条第2項の規定により経由すべきこととされる警察署長を経由して、当該警備業務の開始の日の前日までに提出しなければならない。
 (8)特定の種別の警備業務の実施
第18条 警備業者は、警備業務(第2条第1項第1号から第3号までのいずれかに該当するものに限る。以下この条並びに第23条第1項、第2項及び第4項において同じ。) のうち、その実施に専門的知識及び能力を要し、かつ、事故が発生した場合には不特定又は多数の者の生命、身体又は財産に危険を生ずるおそれがあるものとして国家公安委員会規則で定める種別 (以下単に「種別」という。) のものを行うときは、国家公安委員会規則で定めるところにより、その種別ごとに第23条第4項の合格証明書の交付を受けている警備員に、当該種別に係る警備業務を実施させなければならない。
 本条は、特定の種別の警備業務の実施に当たっては、検定の合格証明書の交付を受けている警備員を配置することを義務付けたものである。
 資格者配置が義務付けられている警備業務は、警備員等の検定等に関する規則で定められている。 本条は、特定の種別の警備業務の実施に当たっては、検定の合格証明書の交付を受けている警備員を配置することを義務付けたものである。
 資格者配置が義務付けられている警備業務は、警備員等の検定等に関する規則で定められている。
  憲  法 参照条文(憲法)
(基本的人権の享有)
 第11条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。
 警備業務の実施の過程において、人の生命、身体、財産等を守るために警備員の有形、無形の影響力が行使される。したがって、警備業務は、他人の権利、自由を侵害する等の行き過ぎや不当な行為を伴いやすいという側面を有している。特に、複雑化、高度化した現代社会においては、警備員は契約先と第三者との複雑多様な利害関係の中に身を置くこととなり、ちょっとした不手際等も、これが直ちに他人の権利、自由等の侵害をもたらすことになる。
 このように、警備業務はその業務の特殊性から、基本的人権と極めて密接なかかわりを有している。 
 「基本的人権」とは、抽象的には人間が生まれながらにして持っていると考えられる権利、人間が人間として生活していくうえにおいて、当然認められるべき基本的権利のことをいう。
 憲法は、本条において、基本的人権の保障を一般的に宣言するとともに、その固有普遍性と永久不可侵性という性格を明らかにしている。基本的人権の「固有普遍性」とは、基本的人権は、人間として当然の天賦生来の権利であって、だれでも等しく享有する普遍的なものであるということである。また、「永久不可侵性」とは、基本的人権は、現在の国民ばかりでなく、将来の国民も等しく享有するもので、将来永久に侵されることがないという意味である。
 警備員は、基本的人権の意義と重要性を深く認識し、その業務遂行の過程において、いやしくも、他人の権利や自由を侵害することのないよう、留意することが肝要である。憲法は、第11条以下において基本的人権についての規定を置いているが、このうち、警備業務に特に関係の深いものを挙げると、次のとおりである。

第19条 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。

第21条集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

第22条 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
2 何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。

第27条 すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。
2 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。
3 児童は、これを酷使してはならない。

第28条 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。

第29条 財産権は、これを侵してはならない。
2 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
3 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。

第33条 何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。

第34条 何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。

第35条 何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第33条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。
2 捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する各別の令状により、これを行ふ。
(1)表現の自由 憲法第21条第1項は、「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。」と述べ、いわゆる表現の自由について規定している。「集会」とは、共同の目的を有する多数人の一時的集合を意味し、「結社」とは、共同の目的を持って、継続的に多数人が結合している集団をいう。
(2)人身の自由 憲法第31条は、「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。」と規定している。これは、人身の自由の保障に関する根本原則を定めたものである。
 また、同法第33条は、「何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となっている犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。」と述べ、不法の逮捕を受けない権利について規定している。
 「司法官憲」とは、裁判官をいう。
 「逮捕」とは、犯罪の容疑が相当確実であると思われる場合に、実力をもって身体の自由を拘束する行為をいう。
(3)勤労者の団結及び団体行動権 憲法第28条は、「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。」と規定している。
 「団結する権利」とは、団体、すなわち労働組合を組織する権利をいい、また、「団体交渉をする権利」とは、そのようにして組織された労働組合の代表者が使用者又はその団体と交渉する権利であり、「その他の団体行動をする権利」は、争議権ともいわれ、同盟罷業(ストライキ)等をする権利である。
 しかし、以上のような団結権や団体交渉権も、無制限に許されるというわけではなく、公共の福祉に従うべきであることはいうまでもない。その権利の行使は、社会通念上、妥当な範囲内の必要がある。労働組合法第1条第2項も、この点につき、「いかなる場合においても、暴力の行使は、労働組合の正当な行為と解釈されてはならない。」と規定している。
(4)不法の住居侵入、捜索及び押収を受けない自由 憲法第35条第1項は、「何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第33条の場合を除いては、正当な理由に基づいて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。」と述べ、不法の住居侵入、捜索及び押収を受けない自由について規定している。
(5)児童の保護 憲法第27条第3項は、「児童は、これを酷使してはならない。」としている。警備業務は、人の生命、身体、財産等を守るという重い職責を有するため、その遂行には、強い体力と精神力を必要とし、また、勤務時間も深夜にわたることが多い。このため、警備業法第14条第1項において、18歳未満の者が警備員となることを禁じている。

 刑  法
 警備業務は、他人の需要に応じて、人の生命、身体、財産等に対する侵害を警戒し、防止することを主な内容としているので、警備業務に従事する警備員は、これらの犯罪の発生に出会うことが一般人と比べて多い。また、場合によっては犯人等が契約先や警備員自身に加えようとする危害に対し、実力を行使してその危険を避ける場合もある。
 このため、警備員は日頃から刑法その他の刑罰法規を研究し、犯罪の態様とその成立要件についての知識を持つとともに、正当防衛等、実力行使が許される場合と、その限界について熟知しておく必要がある。
(1) 違法性阻却事由
 犯罪は、その本質において社会秩序に違反し、個人や社会の利益を侵害する行為である。しかし、社会秩序を破壊し、他人の利益を侵害する行為がすべて犯罪として処罰されるわけではない。刑法上の「犯罪」とは、このような行為のうち、犯罪として処罰する必要性があるものだけであり、これを理論的に分析して、刑法に定める構成要件に該当する違法で有責な行為であるとされている。
 「構成要件」とは、刑法その他の刑罰法規に規定する犯罪の定型のことである。構成要件は違法行為の類型とされているから、構成要件に該当する行為は、通常、違法であるということができるが、場合によっては違法でないこともあり得る。このような、違法でなくなる特別な事情を「違法性阻却事由」という。 

ア 正当防衛
第36条  急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。
2 防衛の程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。
 例えば、強盗犯人が刃物を持って、契約先や警備員自身に襲いかかってきた場合、警備員は、素手であるいは護身用具を用いてこれに立ち向かいこれを撃退することができる。この場合、警備員は形のうえでは犯人に対して実力を行使することになるわけであるが、暴行罪、傷害罪等に問われることはない。なぜなら、契約先や警備員は犯人による権利の侵害を甘受するいわれはないし、また、犯人が警備員の実力行使によって害を受けたとしても、それはもともと犯人自身の不法な行為によって引き起こされたものだからである。
 このように、急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ない場合には、実力をもってかかる侵害を排除することができることを規定したのが本条である。この実力行使を「正当防衛」という。
(ア)「急迫」とは、権利を侵害される危険が差し迫っていることをいう。 単に、将来侵害されるおそれがあるだけの場合や、既に侵害が終ってしまった場合には、正当防衛は認められない。
(イ)「不正」とは、「違法」というのと同意である。したがって、正当防衛行為に対して正当防衛を行うことはできない。
(ウ)正当防衛行為は、自己又は他人の権利を防衛するため」のものであることを要する。すなわち、防衛意思と防衛手段としての相当性を必要とする。
(エ)正当防衛行為は、権利を防衛するため「やむを得ずにした行為」である必要がある。すなわち、防衛手段として社会通念上、相当と認められることを要する。例えば、万引きをした者に対して警戒棒で打撃を加える等の行為は、相当な手段の範囲を逸脱したものであり、正当防衛にはならない。このように、正当防衛として相当な程度を超えた実力行使は、「過剰防衛」として罰せられ、情状によりその刑が減軽又は免除されるに過ぎない。(本条第2項)。

イ 緊急避難
第37条 自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為は、これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しない。ただし、その程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。
2 前項の規定は、業務上特別の義務がある者には、適用しない。

  緊急避難は、正当防衛と同じように、危難にひんする権利を救うためにする行為が許される場合の一つである。ただこの場合、危難の原因となっている侵害は不正なものに限らず、他人の違法でない行為や人の行為でない自然現象などによって「現在の危難」が生じ、その危難を避けるための避難行為が、第三者の権利を侵害したときが対象となる。
 したがって、緊急避難においては、その避難行為によって害を被る者は、なんらそれを甘んじて受ける特別な理由はなく、ただ、国家がそのような危急状態を救う余裕がないときに私人自らこれを守ることを認めるに過ぎないのであるから、それだけ緊急避難の許される場合は、正当防衛の場合に比べて要件が厳格となっている。
(ア)自己又は他人の生命、身体、自由若しくは財産に対する現在の危難があることが必要である。「現在の危難」とは、危険が切迫していることをいう。
(イ)その危難を避けるためにした行為であることが必要である。
(ウ)他に避難の方法があれば、その方法をとる必要がある。これを緊急避難の補充性という。 そうでない場合は、「過剰避難」として過剰防衛と同様に刑罰の対象となり、情状によって刑を減軽又は免除されることがあるに過ぎない。
(エ)避難行為から生じた害が避けようとした害の程度を超えないことが必要である。これを「法益の権衡」という。この程度を超えた場合も過剰避難となる。
(オ)緊急避難の要件に当てはまる場合でも、業務の性質上、危難に立ち向かうべき義務のある者は、一般人と同じように緊急避難行為をする ことは許されない。また、他人の需要に応じて、人の生命、身体、財産等を守る職務上の義務を有する警備員は、たとえ、自己の生命、身体等を守るためであっても、第三者の権利を侵害してはならないと考えられる。しかし、その本旨は、みだりに義務遂行を怠ることを許さないことにある。したがって、他人の危難を救うための緊急避難行為は、一般人と同様に許されるし、自己の危難を避けるためでも、義務の性質、内容等を考慮し、あるいは社会通念上、危難の内容、程度がその義務を超えていると認められる場合には、適用を認められる場合がある。
一般に緊急避難は「正」対「正」の関係、正当防衛は「不正」対「正」の関係である。
「責任正阻却事由」
責任能力を欠く者には責任主義の原則を受けて刑法は責任能力を欠く者の行為を処罰しないことを規定する。
・心神喪失者(精神上の障害により是非弁別能力または行動制御能力を欠く状態、刑法第39条)
・刑事未成年者(14歳未満の者、刑法第41条)

(2)刑法各論
ア住居侵入罪
第130条 正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
 「住居」とは、人が日常生活を営むために使用する場所をいう。独立した建物に限らず、また、一時的使用であってもよく、アパート、旅館の一室もまた住居である。居住家屋に附属した庭があって塀で囲まれているような場合には、これらの全体がここにいう住居となる。ある程度の設備を備えた場所であることが必要で、地下街のかたすみや寺院の床下などは、たとえそこで浮浪者が日常生活を営んでいても住居とはいえない。
 「邸宅」とは、住居のために造られた家屋で、現に人の住居として使われていないものをいい、空き家や閉鎖された別荘等を指す。
 「建造物」とは、住居、邸宅以外の建物をいい、官公署、学校、工場、寺院等を指し、
 「艦船」とは、船舶をいう。
 「邸宅」、「建造物」、「艦船」は、人が居住していなくとも看守していればやはり本罪の対象となる。    
 「人の看守する」とは、看守者がそこに現在しなくとも他人の侵入を防止する人的・物的設備を施す等、諸般の状況から人が管理していると認められれば足りる。
 「正当な理由がないのに侵入する」とは、違法に侵入するという意味であり、家人又は看守者の意に反して入る場合がこれに当たる。通常はこれらの者の承諾があれば犯罪とはならないが、仮に錯誤によって承諾した場合でも、本来その意に反するであろう場合、例えば、犯罪行為を行う目的で侵入したようなときは、やはり「正当な理由がないのに侵入」 したことになると考えられる。他方、営業中のデパートのように、一般に開放されている建造物内などは、許可を受けずに立ち入っても通常本罪には該当しない。
 住居に侵入しようとして施錠を外しかけているところを発見されたような場合は、住居侵入未遂罪(第132条)となる。
 要求を受けて退去しない罪は、いわゆる不作為犯である。この場合の要求は、これを行う権利を有する者の要求であることを要する。
 なお、正当な理由がなくて合鍵、のみ、ガラス切りその他、他人の邸宅又は建物に侵入するのに使用されるような器具を隠して携帯している罪、人が住んでおらず、かつ、看守していない邸宅・建物・船舶の中に正当な理由なく潜んでいる罪、入ることを禁じた場所又は他人の田畑に正当な理由がなく入る罪等については、「軽犯罪法」によって処罰される。

イ 窃盗罪
第235条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
 他人の占有する財物をその占有者の意思によらずに占有を侵害し、財物を領得する罪である。
 [占有」とは、物に対する事実的支配があると認められる場合に成立する。したがって、物をスリ取られるときのように現実に所持する場合はもちろん、屋内にある物について家人が一時不在であっても、また、それを一時見失っていても、家人はその物に対する占有を失わない。そのため、留守番を頼まれた者がその依頼者宅の金品を領得したような場合についても窃盗罪が成立する。
 なお、金品物色のため金庫に近寄り、鍵に手をかけたような場合、スリがポケットのボタンを外し、又はポケットに指を入れた場合、あるいは外からポケットに触っただけの場合においても窃盗未遂罪(第243条)となる。
窃盗罪の構成要件
・他人の財物を窃取すること
・それが故意に基づくこと
・不法領得の意思があること
 客体は、他の占有する他人の財物である。自己の財物でも他人が占有しまたは公務所の命令によって他人が監守するものであるときは他人の財物とみなす。窃盗の客体には法令により所持所有が禁じられているものも含まれる。
 刑事訴訟法
 憲法第31条は、「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。」と規定している。
したがって、犯罪が行われたことを理由に、犯人を逮捕したり、刑罰を科したりするためには、手続きを定めた法律が必要であるが、この法律が刑事訴訟法である。
 警備業務は、人の生命、身体、財産等の安全を守ることを業務の内容としており、犯罪に接する機会も他の民間業務に比べて多いので、現行犯逮捕等に関する刑事訴訟法の規定を十分に理解し、常に、これを踏まえて業務を実施するとともに、不当に他人の人権を侵害することのないよう配慮することが肝要である。
(1)現行犯逮捕
第212条 現に罪を行い、又は現に罪を行い終つた者を現行犯人とする。 左の各号の一にあたる者が、罪を行い終つてから間がないと明らかに認められるときは、これを現行犯人とみなす。
一 犯人として追呼されているとき。
二 賊物又は明らかに犯罪の用に供したと思われる兇器その他の物を所持しているとき。
三 身体又は被服に犯罪の顕著な証跡があるとき。
四 誰何されて逃走しようとするとき。

第213条 現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することが できる。(憲法第33条)
 「現行犯人」とは、現に罪を行い又は現に罪を行い終った者をいう。
 「現に罪を行い」とは、犯罪を現在実行しているという意味であり、犯罪の実行行為に着手し、それを遂行しつつあり、いまだ終了に至らない場合である。未遂について処罰規定のない罪については、未遂の段階では犯罪の実行行為中とは認められない。
 「罪」とは、特定の罪(例えば、窃盗、傷害等)を指す。したがって、単なる [不審者」であって、何らかの罪を犯している疑いがあるだけでは不十分であり、現行犯人とはいえない。
 「現に罪を行い終った」とは、当該犯罪行為終了直後を指すが、直後の範囲を機械的に何時間と決めることはできないので、具体的状況に応じて判断することになる。
 「準現行犯人」とは、本条第2項のいずれかに該当する場合で、かつ、罪を行い終ってから間がないと明らかに認められる者をいう。
 「逮捕」とは、人の身体を直接に束縛して自由を拘束することをいう。 身体を束縛する方法には、相手が抵抗する等その状況によって手錠をはめるとか、縄で縛るなどの方法もあるが、このような方法でなく、逮捕者が被逮捕者の身体に寄り添って看視し、何時でもその身体を捕捉できる態勢をとって、その逃走を防止する方法等によって自由を拘束する場合も逮捕の範ちゅうに入る。
 現行犯人及び準現行犯人については、その者が犯罪を行いつつあること、又は犯罪を行い終ったことが明確に認められ、かつ、その場で逮捕しなければ被害の拡大又は罪証の隠滅若しくは逃亡のおそれがあるため、逮捕状請求等の手続きを要せず、だれでもこれを逮捕できることにしたものである。
 なお、逮捕に際しては、当然ある程度の実力行使が許されるが、その実力行使には自ら限界があり、犯人の挙動その他、その場における具体的状況に応じた、社会通念上、妥当な範囲内のものである必要がある。
(2)現行犯人を逮捕した場合の処置
(私人による現行犯逮捕と被逮捕者の引渡し)
第214条 検察官、検察事務官及び司法警察職員以外の者は、現行犯人を逮捕したときは、直ちにこれを地方検察庁若しくは区検察庁の検察官又は司法警察職員に引き渡さなければならない。
 現行犯人を逮捕する権限は、一般私人にも与えられているが、これは逮捕行為が許されているだけであり、取調べ、身体捜検、所持品検査等を行う権限は認められていない。したがって、犯人を逮捕した場合は、直ちに警察官等に引き渡すことを要する。
 警察官等に犯人を引き渡す方法としては、110番等で通報し、逮捕現場に直接警察官の臨場を求めるか、あるいは逮捕者が直接犯人を警察署や交番等へ連れて行くかのいずれかである。いずれの方法にしても、逮捕者としては、犯人の引き渡しを受けた警察の措置が迅速かつ適正に行われるように努める。
 警察官職務執行法
 警備業務実施中において、人の生命、身体、財産等に対する差し迫った危険が生じた場合に、その危害を防止し、又はその危害を排除することは、警備業務の領域に入るが、警備業務は他人との契約に基づいて行うものであり、特別な権限を有するものでないことから、警備員が危害を防止し、又は排除するためにとり得る手段は、自ずから限界があり、最終的には、法的に権限を行使し得る警察官等に処理を委ねることになる場合も少なくない。
 警備員は、警察官の行う警告や避難誘導措置等の命令に従うとともに、できる限りこれに協力すべきである。この義務は、警備員に限定して課せられるものではないが、人の生命、身体、財産等を危害から守ることを主な任務とする警備員は、十分にこれを理解することが重要である
(避難等の措置)
第4条 警察官は、人の生命若しくは身体に危険を及ぼし、又は財産に重大な損害を及ぼす虞のある天災、事変、工作物の損壊、交通事故、危険物の爆発、狂犬、奔馬の類等の出現、極端な雑踏等危険な事態がある場合においては、その場に居合わせた者、その事物の管理者その他関係者に必要な警告を発し、及び特に急を要する場合においては、危害を受ける虞のある者に対し、その場の危害を避けしめるために必要な限度でこれを引き留め、若しくは避難させ、又はその場に居合わせた者、その事物の管理者その他関係者に対し、危害防止のため通常必要と認められる措置をとることを命じ、又は自らその措置をとることができる。
2 (省略)
 本条は、警察官がとるべき避難等の措置を定めている。
 「警告」とは、危険からの避難又は危険の防止について必要な予告又は注意を与えることである。
 「特に急を要する場合」とは、危険な事態がある場合の中でも、現実にその危険が一段と切迫してきた状態をいい、もはや警告の手段では危害を避けることができないような場合である。   
 「引き留め」とは、危険な場所に入らないように抑止することである。
 「避難」とは、危険な場所から退去させることである。
 「通常必要と認められる措置」とは、社会通念上、危険防止のため通常用いられる手段のことをいい、例えば、危険区域への立入りの禁止・制限、電車・自動車の停車、やじ馬の解散、劇場、競技場への入場禁止等がある。
 遺失物法
 警備員は警備業務の性格上、遺失物等を取り扱う機会が多く、この取扱いが適正に行われなければ、トラブル発生の原因となるばかりか信用を失うこ ととなる。したがって、警備員は、遺失物法に定められた処理手続きを十分理解し、適切な対応に努める必要がある。
(1)法の趣旨
(趣旨)
第1条 この法律は、遺失物、埋蔵物その他の占有を離れた物の拾得及び返還に係る手続その他その取扱いに関し必要な事項を定めるものとする。
 本条は、遺失物法の対象となる物件について定めるとともに、法の趣旨について定めている。
(2)用語の定義
(定義)
第2条 この法律において「物件」とは、遺失物及び埋蔵物並びに準遺失物(誤って占有した他人の物、他人の置き去った物及び逸走した家畜をいう。次条において同じ。) をいう。
2 この法律において「拾得」とは、物件の占有を始めること (埋蔵物及び他人の置き去った物にあっては、これを発見すること)をいう。
3 この法律において「拾得者」とは、物件の拾得をした者をいう。
4 この法律において「遺失者」とは、物件の占有をしていた者(他に所有者その他の当該物件の回復の請求権を有する者があるときは、その者を含む。) をいう。
5 この法律において「施設」とは、建築物その他の施設(車両、船舶、航空機その他移動施設を含む。) であって、その管理に当たる者が常駐するものをいう。
6 この法律において「施設占有者」とは、施設の占有者をいう。
 「遺失物」とは、他人が占有していた物であって、当該他人の意思に基づかず、かつ、奪取によらず、当該他人が占有を失ったもので、それを発見した者の占有に属していないもの(逸走した家畜、家畜以外の動物及び埋蔵物を除く。) をいう。
 「埋蔵物」とは、他人が占有していた物であって、当該他人の意思に基づくか否かにかかわらず、土地その他の物(不動産に限らない。) の中に包蔵されている物件で、その占有を離れたもので、その所有者が何人であるか容易に識別できないものをいう。例えば、土中に埋蔵された古銭、壁に塗りこまれた貴重品、屋根裏に蔵匿された貴重品等がこれに当たる。
 「誤って占有した他人の物」とは、他人の占有していた物であって、自己の過失によってその占有に属した物をいう。例えば、間違って持ち帰った他人の傘、履き違えた他人の靴等がこれに当たる。
 「他人の置き去った物」とは、他人が占有していた物であって、当該他人の意思に基づくか否かにかかわらず、かつ、奪取によらず、当該他人が占有を失い、自己の占有に属することとなったもので、「誤って占有した他人の物」以外のものをいう。なお、廃棄された物であると客観的に認められる物は無主物であることから、これに該当しない。
 「逸走した家畜」とは、飼育者の意思によらないで自らその占有を離れた家畜をいう。ここでいう「家畜」とは、愛玩、食用、実験用等のために飼育されている鳥獣をいう。なお、野良犬や野良猫は他人が占有していたものではないし、捨て犬や捨て猫は自らその占有を離れていないので、いずれも逸走した家畜に該当しない。万一、警備業務対象施設内に迷い込んだ野良犬が人に危害を加えるおそれがあるときには、警察機関等へ通報する等の措置をとる必要がある。
 第4項の「遺失者」には、当該物件の所有者のほか、物件を預かっていた者及び使用していた者等も含まれる。
第5項の「管理に当たる者」とは、店員、駅員、職員等、当該施設における人の出入り等の管理に係る職務に従事する者を広く指し、警備員もこれに該当する。
第6項の「施設占有者」とは、所有権、地上権、賃借権、その他の権限に基づき、自己のために施設を支配している者をいう。警備業務に関していえば、施設の所有者や警備業務の契約先等がこれに当たる。
(3)拾得者の義務
第4条 拾得者は、速やかに、拾得をした物件を遺失者に返還し、又は警察署長に提出しなければならない。ただし、法令の規定によりその所持が禁止されている物に該当する物件及び犯罪の犯人が占有していたと認められる物件は、速やかに、これを警察署長に提出しなければならない。
2 施設において物件(埋蔵物を除く。第3節において同じ。) の拾得をした拾得者 (当該施設の施設占有者を除く。) は、前項の規定にかかわらず、速やかに、当該物件を当該施設の施設占有者に交付しなければならない。
3 前2項の規定は、動物の愛護及び管理に関する法律(昭和48年法律第105号)第35条第2項に規定する犬又はねこに該当する物件について同項の規定による引取りの求めを行った拾得者については、適用しない。
 拾得した物件は、それを拾得した場所又は物件の属性によって、次のように処理手続きが異なる。
ア ー般の場所での拾得
 他人の物件を拾得したときは、速やかに遺失者に返還するか、又は警察署長に提出することとされている。この場合において現実的には、警察署の窓口や交番等に提出すれば「警察署長に提出した」ことになる。
イ 法令の規定によってその所持が禁止されている物件及び犯罪の犯人が占有していたと認められる物件
 銃砲刀剣類、火薬、爆薬、麻薬、毒物及び劇物等は、法令の規定によって、一般的に私人が所有したり所持したりすることが禁止されているので、拾得者は遺失者に返還しないで警察署長に提出することとされている。
 また、犯罪が実行された場所やこれと密接な関係を有する場所に犯罪者が置き去った物件等、犯人が占有していたと認められる物件についても同様である。
ウ 施設での拾得
 施設において他人の物件を拾得したときは、当該物件を施設占有者に交付することになる。
 この場合、当該施設の勤務者等に交付すれば「施設占有者」に交付したことになる。施設警備業務に従事する警備員は、その施設の勤務者であるので、当該施設占有者を代行して拾得された物件を預かることになる。
 なお、当該施設占有者以外の勤務者等が施設内において物件を拾得した場合には、当該施設占有者が拾得者となる。

(4)施設占有者の義務等
第13条 第4条第2項の規定による交付を受けた施設占有者は、速やかに、当該交付を受けた物件を遺失者に返還し、又は警察署長に提出しなければならない。ただし、法令の規定によりその所持が禁止されている物に該当する物件及び犯罪の犯人が占有していたと認められる物件は、速やかに、これを警察署長に提出しなければならない。
2 (省略)
 本条は、施設占有者が交付を受けた物件の返還及び警察署長への提出義務について定めている。また、施設占有者自らが物件を拾得した場合も同様の義務が発生する。なお、物件の交付を受けた施設占有者のうち、その施設を不特定かつ多数の者が利用するものは、遺失者が判明するまでの間又は警察署長に提出するまでの間、その施設を利用する者の見やすい場所に拾得した物件の種類、特徴、拾得の日時、場所を掲示しなければならないとされている(法第16条第1項)。
(5)施設占有者による書面の交付
参照条文
(遺失物法)
(書面の交付)
第14条 第4条第2項の規定による交付を受けた施設占有者は、拾得者の請求があったときは、次に掲げる事項を記載した書面を交付しなければならない。
一 物件の種類及び特徴
二 物件の交付を受けた日時
三 施設の名称及び所在地並びに施設占有者の氏名(法人にあっては、 その名称及び代表者の氏名)
 本条は、交付を受けた施設占有者が、拾得者から請求があった場合の書面の交付義務について規定している。施設警備業務に従事する警備員は、施設占有者を代行して拾得物の交付を受け、法第14条にある書面を交付することも考えられる。このことから、交付する書面の記載要領等について熟知しておく必要がある。また、交付する書面は任意のものでよく、例えば、店舖の名刺を活用してその裏面に所定の事項を記載してこれを交付するなどの方法でもよい。なお、拾得者からの請求があったにもかかわらずこの書面を交付せず、又は虚偽の記載をして書面を交付した者には罰則がある。
(6)特例施設占有者
ア 特例施設占有者
参照条文
(遺失物法)
(特例施設占有者に係る提出の免除)
第17条 前条第1項の施設占有者のうち、交付を受け、又は自ら拾得をする物件が多数に上り、かつ、これを適切に保管することができる者として政令で定める者に該当するもの(以下「特例施設占有者」という。) は、交付を受け、又は自ら拾得をした物件 (政令で定める高額な物件を除く。) を第4条第1項本文又は第13条第1項本文の規定により遺失者に返還することができない場合において、交付又は拾得の日から2週間以内に、国家公安委員会規則で定めるところにより当該物件に関する事項を警察署長に届け出たときは、第4条第1項本文又は、第13条第1項本文の規定による提出をしないことができる。この場合において、特例施設占有者は、善良な管理者の注意をもって当該物件を保管しなければならない。
 本条は、施設占有者のうち一定の要件を満たした施設占有者(特例施設占有者)に対して、警察署長への提出を免除することについて規定している。本条第1項の「政令で定める者」には、駅や空港等、公共交通機関に係る施設占有者や、百貨店、遊園地等、不特定多数の者が利用する施設の施設占有者であって都道府県公安委員会が指定した施設占有者が該当する。これらの特例施設占有者は交付を受けた物件を警察署長に提出するか、又は自ら保管するかを判断し、選択することができる。
イ 特例施設占有者による返還等
参照条文
(遺失物法)
(特例施設占有者による返還時の措置)
第22条 特例施設占有者は、保管物件を遺失者に返還するときは、国家公安委員会規則で定めるところにより、その者が当該保管物件の遺失者であることを確認し、かつ、受領書と引換えに返還しなければならない。
2 特例施設占有者は、拾得者の同意があるときに限り、遺失者の求めに応じ、拾得者の氏名等を告知することができる。
3 特例施設占有者は、前項の同意をした拾得者の求めに応じ、遺失者の氏名等を告知することができる。
 本条第1項の「確認」の方法は、返還を求める者からその氏名等を証明できる書面の提示を受けることとされている。また、その者から当該物件の種類や特徴、遺失の日時や場所を聴取し、備付けの帳簿に記載された内容と照合する必要がある。
 特例施設占有者が物件の返還を行うときは、その物件の拾得者に対し、返還を行う旨を通知する (拾得者の所在を知る場合に限る)とともに、返還を受ける遺失者に対しては、物件の保管や提出にかかった費用及び報労金を支払う義務がある旨を通知する必要がある。
(7)報労金等に関する権利義務
 報労金等に関する権利義務は、一般の場所で拾得した場合と施設内で拾得した場合、また、拾得した物件の性質によって差異があるので、取扱いには十分留意する必要がある。
ア ー般の場所で拾得した場合
 拾得した日から1週間以内(初日を算入しない(民法第140条))に遺失者に返還するか警察署長に提出しなければ、その物件の保管費、その他必要な費用及び報労金を受け取る権利及び所有権を取得する権利を失う (法第34条第2号)。
 なお報労金は、当該物件の価格の5パーセント以上20パーセント以下に相当する額とされている(法第28条第1項)。
イ 施設内で拾得した場合
(ア)拾得したときから24時間以内に施設占有者に交付しなければその物件の保管費、その他必要な費用及び報労金を受け取る権利及び所有権を取得する権利を失う(法第34条第3号)。
 なお、報労金は拾得者と施設占有者とが法定金額の2分の1ずつを請求することができる (法第28条第2項)。
(イ)物件の交付を受け、又は自ら物件を拾得した施設占有者は、交付を受け又は拾得した日から1週間以内に遺失者に返還するか警察署長に提出しなければ、その物件の保管費、その他必要な費用及び報労金を受け取る権利及び所有権を取得する権利を失う (法第34条第4号)。
ウ 報労金等の請求権の消滅
 拾得した物件の保管、提出等に要した費用や報労金については、物件を遺失者等に返還した後1か月を経過したときは請求権が消滅し、これを負担すべき者に対して請求することができない(法第29条)。
 遺失者が判明しない物件については、警察署長又は第17条によって届け出た特例施設占有者が保管することとなる。保管の期間は警察署長が当該物件の公告を開始した日から3か月間(埋蔵物にあっては6か月間)行うが、この期間のうちに遺失者が現れなかった場合には、拾得者及び施設占有者が所有権を取得する。ただし、当該権利取得の日から2か月以内に物件を引き取らなかったときは、その所有権を失う。
(8)拾得届の受理要領
 拾得物の届出を受けた場合には、まず拾得した場所を確認する。拾得した場所が一般の場所であれば、警察署や交番の場所を教え、自分で持っていくように教示することが望ましい。これは拾得者としての権利を保護するためにも必要である。拾得の場所が警備員の勤務する施設内である場合には、警備員は次の事項を確認する必要がある。
@ 拾得の場所
A 拾得時刻
B 拾得者の氏名、速絡先
C 拾得物件の内容
D 権利放棄有無の確認
 拾得の届けを受けた物件の内容を確認するときは、必ず複数の者が立会い、間違いがないようにする。また、第三者に容易にその内容が漏れたり、破損したりすることのないように注意する。
(9)遺失届けの受理要領
 遺失者等から届出を受けたときは、あらかじめ警備計画書等で定められた手順に従い、速やかに遺失物取扱場所等へ届け出るよう教示する。
 また、キャッシュカードや運転免許証等のように、再交付申請等、早急に対応する必要があるものについては銀行や警察等へ直ちに届け出るように助言することが望ましい。
(10) 拾得物の返還
 拾得した物件の保管中に、遺失した旨を申出る者がいた場合には、施設占有者はその者が真の遺失者であることを確実に確認することが大切である。確認すべき内容は、返還を求める者の氏名、当該物件の種類、特徴、遺失の日時、場所等で、物件については帳簿に記載された内容と照合する。
 施設に勤務する警備員は、これらの施設占有者の手続きを代行することとなる。明らかに遺失者と判明した場合には、施設占有者に連絡する等、あらかじめ定められた処理要領にて返還等の対応をすることが必要である。
 交通誘導警備業務の実施に必要な法令

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